森羅万象と百家万説の系譜

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目次

0. はじめに

簡単な年表

1. ビッグ・バン・・・無限大と無限小 [ゼロ]
2. 宇宙の大規模構造の誕生・・・流れと秩序 [散逸構造]
3. 恒星の誕生・・・宇宙の晴れ上がり [階層]
4. 恒星の進化・・・原子核合成は錬金術 [核反応炉]
5. 超新星爆発・・・星の死と誕生 [死と再生]
6. 天の川銀河・・・小宇宙の成り立ち [集団]
7. 太陽系・・・天空の秩序 [求心性]
8. 地球の誕生・・・太陽系の非ガス成分 [力場]
9. 海の誕生・・・地球表面の分離 [水]
10. 冥王代の重爆撃・・・混沌 [エアロゾル]

11. プレート・テクトニクス・・・地球表面の冷却作用 [相分離]
12. 生命体誕生の謎・・・偶然か必然か [時間]
13. 生命体を作る単位分子・・・空と海と地底から [元素]
14. 生体高分子の誕生・・・海のゆりかご [活性化エネルギー]
15. 化学進化・・・生化学エネルギーの通貨 [触媒]
16. RNAワールド・・・構造から情報へ [フィードバック]

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簡単な年表

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0. はじめに

私がこの文章を書こうと思ったのは40歳を超え、いわゆる不惑の歳になったころです。

それまでは「すべての常識を疑ってかかる」をモットーに行動していました。他人の発言に対して、「本当にそうか、もっといい方法がないのか、なぜ、その発想で行動するのか、その発想を支える社会の仕組みは正しいのか」など、あれこれと考え、いつも考えがまとまらず、いわゆる優柔不断でした。

ところが、訳知り顔で話す自分に気づいたとき、今まで積み上げてきた考察がある一定の水準に達し、個別の思索の結果が、現在、相互につながりつつあるのだろう、と、突然、思い当たりました。

それまでの疑問は、日常の問題についてはどこまでやれば解決したといえるのか、専門の生命科学の問題、その社会的な意義、社会常識の「常識」としていいものと「短期的な常識」に過ぎないもの、集団の運営方法や、他人に対して、上下関係をどこまで強調するべきか、等々。これらの諸問題が、実は人間の知識や認識に限界があると考えることでかなり解決でき、そして、その認識を土台として成り立つ社会の仕組みがおぼろげながら見えてきました。

自分の考えていることを整理して体系化すれば、もっとうまく生きれるのではないだろうか。いわば、自分の処世術のために書いています。満遍なく書くために、人間が(私が)認識しているすべての時間軸に沿って歴史を語り(森羅万象の系譜)、その歴史からポイントを選んで、様々な考え方をまとめる(百家万説の系譜)方法をとりました。できるだけ表現は日常語にとどめることを心がけました。おそらく、高度な思想を表現するにも、日常の書き言葉で十分なはずです。

さらに、この文章を多くの興味ある人々に読んでもらい、遠慮のない批評をもらうのが完成度を高め、結果として自分の認識を高めるでしょう。現在はインターネットという便利な発表手段があります。しかし、長い文章を単にウエブページに載せるのでは読むほうも大変だし、読まれないのではないか。

そこで、メルマガにするのがよいと思いました。約1年をかけて、宇宙の誕生から始まって、地球の歴史、生命体の歴史、人類の歴史、それらを現代の視点を交えて現代まで解説する。特に、考え方に力点を置き、科学的な認識、人生論的な理解について書く。次の年は、その改訂版を書く。こうして積み上げていけば、全体として自分の哲学の程度を点検できることになる。一方で、ネットで記憶を確認すると、いろいろな情報や考え方に出会うものですから、世界が広がっていく気分です。

私たちは皆、未整理な知識を大量に持っていて、常々、体系的なものにしたいと思っています。知識は学校時代では教科や教科書といった体系的な姿・形をしていたからでしょう。社会人になると、職場や家庭、地域社会での活動などの生活の中で得る知識、仕事に関する専門的な知識、読書や趣味など個人的な知識はそれぞれが断片的です。それぞれの知識単位が意外な関連を持ってつながったとき、また、概念的な類似性などに気づいたとき、それをコアとして知識の体系にまとめあげる。こんな作業に興味を持ち、結構面白いと思っていました。

何版か重ねるうちに、私がメルマガを利用して行っている趣味は、大げさに言うと、科学が積み上げた知識を100%活用しながら、新しい「神話=世界創造」の世界を生み出す知を組み立てることと思うようになりました。かつての宗教の教義・哲学のように、新しい「神話」はできるだけ日常と重なり合う必要があり、生活や社会全体を豊かにする道具となるでしょう。

現象学の祖とされるフッサールの講義は毎年同じテーマの繰返しでした。同じノートを繰り返すだけのどこかの教授の講義と違い、内容が年毎に深まったと評価されています。分子生物学の有名な教科書は改訂版が定期的に出版されます。学問の進歩が早く、内容が数年で陳腐化するからです。このメルマガも同じフレームで繰り返し発表することで全体の質を高めたいと思っています。

あくまで自分のための作業なので、自分の知っている範囲の事柄を、自分の認識の深さに応じてブロックパズルを組み立てるような、そんなイメージです。読者の皆様には雑学的な知識となりますので、お好きなところから入ってください。

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1. ビッグ・バン・・・無限大と無限小 [ゼロ]

今から137億年ほど前、真空の揺らぎから宇宙が誕生した。

宇宙の最初を計算すると、特異点問題が発生する。特異点での宇宙の大きさはプランクサイズ(10E-44秒、10E-33cm)である。プランクサイズではハイゼンベルグの不確定性原理により、エネルギー保存則やアインシュタインの相対性理論が破れる。この大きさでは真空で物質が生じたり消滅したりする(仮想粒子)。

宇宙は誕生直後、10E-34秒後までにインフレーションにより急膨張し、過冷却状態になった。真空が宇宙前の状態から現在の状態に相転移したときに開放されたエネルギーで宇宙は高温で高密度な状態になった。宇宙は、高速で飛び交いエネルギーを交換する素粒子(クオークとレプトン)に満たされていた。数cmサイズから膨張したことから爆発に例えられる。

インフレーション以後、宇宙空間の膨張は一定の速度で進んだと考えられる。最近、遠方の超新星ほど、宇宙の膨脹率が一定であると考えたときの速度よりも大きな速度で遠ざかっているように観測された。すなわち、宇宙の膨張は加速している。そこで、新たにダークエネルギーの概念を導入して説明しようとしている。膨張のスピードから計算される現在の宇宙は半径 470億光年。137億光年より先では、空間は光速を超える速度で膨張し、一番外側は光速の3倍以上である。

粒子の誕生とともに力(相互作用)も誕生したと考えられている。まず、出現したのは重力である。宇宙誕生の10E-38秒後と推定されている。ほかの相互作用が光子やグルーオンなどの素粒子の交換で伝達されることから、重力を伝達する粒子はグラビトンと呼ばれている。すべての素粒子に引力(万有引力)として、遮られることなく無限遠まで働くため、マクロの世界を支配している。地球、太陽、銀河系などの天体の運行をつかさどり、巨大な宇宙の構造を作り出している。

次に現れたのはグルーオンにより媒介される強い相互作用と電弱相互作用(弱い相互作用と電磁気力)と呼ばれる2つの力で、宇宙誕生の10E-33秒後と推定されている。宇宙誕生の10E-13秒後には弱い相互作用と電磁気力に分かれた。弱い相互作用は伝達距離が極めて短いために、日常の世界で、その影響を見ることはない。 宇宙誕生の10E-13乗秒後にはヒッグス粒子の場に満たされ、ヒッグス粒子と相互作用する素粒子(光子以外)に質量が生まれた。

誕生の10E-6乗秒後、クォークがグルーオンによりまとめられ、陽子や中性子が作られた。陽子と中性子は中間子を媒介として原子核を形成した。強い相互作用、グルーオンは陽子、中性子、原子核に閉じ込められ、日常の世界で見ることはない。さらに温度が下がって、誕生の10の-4乗秒後、宇宙には陽子と中性子、それらの結合した原子核、電子、光子、ニュートリノが基本粒子として残された。宇宙誕生1 分後には陽子と中性子が結合した重水素原子核が安定化して、その後、核融合が進み、軽い原子核が合成された。初期の宇宙では陽子が1個の水素(創生された中性子の数によっては重水素)と、陽子が2 個のヘリウム原子核が大部分を占めている。

+++ 宇宙は光の速度を超える +++

4月に国立天文台が公開した「一家に1枚 宇宙図 2007」。人類が観測できる範囲は時空間(空間は2次元になってます)の中でしずく型をしていると言う図が目を引きました。そして、宇宙全体は半径 470億光年!?。それは137億年前の時点で地球から光速で遠ざかっている地点は、膨張の結果、光速以上で遠ざかる地点へと移動したためなのでしょう。そういえば、宇宙の半径は137億光年と宇宙年齢×光速と考えてきましたが、これも単純すぎた解釈でした。いずれにしても、しずく型の理解にはもう少し時間がかかりそうです。「宇宙の膨張は空間自体の膨張であるため、光速を超えることも可能」とか、「一番外側が一番速く私たちから遠ざかりますが、その現在の速度は光速の3倍以上」と、いままで光速に拘束されてきた宇宙観がちょっと大きくなりました。

+++ 対称性の破れ +++

エネルギーと質量(物質)は相互に変換可能です。アインシュタインのE=mc2が有名です。初期の宇宙では温度が非常に高く、飛び交う粒子のエネルギーが大きいことを意味します。この粒子はいったいなんだったのでしょう。単純に考えると、光子となりますが、これでいいのでしょうか。高エネルギーの光子が空間の何かに反応して、粒子・反粒子の対を生成したと考えられています。インフレーション直後の宇宙では、粒子・半粒子の対生成が頻繁に起こり、宇宙空間は無数の粒子と反粒子で満たされていたはずです。膨張とともに温度が下がって対生成の頻度が下がると、粒子と反粒子の対消滅のほうが優勢になります。もし、粒子と半粒子の数が同じだと、すべての粒子が対消滅してしまいます。

ところが、身の回りの物体がすべて粒子だけからできているという事実は、宇宙が高温で無数の粒子と反粒子が存在していたとき、すでに粒子の方が反粒子より多かったことを意味します。粒子と反粒子の数の差はどう説明されるのでしょうか。2008年のノーベル物理学賞はCP対称性の破れを理論的に予想した3人の日本人に授与されました。この業績はこの世界が粒子からなる理由のヒントを与えるものです。 ところで、自然界で反粒子というと陽電子です。陽電子は高エネルギーγ線を放射する放射性元素で生成されます。強い電場を組み合わせて、対生成した電子と陽電子を引き離せば、陽電子を貯めておくことができそうです。陽電子をビーム状に放出すると、反物質レーザーの出来上がりです。空気中の分子の電子と対消滅し、大量のγ線が発生し、かつ空気を化学反応性の強いラジカルに変化させると予想されます。真空中なら標的の表面で同じ反応が起こります。

スティーブン・ホーキングは1970 年代に、ブラックホールのわずかに外側で仮想粒子・反粒子対が生まれると、ブラックホールの重力がその対を引き離し、1つはブラックホールの中に消え、もう1つはその外側で物質として生き残るだろうと予測しました。反粒子が選択的に取り込まれるとブラックホールは蒸発するはずです。でも、γ線も出られないのですから、本当に蒸発・消滅するのでしょうか。 プランクサイズの空間では仮想粒子・反粒子対が生成・消滅を繰り返していると考えられ、ディラックの海と呼ばれます。

+++ 無限を飼いならすキーワードは繰り返し +++

無限は厄介な概念ですが、たやすく推論できます。
「父ちゃん、あの山の向こうには何があるの?」
「あの山の向こうには町があるのさ。」
「その町の向こうには何があるの?」
「町の向こうには海がある。」
「海の向こうには何があるの?」
「大きな陸地があって、山や町がある」
「その陸地の向こうには何があるの?」
「また海がある。」
「2つ目の海の向こうには?」
「やっぱり大きな陸地がある」

小さな子供でも無限は思いつきます。上の会話は幸運なことに地球を一周して元に戻り、無限が回避されました。子供はそのことにすぐに気づいて、興味を海の大きさや、一番大きな町はどこかなど、有限のものに移すでしょう。われわれも一流の物理学者にうまく丸め込まれているのでしょうか。素人には、物理学者は無限の時間と空間に垣根を築いたように見えます。

無限をイメージするキーワードは繰り返しです。まっすぐに伸びる線路。その先は地平線のかなたに消えます。地平線まで行ってみると、やっぱり同じ方向にまっすぐ線路は伸び、視界のかなたに消えます。無限をイメージするときは、通常、こんなイメージを持つのではないでしょうか。無限を「実現する」手続きも同じように繰り返しです。無限自体をそのままイメージすること、無限を実際に行うことは不可能です。原理的に何度でも繰り返すことが可能なイメージ、操作は無限の概念に容易に結びつきます。

無限の空間や時間は観測できる研究対象ではなく、言い換えれば、いつまでたっても結論が出ない実験や観測です。物理学の目標はすべての物体やエネルギーについて語る体系作りです。ビックバンによって無限が回避され、現宇宙の一応のめどが立って、物理学者はほっとするとともに、がっかりしたのではないでしょうか。

しかし、無限は回避されたわけではありません。ビッグバンより前の状態という質問が成立します。無限の過去は知ることができないし、無限のかなたは知ることができないと説明されただけです。絶対に(この表現にも無限が潜んでいる)知ることができなければ「ない」のでしょうか。

+++ 高温の素粒子の運動・生成・消滅は数学で記述される +++

相互作用のかたちは、場の量子論(ゲージ場理論)にもとづいています。強い力は量子色力学(QCD)、電磁力と弱い力はワインバーグ・サラム理論で記述され、この2つの理論を合わせて「標準模型」とされています。 相対性理論による重力場の説明はへこんだ平面としてイメージされます。質量により空間が変形し、その空間を運動する質量(物体)の速度や方向が凹みに応じて影響を受けます。同じように、電磁気学で考察する電場、磁場も同じように空間が変形して、荷電粒子に力を及ぼすとイメージできます。ゲージ粒子を交換することで力を及ぼすのが、日常の電磁気現象などを考えると、どうも頭に入りません。とりあえずは高温における素粒子物理学と捉えています。

+++ ビックバン宇宙は観測と理論から導かれた仮説である +++

ビッグバンと呼ばれる宇宙の始まりは、虚無の空間の中に突然、強い光とともに爆発が生じたようなイメージです。しかし、冒頭書き出したように、初めにあった虚無の空間は人間のうかがい知ることができないため、虚無にしろ、ほかの言葉にしろ、表現することは不適当です。空間も3次元空間なのか、それとも、3次元は生まれた宇宙空間の特長なのでしょうか。また、時間もこのときに生まれたとする説もあります。

膨張するビッグバン宇宙はアインシュタイン方程式の解の一つとして予想され、ハッブルが観測によって膨張していることを証明しました。宇宙の星雲の大部分が地球から遠ざかっていて、遠い星雲ほどスピードが速い。そのスピードから計算すると、100億年ほど前には地球と同じ位置にきます。つまり、星雲のスピードが今と変わらないとすると、100億年前の宇宙は非常に小さい。多くの物質を小さな体積に圧縮すると温度が上がります。また、空間を小さくすると電磁波の波長が縮んで、温度が上がります。当時の温度を、現在の物質の量と密度から推測できます。こうして生まれたのがビッグバン仮説です。より詳細な観測と計算により、宇宙の年齢は137億年と見積もられています。

膨張スピードは星雲までの距離に比例するので、遠い星雲は光速で遠ざかると予想され、その星雲は観察できません。星雲の速度が高速に達する距離を宇宙の地平線と言います。地平線の外側の空間は存在していても、見ることはできません。つまり、窺い知ることのできない部分です。

宇宙を外から眺めること自体が不可能で、意味がありませんが、人間は宇宙を外側から眺めるというイメージを簡単に作り出してしまいます。宇宙の膨張は爆発して高温の炎が飛び散るのではなく、宇宙を二次元の球面に見立て、風船が膨らむイメージがより正確です。

+++ 無限は数学の中に現れる +++

中学のときに、数学の先生の推薦の言葉に乗って、解析概論(改訂第 3版、高木貞治著、岩波書店)を小遣いをはたいて購入しました。結果は惨憺たるもので、この本は高校生のときに1度開かれましたが、結局、大学時代まで眠ったままになりました。大学に入ってから3分の1くらいまで勉強したはずですが、最初の数ページの印象しか残っていません。

この本の最初に書かれているのがデデキントの切断です。実数の定義に使われるデデキントの切断は無限を利用した定義です。が、中学生のときにはこの定義の意味が理解できず、最初の10ページほどで立ち往生してしまいました。ところで、数学ではいたるところに無限が登場し、無限の概念なくては解析学は成り立ちません。高度な数学は知りませんが、無限は無定義で証明に使われています。

続いて数学入門(遠山啓著、岩波新書)を購入しました。この本は中学生の自分にとって、とても理解しやすく、中学生のうちから高校の数学まで展望できました。

+++ 無限小と無限大は裏腹の関係がある +++

ビッグバン理論による宇宙開闢時の姿は時刻と温度と空間の大きさとその温度で物質がどうなっているかで説明されます。空間の大きさと時刻は相関し、その相関係数がハッブル定数です。空間の膨張速度となりますが、値が変動しないとされているため、開闢時、すなわち、時間が無限小の場合は、無限小の宇宙空間を想定します。含まれる物質(エネルギー)は現在と同じため、宇宙のエネルギー密度は無限大に近い値となり、温度も無限大に近い値になります。現在、加速器を用いた実験で調べているのは無限大に近い温度での物質の状態です。無限大に近い物質密度は実験的に再現できません。もっぱら素粒子の状態を参考にして、ビッグバンが語られます。無限小はゼロです。ビックバンに象徴されるように、ゼロと無限大は相互に関連します。どんな数でもゼロで割ると無限大になります。

+++ 温度は粒子の運動エネルギーである +++ 温度とは分子や原子、素粒子の持つエネルギーです。電子と原子核が分離するような温度は測定できません。なぜなら、温度計が使えないからです。高エネルギー粒子は運動エネルギーを温度に換算します。素粒子で使われる運動エネルギーの単位はeV(エレクトロンボルト)で、1Vの電位差によって電子が得る運動エネルギーです。大雑把に温度に換算すると、1eVは1000K (絶対温度)に相当します。変換定数はボルツマン定数です。そして、粒子の運動エネルギー(エネルギー準位とも言う)が変化するとき発生する電磁波の色から運動エネルギー、すなわち、粒子の温度を推定します。光は電子のエネルギー順位が変化する時に発生し、物体は数百度から数千度の範囲で可視光線を出し、運動エネルギーに依存した色の光が発生します。

+++ 測定は系に影響する +++ 温度が低く、物質の温度が原子や分子の運動エネルギーで測定できる場合、物質は光を発生しませんので、閉鎖した物体の物理量に換算して温度を測定します。たとえば、赤く着色したアルコールの体積などがよく使われます。温度が高いとアルコールの体積は増え(アルコールの分子運動が高まるためと説明されます)、温度が低いとアルコールの体積が減ります。細い均一な太さの管に入ったアルコールはその長さで体積を、すなわち温度を測定できます。

また、半導体が持つ温度によって電気伝導度が変化する性質を利用しても温度を測定でき、最近ではこちらのほうがデジタル技術と相性がよいので普及しています。 温度を測定するには、その物体に温度計を差し込まなければなりません。差し込む温度計の温度より温度が高い物体の場合、温度計を入れることで温度が少し下がります。逆に、温度が低い場合は温度が少し上がります。厳密に正確な温度を測定する場合は温度を測る行為そのものが対象の温度を変える可能性を正確に評価する必要があります。もしくは、測定による対象の変化がごく小さく、例えば99%以上(この量も測定するという行為の目的による)は正確であるという予想の元で測定行為は計画され、解釈しなければなりません。

測定する行為が対象に影響するのは、温度や物理学な測定に限りません。世論調査をするときはアンケートを行います。アンケート自体は温度計とみなすことができます。対象とする集団のサイズとアンケートの規模により、アンケートを行った影響がでることがあります。例えば、全校生徒を対象としたアンケートなど。また、質問内容とその順番により、回答者の考えが変わるかもしれないことを想定する必要があります。アンケートを計画するときはこれらの点について注意する必要があるし、測定結果(アンケート結果)を解釈するときも同様です。

+++ 宇宙における理論的最高値と最低値 +++

高い温度には限界がありません。しいて言えば、(宇宙全体の質量−1個の素粒子)を運動エネルギーに変換して、残した1個の素粒子に与えたときの温度でしょう。一方、低い温度には限界があります。温度は素粒子の運動ですから素粒子が静止しているとき、温度がゼロです。この温度を絶対零度といいます。絶対零度を基準とした温度を絶対温度といい、Kであらわします。水の状態変化で決めた0℃と100℃はそれぞれ絶対温度でそれぞれ273Kと373Kです。

宇宙の年齢を想定することで、時間の最大値137億年(宇宙の年齢)と距離の最大値137億光年(光が137億年かかって進む距離)が示されます。現在、質量の最大値(宇宙の質量)が問題となっています。暗黒物質(ダークマター)という光やその類のものでは観測できない物質の量の測定が焦点です。質量の最小値は光子の0です。

+++ 日本神話には生まれてすぐに姿を隠す神がいて、宇宙創生の基本粒子や相互作用を想起させる +++

宇宙創生のときに物質と同時に相互作用が出現し、基本粒子や相互作用が、宇宙の温度が下がると消える(見えなくなる)くだりは、古事記の書き出しを思い起こさせます。

天地初めて発れし時に、高天原に成りし神の名は、天之御中主神、次に高御産巣日神、次に神産巣日神、此の三柱の神は、並に独神と成り坐して、身を隠しき。

次に、国稚く浮ける脂の如くして、くらげなすただよへる時に、葦牙の如く萌え騰れる物に因りて成りし神の名は、宇摩志阿斯訶備比古遅神、次に天之常立神。此の二柱の神も亦、並に独神と成り坐して、身を隠しき。上の件の五柱の神は、別天津神ぞ。

初めの3柱の神はクォーク、弱い相互作用、強い相互作用になぞらえるでしょう。誕生と共に姿を消す神は日本神話の独創と思います。日本人は、なぜ、このような神を思いついたのでしょうか。

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2. 宇宙の大規模構造の誕生・・・流れと秩序 [散逸構造]

インフレーションによって急激に膨張した宇宙は、初期の小さな揺らぎをそのまま拡大した。現在、その揺らぎは背景放射のわずかな不均一性と、銀河の分布に偏りがあることに現れている。小さな揺らぎは重力によって拡大され、宇宙の大規模構造を形成した。

銀河は1000万光年程度のスケールで集団を作っている。太陽系の属する天の川銀河は局部銀河群に属する。銀河群や銀河団(群より大きい)はさらに超銀河団を形成している。天の川銀河はおとめ座超銀河団に属する。超銀河団は数億光年の大きさを持つ。宇宙には逆に銀河の存在しない大きな空間がある。銀河の分布を調べると、泡状構造となり、銀河は泡(銀河が存在しない空間。ボイド)の周囲に集まっていることが判明した。

宇宙の大規模構造ができるには、目に見える恒星の物質だけでは重力が足りず、理論的に計算すると時間がかかりすぎる。目に見える物質より数倍の質量の暗黒物質(ダークマター)を仮定し、星間ガスや恒星がそこに引き寄せられて星や銀河が形成されたという仮説が生まれた。暗黒物質は重力レンズ効果を利用して間接的に質量や分布を測定する。宇宙における暗黒物質の大規模分布を示すマップをみると、暗黒物質の網目状構造が時間の経過(地球に近づくにつれ)とともに成長し、巨大なボイドで隔てられているようすがみられる。暗黒物質の網目構造に沿って銀河が集中し、暗黒物質の中で銀河が育ってきたという銀河形成論を観測的に検証できた。

+++ 宇宙の進化の基本は冷えていくことである +++

宇宙の進化は冷えていくことです。宇宙の温度が下がり、膨張することで、全体として現象は一定方向に流れます。 ただその流れは一様ではなく、あちこちに乱流を作り(素粒子)、構造体(原子や分子)をつくり、構造体は一時的ですが、散逸構造:秩序(星や生命)を作り出しました。宇宙の流れが容赦なく進行すれば、やがて渦(星や生命)は消えてしまうことでしょう。これが宇宙進化の姿です。現在がもっとも多様な時代で、数百億年もすると、熱力学の第二法則にしたがって、やがて宇宙は熱的死を迎えるのでしょうか。それとも、よく言われるようにもう一度ビッグ・バンのような状態に戻るのでしょうか。

+++ 非平衡状態が実体化すると散逸構造が誕生することがある +++

流れは乱れを発生させ、乱れは渦や波などの構造を造り出します。熱力学的な流れでも構造が作られます。 熱力学では閉鎖系を取り扱っていました。したがって、系には外側があっても、系に影響は及ぼしません。系の外側を仮定し、その系とエネルギーや物質のやり取りがある場合、その系だけに限って言うと熱力学第二法則が成り立たないことがあります。一定の速度でエネルギーが流れる(変化する)定常状態を仮定します。エネルギーが流れていますから非平衡系です。そのなかに開放系をはめ込むと、エネルギーの流れを取り込み、そのエネルギーを利用して解放系の内部に構造が誕生します。プリゴジンとブリュッセル学派はその構造を散逸構造と呼びました。開放系はエネルギー状態の高い物質やエントロピーの低い物質を取り込んで系の複雑さや秩序を増し(エントロピーを低下させ)、エネルギー状態の低い熱エネルギーやエントロピーの高い物質を捨てています。

単純な物質世界では系の中の小さな揺らぎが発展し、自己組織化して、目に見えるような秩序だった構造になります。いい例ではないかもしれませんが、台風も、山火事も、みんなはじめは小さなエネルギーではじまります。外部からエネルギーを供給され続けると、自己組織化・自己増殖し、臨界点を越すような破壊的なエネルギーをもつ構造・大きさにまで発展します。台風の場合は海からの蒸散による熱エネルギーであり、山火事の場合は木々が燃料として供給されることです。 生命体が始めて膜をもち、自らの系を外界と区別したとき、生命体の自己組織化がスタートしました。以後、生命体は宇宙の熱力学的な不可逆過程に逆らうように個々のシステムを精緻にしてきました。

+++ 銀河の誕生過程は解明されていない +++

銀河の形は様々です。代表的な形は、古い星が多い「だ円型」や若い星が多い「うず巻き型」です。銀河の形を決めている要素や分布、回転を維持する重力の問題など、多くのことがわかっていません。 最近の観察では予想よりも多くの古い銀河が存在することが明らかになりました。初期宇宙ではこれまで考えられていたよりも速やかに、星が形成されたのでしょう。一般的には、小さな銀河が衝突合体を繰り返して、大きな銀河へと成長すると考えられています。しかし、超巨大なガスの塊から、いきなり銀河(銀河サイズの星の集団)が形成された可能性もあります。

どの銀河も中心核を持ちます。特に莫大なエネルギーを発生している銀河の中心核を活動銀河核と呼び、その代表格がクエーサーです。近いもので7.8億光年、遠いもので130億光年先に存在します。130億光年といえば宇宙の晴れ上がりの頃です。きわめて小さな領域から普通の銀河の100倍ともいわれる大量のエネルギーを放っています。ブラックホールが銀河の真ん中でまわりの物質を飲み込んでいると考えられています。その量は平均的なクエーサーで、恒星質量に換算して年間10個分。クエーサーは6万個も発見されていますから、大量の物質がブラックホールの餌食になっているようです。

+++ ガスといえども巨大になると重力を持ち、星にまで収縮する +++

宇宙サイズのガスは収縮できるのでしょうか。ニュートンの力学の方程式では質量の間に働く引力は質量の積に比例し、距離の二乗に反比例します。気体分子は軽いし、宇宙規模であればそれぞれの距離も相当なものがあると推測され、ガスが収縮して星になるためには、重力による収縮が温度による膨張に打ち勝つ必要があります。分子雲はそう簡単には収縮できないように思います。 そこで、単にぎゅっと縮むだけではなく、流れと渦があると、濃い部分が強調され、恒星が誕生しやすいと思います。しかし、流れや渦を作り出す力はどこから来るのでしょうか。本当に気体の渦が恒星を生み出すのかわかりませんが、私にとってはなんとなく自然に感じられます。実際の科学の現場では大型コンピュータを用いたシュミレーションにより、宇宙スケールのガスの状態を計算し、揺らぎが発生すること、揺らぎが成長することが示されています。

実際のところ、力学の方程式があり、その計算結果から収縮可能な分子雲の条件が決められます。宇宙空間で分子雲が収縮せずにいられる最大の大きさをジーンズ長、重さをジーンズ質量と呼びます。詳しくは専門家にお尋ねください。

+++ 流体力学は日常世界よく目にする現象を説明する +++

固体・液体・気体のうち、気体と液体を合わせて流体と言います。流体の特徴は形がないことです。流体も固体と同じように力が働きます。例えば風車や水力発電、台風や洪水を想像してみてください。ただ、形がないこと、粘性があることが質点の運動とは違います。 力学というと、大砲から撃ち出された弾丸の軌道について計算するイメージがあります。高校で習うニュートンの法則です。しかし、これらの計算では空気の抵抗などを無視しています。固体である弾丸の代わりに、空気や水を放出するとどうなるでしょう? 形がないことと粘性をどう取り扱うか考える必要があります。流体力学は身近な液体、気体の運動であることから、重要な応用分野として発展してきました。 流れの現象は大きく分けて層流と乱流とに分けられます。物体表面の流れは、低速では秩序だった層流ですが、流れの大きさあるいは速さがある程度以上になると、流れの中の微細な渦運動が減衰せず発達し、次々に様々な大きさと形状の渦を作るようになります。これが乱流です。乱れは不規則振動です。また、その不規則性の中に規則的な性質の挙動が潜むこともあります。乱流は、運動する流体との境界に発生する摩擦力を増加させたり、流体の混合・熱伝達・燃焼の促進などの効果をもちます。

+++ 熱エネルギーとエントロピーには流れがあり、非平衡状態が出現する +++

エネルギーにも流れがあります。そこには非平衡状態が存在します。高いところから低い方へ水が流れるイメージです。 熱力学的な非平衡系の単純な例は、高温部と低温部があって高温から低温に熱が流れるような例です。高温部と低温部が同じ温度になれば、すなわち、システム内が一定の状態になれば、熱平衡系とよばれます。熱い珈琲が室温と同じ状態になったとき、それが熱平衡系です。さまざまなシステムは、内部の温度差・圧力差・電位差のような非平衡性を解消するように流れをおこします。過程は不可逆です。勝手に元の状態に戻りません。不可逆過程は統計熱力学の本質と密接にむすびついています。熱力学第二法則はエントロピー増大の法則として、不可逆過程を定義づけます。ちなみに熱力学の第一法則はエネルギーの保存則、第三は絶対0度が存在することです。

+++ 線形モデルではスーパーコンピュータでも解析できない複雑系 +++

プリゴジンの散逸構造のように、ニュートン力学に代表される線形性を持たないような系を複雑系と呼びます。命名者は物理学者です。複雑すぎて解析不能である(?)ものを彼らはひとまとめに複雑系と呼びました。非常に複雑なものを扱おうとする時、コンピュータが扱えるか=計算可能な手順を作れるかが問題です。すなわち、計算可能性の問題が出現します。ただ計算量を増やせば複雑な現象を分析できるわけではありません。

複雑系を解析するには適当なモデル系が必要です。乱流はこの3つの特性をもち、従って乱流現象、あるいは乱流力学はその代表と言えるでしょう。

+++ 複雑系の中に思いがけない構造が見つかる +++

複雑系の多くが脳や生態系、遺伝子といった生物システムであり、経済的な活動や言語的な相互作用といった物理的実体を伴わないものです。複雑系は開放性、非線形性、組織性の3つの特性を備えています。最近では複雑系の中に単純な法則を見出す研究が盛んになってきました。創発(emergence)は相互作用をする多数の要素からなる複雑な系の内部に重要なパターンがひとりでに出現するという考え方です。

この種の研究は積み上げることで明らかになるというより、今まで気づかなかった繋がりや類似性を見出すという跳躍性があります。要するに「はっとする」ことです。秩序なき複雑性のうちに意味ある単純性を見出す瞬間。そんな瞬間には深遠な原理に戸惑いさえ覚えます。

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3.  恒星の誕生・・・宇宙の晴れ上がり [階層]

ビッグバンの3分後、水素、ヘリウムの原子核が形成された。水素の原子核は陽子1個と中性子を0、1、2個含む3種類がある。また、ヘリウムの原子核は陽子2個と中性子2個を含む。宇宙は原子核と自由電子に満たされ、プラズマ状態となった。宇宙誕生から約 38万年後に温度が約4000℃に冷えると、電磁気力により原子核の周りに電子が捕らえられ、原子が形成された。これを宇宙の中性化と呼ぶ。すると、自由電子に吸収されたり放出されたりして直進できなかった光が妨げられずに進むことができるようになり、宇宙は透明になった(晴れ上がり)。このとき宇宙を満たしていた光が2.7Kの宇宙背景放射と呼ばれる。当時の宇宙の大きさは現在の1000分の1と見積もられる。

約2億年のうちにガスが濃い部分が自らの重みで収縮し、大量の水素が星に集められ、多数の恒星が誕生した。宇宙空間に残された水素は星からの紫外線によって電離した。この過程を宇宙の再イオン化と呼ぶ。

現在、観測できた最古(最遠方)の銀河は宇宙が誕生してから約 10億年(130億光年先)のクエーサーである。クエーサーは巨大ブラックホールに大量の物質が落ち込むために強力な電磁波が発生する天体である。クエーサーの分光学的観測結果から、鉄が見つかった。鉄は恒星の核融合によって合成される。宇宙誕生後わずか20億年という初期宇宙では、質量が銀河とほぼ同じ巨大ガス天体も多数見つかる。巨大ガス天体は多数の星を生み出し、銀河へと凝縮するのであろう。

シュミレーションでは巨大恒星の前に太陽質量の1%程度の小さなプロト・スターが形成され、それが巨大な第一世代の恒星を形成する種となった可能性も示されている。最近の観測結果から、100 億年前の若い宇宙で星形成活動が最盛期にあった大質量銀河では、星は予想外に高い形成率で生まれたことが示唆されている。

+++ 階層に分けると森羅万象を効率よく説明できる +++

階層性とは、時間あるいは空間のスケールが異なると別の構造が見えてくることを言います。階層を分ける場合のスケールは対数・指数的に変化します。階層で様々な大きさのものを分類すると、物事が起こる時間のスケールや、法則などが切り替わり、上下の階層をそれほど意識せずにその階層の現象を記述できます。例えば、化学反応は分子・原子の結合として法則を記述でき、特に原子核間力を持ち出す必要はありません。もちろん、階層は独立に存在するのではなく、上下の階層から影響を受けます。通常は下位の階層を構成する要素の運動や活動からその上位の階層の現象を説明できます。そして、階層を2つ以上関連付けて記述すると、学問領域の教科書となります。

生物においても、原子→分子(タンパク質、脂質、糖、核酸)→ 細胞内小器官→細胞→組織→臓器→生物個体→生態系という具合に階層性を見出すことができます。鉱物・岩石→山、川、地層など→海洋・大陸・大気のような階層があり、地球(惑星・衛星)や太陽→恒星系→銀河系→銀河団・泡構造→宇宙と階層を連ねることができます。各階層は下位の階層にあるシステムを構成要素として成り立ち、固有のスケールと変化に要する時間軸を持ちます。クォークから宇宙までを時間と大きさの対数軸上に並べると、人間を1(1m)とした場合、宇宙の大きさ(140億光年)は10の26乗になります。クォーク(素粒子)の大きさは…ない。代わりにプランク距離10の-35乗を採用するべきでしょうか。

+++ 階層という考え方は人間の脳の情報処理の構造から生まれてきたのか +++

物質世界にしろ、情報世界にしろ、そこに構造を認めて階層化する脳の働きは生まれたときから備わっているのでしょうか。言い換えると、遺伝的に決まっている(担当する遺伝子がある)のでしょうか。

階層化とは事象の整理・整頓です。身の回りや学問領域のたくさんの事実・情報から共通な性質を抽出して、グループ化します。次にグループの関係を整理してみると、より大きなグループを作る支配的な性質と、グループの中に入る性質とがあります。大きなグループを作る性質を上位とすると、物質世界では大きい方、情報世界ではより抽象的な方と解釈されるでしょう。包含関係は視覚的なイメージであり、構造です。

知識の構造は一つの体系だけを見ていたのではなかなか本質的なことがわかりません。例えば、言語の構造は日本語だけに注目するのではなく、英語、フランス語など他言語との共通点を探り出していくことで発見されます。同様に、生物学、数学、社会学、心理学、政治学などの学問体系について、研究方法、対象に対するアプローチの仕方、基本概念などを比較することで、人類としての精神活動の構造が見えてきます。このような考え方に基づいて構造主義が誕生しました。

+++ 宇宙最初の天体は見ることができない +++

最近では「すばる」やハッブル望遠鏡などの大型望遠鏡による写真がネットで手に入るようになりました。巨大天体望遠鏡では宇宙誕生から10億年の頃の宇宙の様子が観察できます。10億年前にはすでに銀河が誕生しています。一方、背景放射から知ることのできる宇宙は温度は高いが物質は極めて一様であり、天体らしきものは存在しません。さらに、宇宙背景放射を詳しく解析すると、宇宙は年齢1億年の頃に再イオン化したことがわかってきました。水素原子の再イオン化は恒星の放出する紫外線により起こりますので、1億年の時代に宇宙で最初の天体(第一世代天体)が形成されました。この時代についての情報は少なく、第一世代天体の誕生については大規模なシミュレーションが計画されています。

+++ 重力は天空を支配し、電磁気力は分子の世界を支配する +++

私たちが日常経験する重力以外のすべての力は電磁気力です。静電気や磁石の力は日常生活で体験することができます。電磁気力は、光子の交換によって伝わります。遮られなければ電磁気力も遠くまでとどきます。物質は電気的に中性(プラスマイナス、N極S極がいつも一緒)なので、物体の間で電磁気力が働く場合は特殊な分子構造が必要です。ミクロの世界では電子と原子核を結びつけ原子を作る力、原子同士を結びつけ分子を作る力が、電磁気力です。電場もしくは磁場の中では自由電子が運動し、電流として測定されます。光自身が電磁波で、電場と磁場が空間を移動するものです。電磁波は電子の運動(エネルギー)から発生します。

+++ 宇宙の初期の歴史区分は物質の階層性と関係している +++

様々な物質は分子や原子の集合体です。分子は原子が結合した粒子です。原子には水素、酸素、窒素、鉄、金、ウランなどがあります。それぞれの原子は原子核と電子からできています。原子核の性質は結合する電子の数を決め、原子の性質を決めています。原子核は陽子や中性子が結合しています。陽子や中性子はクォークが結合しています。 というように、物質には段階的に、より小さな構成要素があり、しかも、それらの構成要素は宇宙史において小さい順に出現してきました。

+++ 知識や情報処理も階層により整理する +++

階層性に関しては物理学や生物学に見られるような時間と空間に依存する階層のほかに、知識や情報処理の階層もあります。 人間は感覚器から外界の情報を得て、脳で情報を処理します。まず、感覚器からの直接情報があり、生物学的には感覚器の受容細胞の興奮として表現されます。次に、興奮が神経細胞へ伝えられ、複数の感覚器(細胞)の興奮が統合され、「素」の経験、生情報が形成されます。一連の生情報が一つの事として捉えられ、統合されて一つの経験として一次解釈されます。そして、一次解釈を集め、法則性を分析した二次解釈が生まれ、抽象化されます。我々の意識に上るのは一次解釈からです。

人間の情報処理系のハードウエアは感覚受容細胞から大脳に到る神経系です。情報処理の階層性は、ハードウエアとその伝達制御を行うソフトウェアで表現されているはずであり、ニューラルネットワークと呼びます。コンピュータによる情報処理も同じような発想で形成されています。1と0の信号(電流のオン・オフ)からCPUの制御命令セットが作れられ、それらが組み合わされて人間の理解が容易なプログラム言語となります。測定装置からの入力も1と0の信号に変換され(デジタル化)、プログラムによって、人間が解釈できる出力に変換されます。  エキスパートシステムのように、一次情報を階層化して整理し、高次の情報を引き出すよう設計されたソフトウエアもあります。

+++ 人間の思考の枠組みは構造主義により明らかにされた +++

風土、文化、歴史、技術的背景が異なる地域で、研究対象について共通性が抽出できれば、それは、人類としての精神活動の構造、本質であると考えられます。宗教、物語、生活のマナーなど、国際比較をすることで、より基本的な要素を考察します。文化人類学は構造主義の発祥となった学問です。間違ってはならないのは、学問的な基本法則が正義を意味するのではないことです。それぞれの国のアイデンティティを重視し、尊重しなければなりません。

構造主義が明らかにしたように、私たちは人類としての精神活動の構造に囚われていて、実は、自由や自律性は限定的なものです。構造を持っている現状をどのように評価するかがポイントです。判断や行動が全く自律的でないと悲観するか、構造の中でも、十分に自由で自立的な主体として行動できると満足するかは各人の精神性の問題でしょう。

人は無意識世界や、時代や文化の制約から自由にはなれません。しかし、そのような足枷があると考えると、国民性や「育ち」により、物事の解釈に齟齬があることに敏感になり、感受能力を高めることができます。

+++ 階層を考えると構造の構成要素が見えてくる +++

各階層の構成要素は互いに作用しあい、自己組織化して構造物を作り、それらが上の階層の構成要素になります。逆に、ある要素の機能や性質を明らかにしようと思うと、要素をより基本的な細部に分け、それぞれの細部を個々に理解すれば、総体として元の要素を理解したことになります。この考え方を還元論と呼びます。

よりミクロな法則がよりマクロな法則を導くと考える物理学や化学の考え方はその典型であり、物質社会にでは大成功を収めました。ところが、この考え方を生物学や経済学に応用しようとすると、困難でした。還元論の立場からは、細胞の集まりから個体生物を説明できるはずで、また、分子の集まりから細胞を説明できるはずです。しかし、構成要素があまりにも多様で個性に富んでいるため、調べつくせないのです。同様に、社会や経済を人の集まりとする還元論的分析も同様の限界を抱えています。

多くの要素を単純な法則に当てはめて計算するのはコンピュータが得意です。極小と極大の世界で成功した階層性:還元論を人間サイズに近い階層で応用可能にする技術はコンピュータでしょうか。

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4. 恒星の進化・・・原子核合成は錬金術 [核反応炉]

恒星の一生は進化と呼ばれる。宇宙で最初に誕生した第一世代の恒星群は、宇宙が現代に比べて小さく、材料となる水素やヘリウムの濃度が高かったので、質量も桁違いに大きい。重力によって水素ガスが凝集し、中心部が1000万度を超えると、核融合反応が大規模に進行した。

宇宙の最初の水素の原子核は陽子単独だったのか、また、中性子を含む重水素が主だったのか不明である。重水素は2つの水素原子核(陽子)からも作られる。陽子が衝突すると、2つの陽子のうち、一つが陽電子とニュートリノを放出して中性子に変わる(ベータプラス崩壊)。陽電子は周囲にある電子と対消滅して熱エネルギーに変わる。こうして陽子と中性子からなる重水素原子核ができる。重水素原子核に水素原子核である陽子が結合するとヘリウム3原子核(陽子2個と中性子1個)ができる。ヘリウム3原子核同士が核反応してヘリウム4原子核(陽子2個と中性子2個)と、2個の水素原子核(陽子1個)ができる。

ヘリウム原子核は最初の核融合反応の燃えかすとして恒星の中心にたまり、その外で水素原子核は核融合反応を続けた。やがて、水素原子核が少なくなり、核融合反応が弱くなると、温度が下がった。中心核が重力で収縮し、逆に温度と圧力が上昇し、ヘリウムの核反応が始まる。ヘリウム原子核3個が炭素原子核(陽子数6個)1個に変わる。さらに、炭素原子核とヘリウム原子核から酸素原子核(陽子数8個)ができる。続いて、炭素が核反応を起こす。炭素原子核2個からネオン(陽子数10個)、ナトリウム(陽子11個)、マグネシウム(陽子数12個)等の原子核ができ、さらにいろいろな核反応がおきてケイ素(陽子数14個)、鉄(陽子数26個)などの原子核ができた。

恒星の内部で主要な核反応が終わり、熱の発生がなくなると恒星の芯は収縮する。収縮すると温度が上がり、次の核反応が始まる。段階的に構成の内部は高温・高圧になる。あとになってできる原子核ほど重いので中心にたまり、年老いた恒星の内部は、鉄を中心に何層かの層状になった。原子番号が大きくなると、原子核どうしのクーロン斥力 (同じ電荷を持つ粒子が互いに反発する力。原子核は陽子のプラス電荷を持っている) が大きくなるため、核融合が起こりにくくなる。核融合で生成し得る元素は原子番号26である鉄が限界である。すなわち、第一世代の恒星の内部では鉄の原子核までが作られた。

宇宙誕生後、数億年で第一世代の恒星群は超新星爆発を起こし、巨大なブラックホールになった。超新星爆発のエネルギーは核融合反応で作り出した比較的軽い原子核を宇宙空間に放出した。また、鉄より重い原子核を作りだした。

+++ 放射性廃棄物を考えると原子力発電はコストが合わないのではないか +++

原子力発電は公害を起こさないクリーンな発電であると宣伝され、すでに全国の30%もの電力を担っていますが、これから処分費用が発生してきます。しかも、廃棄物を管理しなければならない時間は原子炉を利用できる運転寿命を遥かに越えます。単純に考えると、原子力発電を続ける限り、廃棄物は蓄積する一方となります。

システムの管理に対する費用を十分に評価しなかったため、様々な手抜き的体質が問題となっている原子力発電。これからは高レベル放射性廃棄物の管理も含まれてくることになります。隠蔽・ずさん体質は変えなければならず、また、費用に対する手当てもリアルタイムに評価すべきではないでしょうか。国家政策として推進したため、コスト・ベネフィットの分析が十分になされなかったと考えられます。本当は他のエネルギー源と比べて安いのでしょうか。そろそろ市場原理を導入すべきでしょう。

+++ 宇宙最大のダイアモンド +++

太陽より少し小さな恒星はさらに小さな原子番号の原子核までしか核反応が進まず、その元素を主成分とした核を持つ白色わい星になります。炭素程度までしか核反応が進まない小さな恒星は、白色わい星になるころには大量の炭素が高圧高温で圧縮されることになります。これが冷えると、巨大なダイヤモンドができあがります。人類の知る一番大きなダイヤモンドは、地球からおよそ 50光年かなたのケンタウルス座にあります。直径は4,000km。炭素でできた核の周りに水素とヘリウムの薄い層がある白色わい星です。星の振動のようすを調べることによって、内部に炭素の結晶があることがわかりました。さて、値段はいくらになるでしょうか。

+++ 核融合反応には高温高圧が必要 +++

核融合反応は原子核のクーロン斥力を凌駕するエネルギーで原子核を押し付ける必要があるため、高温(素粒子にとっては運動エネルギー)が必要です。恒星の中心部では高圧によって原子核密度が高いため、比較的低温でも核融合反応が起きますが、地球上では10倍から100倍高い温度を達成する必要があります。

複数の原子核が一つの原子核に変化する核反応は核融合反応、逆に一つの原子核が複数の原子核に変化する反応は核分裂反応です。ウラン253の核分裂では質量の0.0009%がエネルギーに変換され、水素原子核がヘリウム原子核になるまでに質量のおよそ0.7%がエネルギーに変換されます。

+++ 巨大な原子核は自発的に分裂する +++

核分裂は大きな原子核が自発的に分裂する反応です。一定の確率で分裂するので、何もする必要はありませんが、中性子を使って原子核を不安定にし(不安定な同位体に変換し)、核分裂を促進させることができます。ウランやプルトニウムの核分裂では副産物として中性子も生成しますので、連鎖的に核分裂を起こすことができます。

発生した中性子がどの原子核にも吸収されずに外に出て行けば、連鎖反応は起こりません。ところが、核物質のサイズが大きくなると、1回の核分裂で発生した中性子が必ず複数の原子核の核分裂を誘導するので、連鎖反応が起こります。連鎖反応が起こる最少量を臨界と呼びます。原子炉では中性子を吸収する物質(吸収して同位体になっても性質が変わらない物質)を核燃料の中に入れて、核反応を制御しています。

+++ 核反応は化学反応より遥かに大きなエネルギーを発生する +++

実用化されている原子炉は、ウランやプルトニウムの核分裂反応を利用したものです。核融合反応のほうは、核兵器(水素爆弾)に利用(という言葉が適切かどうか微妙なところですが)されているだけです。これらの応用例からわかる通り、核反応は化学反応に比べて大きなエネルギーを取り出すことができます。 核融合はまだエネルギーとしては水素爆弾以外に利用できていませんが、核分裂は原子炉として実用化されています。

+++ レーザーで核融合を点火する +++

米国カリフォルニア州のローレンスリバモア国立研究所の国立点火施設(NIF)があるそうです。NIF は、192本のレーザーを組み合わせて、地球上のすべての発電所が作り出す電力の50 倍以上のエネルギーを10 億分の1 秒間だけ出すことができます。レーザーのターゲットは、焦点にある小さな水素ペレットです。水素に核融合の火をともし、これをヘリウムに変えるための施設です。

NIFでは、恒星内部で起きている反応を小規模で再現する研究が行われ、また、未来の核融合発電の基礎技術も検討されます。実際のところ、得られるエネルギーよりも投入するエネルギーのほうがはるかに大きいですが。NIF建設の主たる目的は、米国の核兵器を原子爆弾から、放射能を出さないクリーンな核融合爆弾にすることです。現時点では核融合を点火するには原子爆弾が必要です。核融合自体は放射性同位元素を発生しませんので。「安全な」水素爆弾ができ、そうすると、「確実に戦争に使える」と考えられます。だからこそNIFは5000億円もの予算を集めることができたのです。フランスにもレーザーメガジュール(LMJ)という、同様の目的をもつ施設があります。

+++ 原子炉の管理の基本は放射性物質の管理である +++

東海村に日本初の原子力発電所ができたのは1966年です。すでに運転を終え、解体・廃棄処分されました。これから次々と原子炉が廃止処分され、大量の核廃棄物や放射能汚染された原子炉本体などが処理されます。また、廃棄場は数百年は放射能汚染(漏洩)に関して十分に管理する必要があります。

核廃棄物を封じ込めるために被覆燃料粒子が考案されています。核燃料物質をセラミックス上に固め、さらに、中性子の速度を減速する炭素を多く含む層で被覆してあります。大きさは直径1 mmから小石サイズまで。被覆の硬度が十分であれば核燃料の取り扱いが楽にできます。定期的に取り出して被覆と発生温度を検査し、核分裂反応が終了しているようであればそのまま保管廃棄します。この一粒一粒が原子炉です。この方法は結構実用的な核廃棄物の応用例でしょう。

原子炉も次世代として高温炉が検討されています。原子炉冷却材に不活性ガスであるヘリウム(He)を使い、粒子の隙間を通して発生した熱を800℃以上の高温ガスとして取り出します。高温ガスの特徴を生かして、発電だけでなく、化学プロセス産業用熱源、水素製造、地域暖房など、温度により多段階で複数の用途に利用できるとされています。

+++ 放射性廃棄物の利用 +++

柏崎原子力発電所の運転再開が揺れています。私は原子力利用は化石燃料の大量消費から脱却するための過渡的な技術と考えています。発電所としての寿命に比べ、放射性廃棄物の寿命があまりにも長く、管理にコストがかかりすぎるからです。柏崎発電所が運用停止となれば、その場で保管廃棄されるでしょう。具体的にはコンクリートで厚く覆われ、監視のための装置(人?)が配置されることになります。そして、放射能漏れの監視は数千年は続けなければなりません。それだけの年月、地域は放射能汚染の危険を抱えることになります。超寿命の高放射性廃棄物は取り出されて別の場所で集中管理されます。その取り出し作業、運搬作業について、人々の理解を得るのは大変です。柏崎原子力発電所が廃止措置を受ければ、今後、新たに原子炉を建設したいという自治体は皆無となるでしょう。

ところで、高放射性廃棄物は利用できないでしょうか。核種に分けてから、小さいサイズで封入し、放射能を電気エネルギーに変換するのはどうでしょう。電離作用を持つβ線、γ線核種は利用できそうです。乾電池サイズが希望。半減期が数十年の核種を集めてもほぼ永久的に使えます。電源は無理として、熱源としてなら可能? 大きさはサッカーボールサイズ。1家に1個で、いつでもお風呂を楽しめます。ラジウム温泉ならぬ高レベル放射性廃棄物温泉!?。いずれにしても安全な封入技術と、2-3年に1回の定期点検が必要です。

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5. 超新星爆発・・・星の死と誕生 [死と再生]

第一世代の大質量星の鉄のコアは高温で光分解を起こし、ヘリウムと中性子になった。さらに星が収縮すると重力崩壊が起こった。高い圧力で電子が陽子に吸収されて中性子となり、大質量星のコアは中性子となり、周りの物質が強い重力によってコアに向かって落ち込んだ。衝突により衝撃波が生じて、星の外層は吹き飛び、コアはブラックホールに凝縮した。

超新星爆発のとき、膨大な光が外層の物質の原子核に入射して中性子を弾き飛ばす光核反応が起こる。中性子は電荷を持たないため、クーロン斥力が働かず、周囲の原子核と衝突して吸収されやすい。中性子が過剰となった原子核は不安定となり、過剰な中性子が電子とガンマ線を放出して陽子となり、ひとつ原子番号の大きな元素となる。この繰り返しで、短時間に大量の重元素原子核が生み出された。

超新星爆発の爆風(重力波)は周りのガスを吹き飛ばし、恒星間ガスを圧縮し、多数の第二世代の恒星を生み出した。第二世代と考えられる恒星は、長寿命であるが金属元素の乏しい恒星として、現在、銀河周辺にある星団などで観測される。第二世代の恒星が超新星爆発の最後を遂げた後にできた恒星は比較的金属元素を多く含み、第三世代の恒星と呼ばれる。太陽は第三世代である。

重元素は微量でも星の形成や構造に大きな影響を与える。重元素は赤外線を放出する量が水素、ヘリウムより多いので、重元素を含むとより少ない量のガスでも星にまで収縮可能になる。すなわち、星が形成されるときに冷却材として働き、熱による膨張を抑制する。一方、水素、ヘリウムだけだと温度が上がり、大量の質量がないと星になれない。第一世代の星は太陽の100-1000倍の質量と考えられる。第二世代以降は比較的、軽量の恒星が誕生するようになった。

太陽の質量の100倍ほどのガスから星ができる過程で、中心の構成の質量が太陽質量の20倍に達すると、光の圧力によって、ガスの沈降が阻害され、それ以上の重量にならない。が、実際には巨大恒星が存在する。光の圧力とガスの重量とが押し合うと、わずかな揺らぎでレイリー・テイラー不安定性が生じ、ガスは塊となって恒星に落下する。シュミレーションによると、太陽の質量の100倍ほどのガスからは太陽質量の30倍と40倍の連星が誕生した。宇宙には連星が多いのはこの過程が星を形成しているためであろう。

恒星の誕生に必ずしも超新星爆発は必要ではない。巨大な分子雲の中央に大質量の恒星が誕生すると、その光が周りの分子雲に圧力を加えたり電離させたりして濃度の高い分子雲を作り出す。分子雲は恒星に凝縮され、光はさらに遠くまで届く。この繰り返しで、特徴的な恒星集団の構造(OB association)が形成された。

太陽の20倍の質量の星は数万倍の明るさで輝き、700万年で燃え尽きてしまう(主系列から外れる)。太陽の半分の質量だと1000億年のあいだ核融合が続く。太陽の寿命は100億年と計算される。

+++ 太陽の最期 +++

太陽の場合、質量から判断すると、ケイ素の芯ができたあたりで核反応が止まると考えられています。コアが収縮しても次の核反応を起こすだけの高温、高圧にならないのです。新しい核反応が始まるとき、恒星外層部のガスは急激に膨張します。太陽は赤色巨星になり、木星軌道まで膨れ上がります。これだけの大きさになると、赤色巨星の外層大気(10μg/cm3)は地球の空気(1mg/cm3)より希薄になってしまいます。最後のコアの収縮では、外層大気の一部は、そのまま宇宙空間へ放出されます。ガスが内側の恒星の光に照らされて美しいリング状の星雲に見えます。そのガスが通過するとき、外惑星の運命はどうなるのでしょう。太陽も、50億年後には赤色巨星になり、ガスを放出してリング星雲をつくり、最後に残った芯は白色わい星になります。

+++ 役目を終えると速やかに死ねるということ +++

江戸時代には若いときはわき目も振らず働き、十分に蓄えを持って隠居するのが常でした。贅沢をせず、身近な楽しみで余生を過ごすと、死はそれほど遅くならず訪れました。介護を要するような状態になっても長期に及ぶ事は稀でした。また、年金など無くとも助け合う社会があったのです。現在の年金問題や関連する少子化問題は年寄り予備軍の権利意識がむき出しになっている気がします。もっとも、それしか頼るものの無い社会にしてしまったのかもしれません。

+++ 人間の文明社会の終焉は様々な形が考えられる +++

つい、20年前までは核戦争による終焉が議論されていました。人間は未来を知ったときから、自分自身の死とともに、世界の終末まで考えずにいられない宿命を背負いました。様々な宗教が、神による終末を描いていますが、今の私たちは、科学的に重層的に世界を捉えています。宇宙、太陽系、地球、地球の生命、人類、人類文明、現代社会。これらのすべてで人間文明の終焉を引き起こす要因を考えることができます。特に、人類の活動規模が巨大化し、地球環境全体に影響を及ぼしているという科学データに基づく警告が出てから、環境問題は科学からイデオロギーの位置に押し上げられています。

宇宙規模の天変地異としては超新星爆発、太陽の活動の一時的な活発化、小惑星の飛来。地球規模では超大型火山の噴火。人類が引き起こす生態系の破壊、温暖化と気候の大変動。人類の活動に目を向ければナノテクや新病原菌など科学技術の暴走、核兵器を使ったテロや全面戦争の脅威も去ったわけではありません。

天変地異や自然災害の場合は対策の執りようがないのですが、人類文明が引き起こしつつある数々の脅威に対しては、まだ、間に合うかもしれません。持続不可能な大量消費によるエネルギーや新物質の大量放出はとにかく歯止めをかける必要があります。そのために世界中でゼロサムの閉塞感が生まれています。ただ、文明的な過剰活動をいきなり停止すれば自然災害に等しいダメージを受けます。どのようにしてソフトランディングするかが最大の課題になっています。

+++ 終焉は始まり +++

いつの時代にも「科学の終焉」を予言する人々がいます。例えば、1890 年代にはニュートン力学の世界観がパラダイムであり、物理学の未解決問題はいくつも残っていないと考えられていました。けれども、1905 年にアルバート・アインシュタインが「光量子仮説」「ブラウン運動の理論」「特殊相対性理論」を発表して、物理学の3 つの新しい分野の基礎を打ち立てたてたのは有名な話です。

終わったかに思える状況はパラダイムという概念で説明できそうです。その時代の知性を覆うパラダイムの網が状況を見えにくくする。パラダイムに反することは無視する動きがあるからです。逆に、パラダイムの本体に気づけば新しい分野を開くことができます。

+++ 世代を超える情報が人類では淘汰として働きうる +++

進化の原動力は自然選択と性選択としたのはダーウィンです。以来、それ以外の選択の可能性はあまり考慮されてきませんでした。人類の歴史を考えると、短期間に驚くほどの進化を遂げています。特に脳の機能の進化は速く、突然変異と自然選択、性選択だけで説明できるのか不安です。

形質や機能の進化は単一の遺伝子の変化で説明するのは困難で、複数の遺伝子がいろいろ変化してその総合力として形質に現われると考える方が自然です。速く進化するには多くの小さな変異が効果的に積み上がったと考えることもできるでしょう。そうすると、ランダムに起こった多数の変異を組合せた原動力は何か?

通常は進化を集団として考えます。耐寒度を例に考えて見ましょう。寒さに強い性質は鍛えれば非常に強くなれる素質を持った人から、すぐに病気になってしまう人まで様々な人がいます。耐寒度を横軸に、人数を縦軸にとってグラフを作ると、おそらく釣り鐘型のグラフである正規分布になります。釣鐘の中央、一番人数の多い点が平均耐寒度に相当します(と、考えられています。誰も証明できません)。氷河期が到来すると、耐寒度の低い人たちは子孫を残すことができず、この集団は耐寒度の高い方へ分布が徐々にシフトします。この現象をもって進化を論じると間違いやすい。科学的には正しいのですが、重大な仮定があります。それはかなり大きい集団で成立する原理であることです。また、プレッシャーがなくなれば(上の例では温暖期になれば)、逆の変化が起こることも考えなければなりません。

若い日本人たちの体型(プロポーション)の変化は著しく、遺伝子(ゲノム)は実はエンドウ豆の色や形の遺伝からは想像も付かないくらい自由度の高いものではないか、と感嘆しております。厳密な証明はありませんが、私は人間の突然変異の発生数は多様な変化(進化だろうか?進化は不可逆的な変化として定義するか)をもたらすに十分な量と思っています。

そこで、ふと思いつきました。自然淘汰に加えて、世代を超えて受け継がれた情報が人類では淘汰として働きうる可能性です。言語活動もしくは類似の精神活動により、経験や自然に対する考え方を次世代に伝えることができれば、子孫は生き残る可能性が高くなります。

+++ アシュケナジ +++

東ヨーロッパ(ドイツ、ポーランド、ロシア)に住むユダヤ人をアシュケナジというそうです。

アシュケナジは約1500年の間、民族内での近親交配を続け、主に金融業に従事するという職業制限(知能重視)を設けてきました。おそらく、突然変異が作用した結果、彼らの知能指数はヨーロッパ北部の人々より高く、民族集団中、最高の115になりました。割合で見ると、知能の高さはいっそう際立ちます。知能指数が140以上の天才または準天才のヨーロッパ北部の人々は、1000人につき4人。これに対し、アシュケナジでは1000人に23人であり、6 倍。ノーベル賞受賞者の割合をみると、アシュケナジはアメリカの人口の3%を占めるに過ぎないのに、アメリカのノーベル賞受賞者の27%はアシュケナジである。さらに、チェスの世界チャンピオンの過半数はアシュケナジ。

ユダヤ人の民間伝承では、知能を高めるものは2つあった。1つは職業であり、もう一つは一番賢い子をラビにすることであった。ラビは裕福な一族の娘の夫にぴったりと思われていたので、子供をたくさん設けることができたという。アシュケナジの15%にスフィンゴ脂質突然変異があり(これを知能指数upの素因子と仮定している)、60%が遺伝病の素因子を1つか複数を持っている。

遺伝病の危険性は増しますが、知能重視で交配(縁組)すれば、知能の高い民族となる。なかなか魅力的ですが、知能が高い人が多いのがよいのかどうか。学歴社会で格差社会はどんな遺伝子を選択するでしょうか。

+++ 相続はお金だけでなく、事業・職業上のノウハウや地域社会での地位もあった +++

親からの遺産相続(生前贈与)を考えていたとき、ふと、子供に何を残してあげられるだろうかと考えました。金銭や生きる知恵のほかに何があるのだろうか。現代社会では遺産相続というと第一に経済的なもの、お金や不動産を思い浮かべます。親から授ける教育として、社会人としての態度や心構え、社会的な成功のための教養なども含まれるでしょうか。

核家族化以前は地域社会での地位を含め、社会的な信用や職業・技能も相続するものに含まれました。俗に言う親の七光りも相続の一環と考えられます。個人主義的な社会ではお金に換算できるもの以外は相続できなくなったようです。もっとも、親が活躍した地域社会に引き続き生きることもできます。その場合は腐れ縁も一緒に相続することになります。

親がその地域に根ざした活動をしていた場合は子がその活動を相続してくれないと寂しいと感じるでしょう。せっかく、地域で成功した事業も他人に渡すか、廃業することになる。何よりも一生をかけて培ってきたノウハウが宙に浮いてしまうのがやりきれない思いを生むと思います。昔は、事業・職業上のノウハウや地域社会での地位を受け渡す過程で、お金以外に人生哲学をも相続していたはずです。

+++ 人類は遺伝子だけでなく、知恵も次世代に残す義務がある +++

生物の生きていることの使命は、つきつめれば、次の世代を作ることです。哺乳類以外の生物が次の世代に生きるための能力を伝えるには、受精によって自分の遺伝子セット(ゲノム)を伝達することしかできません。哺乳類ではそれに加えて、次の世代(子供)の出生後の短い保育時間に能力(情報)を刷り込むことができます。生きていく使命が生殖と一致するのであれば、生殖可能な年齢を過ぎた動物は生きて行く使命を終えた動物。野生の大部分の動物の寿命は事実上生殖可能な年齢と一致しています。人類もかつて、そうだったでしょう。しかし、われわれ文明人には生殖年齢を過ぎても寿命が尽きません。この余分な部分は「生きていくことの使命」に従えば、自己の知識、知恵を何らかの形で次世代に残すために与えられていると結論できます。

+++ どの国に生まれ変わりたいか +++

平成21年、2009年WBCは燃えましたね。韓国との5戦は語り草になるのではないでしょうか。日本人には愛国心がないと嘆く向きもありますが、試合に熱狂する人々を見ると愛国心にあふれていると感じます。生まれ変われるとしたら、どの国に生まれ変わりたいという問いがあれば、おそらく日本人は100%近くが、日本人に生まれたいと答えるでしょう。私もやはり日本がいい。

太平洋戦争ではアジアの解放を謳った日本軍が各国で侵略行為をしました。明治以来、欧米先進国に対する劣等感を持った日本人(軍?)が、朝鮮と中国を軽蔑することによって不満を解消したその極端な面が出たと考えられます。この意識はまだ引きずられていて、日本人は、軽蔑しつづけてきた相手に敗北したことを率直に認めることができなかったのではないでしょうか。

WBCでの熱戦では、韓国が優勝したとしても、おそらく日本人はそれほど鬱屈した感情を持たなかったでしょう。愛国者であるがゆえに、自国が根拠のない劣等感、優越感を持つこと、それに基づいた間違った振る舞いを他国にする事を許せない。東アジアが豊かになり、いろいろな局面で対等になれば、自然と対立も解消すると思います。

+++ 新しい社会を築く +++

若者は社会に気づくと、社会の仕組みを理解しようとするのと同時に、まったく新しい人生観と社会観を築こうと考えます。 太平洋戦争の後、多くの日本人は物質的な遺産や価値観を灰燼に捨て去ってスタートしました。そのため、60年代の当時、都市部に移住した若者たちは、新しい人生観と社会観を築くという使命感を持っていました。2つの問題として集約されます。

1つは実存的な問題です。若者たちは、農村の暖かい共同性の経験を捨てて、都市に出てきました。都市は見知らぬ人々の集合体であり、疎外感を味わいながらも、親の生き方とは別の生き方を切り開かなければならないという問題。もう一つは当時の資本主義社会が抱える矛盾です。高度成長時代の繁栄の背後で、取り残された人々の貧困問題、繰り返されるかもしれない戦争問題、成長の代償である公害問題、いつもの政治汚職問題です。

過去の思想の束縛を受けない60年代の若者は直情的で過激でした。過去の(農村の)価値観を否定する自己否定、過去の価値観にとらわれていたと告白する総括が基本的な認識でした。

スローガン:惰性的な日常を過ごさずに情熱を持って生きたい。社会的・精神的な抑圧ないし疎外感を感じずに、生き生きとしていたい。型にはめられたくない。自分の殻に閉じこもらず、優れた目標を持った集団の活動に参加したい。これが本物だという生き方をしたい。自らの精神を浄化して、真の感性を取り戻したい。

この世代は団塊と呼ばれます。

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6. 天の川銀河・・・小宇宙の成り立ち [集団]

誕生後20億年前までの宇宙にはLyman-alpha blobs (LABs)と呼ばれる銀河サイズの光る水素ガスの塊がある。中心にブラックホールを抱えていて、その中に落ち込む物質によって輝いて見える。LABsは銀河へと発展途中と考えられる。中心のブラックホールは第一世代の恒星由来であろう。LABsのサイズは現在の銀河の大きさである。宇宙の進化にLABsを想定しないと、現代の銀河のサイズがとてつもない大きさになってしまう。宇宙誕生後30-40億年までにLABsの中で第二世代の恒星の形成が終了したと考えられる。

天の川銀河は、太陽系の属している天体の集団で、球状星団、散開星団その他恒星の集団や星間物質を含む1個の小宇宙である。大部分の恒星が円盤を形成する円盤部にあり、中心の膨らんだバルジ部の恒星のほうが渦巻き腕部の構成より古い。

銀河系の中心には強い電波源があり、「いて座A」と呼ばれる。巨大ブラックホールである。周りには星間物質が高密度で集中しているので光学的に見ることはできない。1990年代から銀河系中心近傍に存在する何十もの星の運動を10年以上の追跡観測が行われた。軌道を万有引力の法則によって解析すると、銀河中心の巨大ブラックホールの質量は太陽の370万倍と判明した。直径は0.15天文単位(2250万km)である。

円盤部の外側に銀河系を球形にとりまくハローと呼ばれる領域がある。天の川銀河を形成する星の中で最も古い天体はこの領域に散在する球状星団である。これらの星は鉄などの重い元素を太陽の数百分の1程度しか含まない種族II(第二世代の恒星)に分類される。くじら座の11.7等星は、鉄の存在比は太陽の 800分の1しかない種族IIの非常に古い星だが、珍しく放射性元素のトリウム232やウラニウム238が検出できた。高分散スペクトル観測により、相対存在比などから年令は125億年±33億年と決定された。この値は銀河系の年齢に相当すると考えられる。

円盤部は、主系列星、ケフェウス型変光星などの種族I(第三世代)に属する星や暗黒星雲が占めている。銀河を形成する恒星で最も多いのは赤色矮星と予想される。大きさは太陽の直径の1/3以下で、表面温度は3500度程度の暗い星である。水素の核融合速度が遅く、寿命が非常に長い。肉眼で見えるものはない。太陽から 10パーセク(33光年)内の348個の天体が調べられたが、そのうち、239個(約69パーセント)は赤色矮星であった。また、恒星の半分は連星である。連星の場合、惑星を含む恒星系の進化は太陽系のような単一星とどう違うのだろうか。

恒星以外の自ら光を出さない物質は見え方によって散光星雲、惑星状星雲、暗黒星雲などに分類される。主にガスやチリである。通常の宇宙空間に対して、100倍以上の密度をもつと星間ガスと呼ばれる。やがて自己の重力で圧縮されて核融合が始まり、星が誕生する。

銀河の渦巻きパターンは恒星の粗密波である。たまたま密度の高いところに重力ポケットが形成され、星がそこを通過するのに時間がかかる。すなわち、星がたまり、回転運動をしているので腕構造になった。さらに、星間ガスもたまり、星が誕生しやすい場所となった。

太陽系は銀河面内にあり、いて腕とペルセウス腕にはさまれたオリオン腕の銀河中心側にある。銀河中心より3万光年。太陽は半径30光年の中にある50ほどの太陽型の恒星と一緒に誕生したであろう。太陽の年齢はウラン238の崩壊の測定より46億年と算出されている。すなわち、宇宙誕生後91億年、天の川銀河が誕生してから79億年後。太陽は2億年で1回天の川銀河中心を回る。すでに23周した。

+++ 生物は群れを作り、統率のとれた集団行動を示す +++

メダカやタナゴのような小魚の群れにはボスが存在しませんが、統率のとれた集団行動を示します。水族館で、また、海中散歩の映像で、颯爽と泳ぐ魚の群れは美しく、神秘的です。リーダーがいないのに秩序が形成されるというのは不思議ですが実際には単純な原理です。

通勤ラッシュの駅では、たくさんの人々が行きかいます。しかし、このとき人々は滅多に衝突しません。人々の行動を指揮する者はいませんし、それぞれの人も駅全体の様子を把握できるわけではありません。自分の目の届く範囲でうまく歩こうとしているだけです。同じように小魚の群れも、各個体が近くにいる何尾かの個体と一定距離を保ち、進行方向をそろえているだけです。おそらく草食動物の大きな群れも同じような原理で維持されているでしょう。群れ行動というのは、最小限の努力で最大の効果があげられるようなシステムです。群れをシミュレーションするには、群れとしての行動をプログラムするのではなく、群れを構成する要素に簡単な2つのプログラムを付けます。

これで勝手に運動させると群れができます。2つのプログラムには許容される範囲が設定されますが、その範囲が広すぎても狭すぎても群れとしての行動が円滑に行かなくなります。広いと群れがばらばらになり、狭いと障害物にぶつかったときに固まってしまうのです。

+++ 健全な社会では衝突があり、それを調整する機能がある +++

引越や入学式などの活動を通じて、新しい社会に入っていくことになりました。それぞれに出会いがあり、また、別れもあります。勤務先が変わっていないので、他の家族ほど、劇的な人間関係の変化はないわけですが、それでも新しい体験が待ち受けていました。

電車通勤になって、いろいろな人を見るようになりました。それにしても、多くの人が様々な利害関係を持って生活していることに改めて感心します。人々にとって、生きていくだけに必要な収入を得られる仕事を持つことが重要ですが、ただ、食べて寝るだけでは人間として満足できません。何人かの仲間で構成される信頼できる共同体(家族に限らず)に属し、その中でプライドを持てる位置関係に収まることが必要でしょう。安定した小さな活動の場=社会に帰属していることが満足の第一条件です。

現代社会では、そんな小さなコミュニティの集合体であって、そのコミュニティが利害関係、力関係で絡み合って複雑です。さまざまな利害が衝突しますが、衝突があることは健全な社会でしょう。争いのない状態や、争いが表に出ない状態こそ病気です。そして、社会は日常生活のレベルから国家レベルまで衝突や争いを調整する機能を持つことで健全と言えます。最近の政治家の活動とそれを批判するマスコミを見ているとちょっと心配になりますが。

+++ 上手な群れ行動のコツは協調と利己的な行動がバランスを保つこと +++

群れが大きな籠のような障害物の中に入ったとします。しばらくして出口の近くにいる個体が外に出ようとします。特定のリーダーが障害物の奥にいると、脱出するべきかどうかの判断がつきません。また、群れ全体の様子が各個体の行動を律する場合(全会一致によって群れの意思決定を行なう)も、出口付近の個体の脱出も止められてしまい、全体が脱出できません。

群れの各個体が周りの数匹だけで行動を決定すると、奥にとどまろうとする個体と脱出する個体に分裂してしまい、もはや群れを維持することができなくなります。群集の密度が高い状況下で利己的な傾向が強くなると、パニックとなり、圧死事故を起こしたりします。

適度に周りを見回すことで、一つの群れを維持しつつ、しかも、障害物を脱出しようとする個体の情報が,うまく奥の個体にも伝達されると、群れ全体が安全に障害物から抜け出すことができます。群れ行動にとって、他の個体に協調しようとする行動と自分自身で考えた利己的な行動がうまくバランスを保つことの必要性を示しています。

+++ 賢人の知恵も群れ原理 +++

古来、賢人の言葉や巨大宗教のルールは常に矛盾しあう教理を含みます。基本的には集団の中でどのようにしたらうまくやれるかを示す教理です。群れのルールのパラメータを複雑な状況にあわせてファイン・チューニングするのが、より良い人生のコツなのだと主張しているのです。パラメータを固定したり、許容範囲を狭めると途端に周りとの摩擦になります。政治的な圧力や強力なプロパガンダなどで、集団のパラメータの自由度が低くなると、集団は硬直化して破綻することになります。

+++ 生物は全体をどのように見ているのだろうか +++

人間社会では、設計図、すなわち、全体図を見せられて、お前はこの仕事をやってくれと、仕事の位置関係や相互関係を見ることができます。ところが、複雑に絡み合う生物システムでは部分は決して全体を見ることができません。ですから、構成要素から見ると、作業をやる、やらないの2つの状況しか見えません。

分子生物学は要素の構造と、要素間の関係については膨大な知見を集積しました。しかし、得られた知見は、ミクロな場での極めて限定した条件で、ほぼ静止した時間でのスナップショットです。実際の生体内でのダイナミカルな動きや生体というシステム全体の挙動を知るにはもう一工夫が必要と専門家は考えています。

よく使われるのは数理モデルです。構成要素を抽出し、時間パラメータを含んだ状態方程式を立てることになります。生物を理解するために数理モデルを導入しようとするとき、一番の問題は関係する要素の多さと複雑さです。新しい知見は次々と得られるので、要素の多さと関係の複雑さは際限なく増えていきます。当面の目標は、観察結果を模倣するための要素と、そのパラメータの抽出です。より少ない要素の計算でシステム全体の挙動が記述できればOKです。

近接した要素間の情報のやり取りが全体の状態を決め、生命の維持がなされるというのが現段階での仮説でしょう。

+++ ゲノム生物学ではすべての遺伝子の相互関係を明らかにしようと努力している +++

生物の全遺伝子が解明されると、つぎに、この要素の間の情報のやり取りをすべて明らかにしようという研究が進んでいます。要素間の関係全体をインターラクトソームと呼びます。

酵母は単細胞の真核生物です。6200遺伝子産物について、相互作用が調べ上げられました。遺伝子産物の相互作用は、結合が基本ですが、リン酸化や分解などの化学修飾によって性質を変化させることもあります。ネットワーク理論に沿って、相互作用をリンクとしますと、90%の遺伝子産物はリンク数が5以下。この中に生きていくのに必須な遺伝子は20%程度しかありません。リンクが集中するハブとなるタンパク質は0.7%程度しかありませんでしたが、必須遺伝子は70%になりました。ハブのタンパク質のリンク数は15以上。多数のリンクを持つ遺伝子は生きていくために重要な遺伝子を多く含む割合が大きい。

ネットワーク理論によれば、人工的であれ、天然であれ、機能的なネットワークは密につながったクラスターとクラスター通しをつなぐリンク(特にブリッジと呼ばれます)との2段階構造に分けられます。ブリッジはランダムでも十分に機能します。この構造により、任意の点から任意のそのほかの点へ移動するまでの平均的なリンク数(ネットワークの直径)が非常に小さくなる。つまり、部分が全体を知るために必要な情報が効率的に分配されると解釈されます。

人間の交友関係、脳の配線、蛍の集団での同期発光のメカニズムなどがネットワーク構造をとり、近接した部分しか見ない要素によって全体の構造がうまく制御されています。インターラクトソームは生物活動をうまく説明できるでしょうか。

+++ 人間社会でも内と外を作る +++

個々の人を見る限りにおいて、能力、興味、性格に明確な区分を作ることはできません。しかし、人間は集団を作ります。血縁は当然のことながら、地縁に始まり、職業、教育などの機会、大きくは、国や文化の違いによります。それが生き方の違いになります。意外なことに、人々は慣れ親しんだものに執着し、身の回りの基本的なことをあるがままに維持しようという傾向があります。多少の不満があっても集団を維持する方が優先します。

集団の内と外という目に見えないが、しっかりした境界が人々を複雑に包含し、行動を規制しています。集団内では総意を探ることが優先することが多い。現実的な対応策を創出するより優先されます。あらかたの合意があると、不満を持っていても自分の考えを口に出すのが難しくなります。集団力学とか集団思考と呼ばれます。集団の中では意見が一致しないと心理的に不愉快になります。

集団とは人々が共同体として暮らすことが単独で暮らすよりずっと効率的であったことから生まれました。個人では解決できない問題を解決するための作業母体です。集団ができると、集団の中の個人の対立、そして、集団と集団の対立の2つの問題が発生します。両方とも解決が困難な問題ですが、解決するために集団は大なり、小なり、統治機構を持ちます。わかり易い例は政府で、民主社会でも、王国でも、政府とはもともと、統治を国民に任された機関です。

集団内の人々が信頼、親近感、思いやりをもつと、その集団は、容易に、また、効率的に協働する能力が高い。これは精神的な社会資本です。集団の構成員が集団として自律的に自ら進んで仕事をする力であり、拘束力のある規則によって無理矢理参加させる努力が不要です。規則や規制がたくさん必要なこと自体が、精神的な社会資本が欠如している表れです。

+++ 公共的な善は国民の判断の集計値ではない +++

暫定的なガソリン税がまた復活しました。復活する理由は暫定的に決められた当時の理由ではなく、すでに既得権化した財源となっているからです。既得権化しても暫定的であったのですから、本来の理由を再吟味しなかったのは政治の責任でしょうか。

税は一般財源化して、道路以外にも使うそうです。この点については異存がありません。そもそも、地球温暖化の片棒を担いでいるのは車社会であること。自動車関連産業には多額の税金を投入し、必要な道路を整備し、自動車の普及を促進したわけですから、それなりの恩返しが欲しいところです。輸出産業として日本の経済成長を支えましたが、その円高の見返りに農業などの基盤産業が破壊されました。

ガソリンにしろ、道路にしろ、国民各自のエゴイズムに基づく判断が優先されて、大切な公共財が破壊されているように感じます。本当に、国民はすべての情報を合理的に勘案して判断しているでしょうか。国民の判断の名の下、環境や基盤産業や心の問題などが失われている気がしてなりません。その元凶は国民一人一人の判断が正確に集計されれば公共的な善と見なされる考え方にあると思います。

すべての人に平等に信頼性の高い情報が与えられていると考えるのには無理があります。重要な情報ほど秘匿されるのではないでしょうか。また、情報が与えられても科学的に因果関係が解明不可能な、調査や実験に長い時間のかかる問題、確率しか分からない問題もあります。

決断する人の責任は重くなる一方です。むしろ、その人の人柄が優先されてしまうのでしょうか。それとも識者の最大公約数という逃げ道でしょうか。

+++ フリーライダーを封じ込めるのは、集団への帰属意識 +++

普通、商品やサービスは対価を支払ったときに得られます。しかし、組織や集団には公共財があり、これについては対価を払わなくとも恩恵を得ることができます。たとえば、公園や自治会活動、消防、警察(治安)などです。自然の景観のような財についてはお金を払わなくとも利用できます。これを非排除性といいます。公園や管理の行き届いた地域社会は多くの努力に支えられて運営されます。誰かが労力や費用を負担してサービスを提供すれば、負担していない人も便益を受けられます。すると、費用を負担せずに、その努力にただ乗りをしようとする人が現れます。治安や災害時の活動、道路や公園の整備などは必要不可欠なサービスですから、税金によって政府や地方自治体が提供する仕組みになっています。

ただ乗りする人をフリーライダーと呼びます。集団や組織のサイズが大きくなるにつれ、フリーライダーが生まれ易くなります。参加者が多ければ一人当たり負担が減少し、一人抜けても気づかれにくいからです。その結果、誰かが問題を解決するだろうと、労働組合やPTAが衰退します。この10年で社会にフリーライダーが増えたなと思いますがいかがでしょうか。しらけ世代であるわれわれ中年の世代(40歳台)が社会の中心になったせいでしょうか。インターネットやマスコミが浸透して、日本社会がひとつの共同体になったためでしょうか。個人主義が定着し、組織や地域社会へ帰属する心が薄れたためでしょうか。

フリーライダー意識を封じ込めるのは、その集団の未来に対して自分が責任を負っているという意識です。

+++ 共有地の悲劇 フリーライダーとの戦い +++

フリーライダーの考察をするとき、非排除性の対象は教科書的には共有地と呼びます。フリーライダーが共有地を自分の利益に使ったといった表現です。

フリーライダーが共有地を自分の利益に使い、個人的な利益を上げたとしても、そのために発生する不利益は共有地を共有するみんなに薄く分配されます。そのため、フリーライダーからみると、共有地を利用した場合、利益のほうが不利益より遥かに大きくなります。しかし、みんながフリーライダーになると、当然のことながら共有地は崩壊します。

すなわち、公共の利益を無視しようという誘惑は共同的な協力行動に打ち勝つ傾向があり、いわゆる「共有地の悲劇」を招きます。共有地は悲劇に陥るしかないのでしょうか。

この問題に対して解析するために、多くの社会モデル(公共財ゲーム)が考案されています。重要なのは個人間(価値観)には差がないと仮定すると共有地は崩壊します。ところが、集団構造や利用者の多様性を仮定すると(不均質グラフによって導入)、協力行動が出現し、また、場合によっては促進させることがモデルによって示されています。

+++ 懲罰は互恵的関係を維持するのに役立つ +++

人間は互いに協力し合うこと、たとえば、食糧の共有・分配が家族を超えて行われる、が特徴です。人間社会は協力関係、なかでも互恵的関係のうえに成り立っています。つまり、私があなたを助け、あなたも私を助けてくれる関係(直接互恵性)、もしくは私があなたを助け、ほかの誰かが私を助けてくれる関係(間接的互恵性)です。間接互恵性は制度として規定する場合もありますが、手助けをした本人について、よい人だという評判が立ち、その人が困ったときには第三者からの手助けが期待できるというものも含まれます。互恵的システム内では必要があるのに助けなかった場合、ルールを破ったことになります。ルールを破った人を罰する行為は、協力関係を維持・強化するために必要です。互恵的システムで暮らす動物のなかではルール破りは不利益になるので懲罰行動は進化・発展すると考えられます。

しかし、逆に懲罰はコストを伴います。すると、懲罰は協力関係を増強するが、総体的な利益が得られない可能性もあります。難しいのは、懲罰にかかるコストによって協力関係の強化で得られる利益が相殺されないように懲罰コストを決めることです。規則と法律のがんじがらめで厳罰主義では社会が崩壊してしまうわけです。

+++ 人間は集団を作り、上下の関係を作る +++

まず、私たちは、他人を選り好みします。生活圏にいる一人一人を、顔つき、肌の色、血縁、年齢等々に着目して分類します。そして、自分の生活圏で必要なカテゴリーを作り上げて生きます。家族やクラスメイト、会社や地域社会など、集団は様々です。関係する人々は集団の一員として頭の中で整理されます。分類された集団の数は年齢や学習の都度、増えていきます。

私たちは、その中のどの集団に帰属すべきかを判断します。すでに帰属が決まっている集団に対しては、留まるか出るかを考え、新たに加わった集団には適応しようと努力します。私たちは無意識に集団に受け入れられることを望み、受け入れられるにはどうしたらよいかを悟ります。集団は個人の好悪、利害だけで形成されるわけではありませんから、思い通りにならないこともしばしばあります。

集団の中では地位が存在します。地位が明らかな公的(社会的)集団もありますが、暗黙の地位を持つ集団(家族、友人関係)もあります。私たちは意識的に、帰属している集団の他人と競争し、集団の中での自分の地位を相対的に高めようと考えます。自分の地位がどのあたりにあるかを見極めることは必ずしも容易ではありません。私たちは帰属している集団中の他人の自分に対する態度を、注意深く観察します。私たちは地位に対する判断結果を行動に反映しますが、他人からのフィードバックにより、強化、修正されます。します。青年期での集団における自分の地位の判断は、生涯にわたる判断基準となります。青年期に多くの集団に属してみて、自分の地位を意識することが大切です。

+++ 全員参加のコミュニティが崩壊している +++

いつもは早々と終わるPTA総会が今年は例年になく長引いたそうです。単なる自己紹介的な会合ではなく、具体的な意見交換があったためだとか。今まで形骸化していた会議が活性化し、そのこと自体はよかったでしょう。家内の話によると、問題点は会の活動を全員参加にするか、興味のある人だけの参加にとどめるかのようです。PTA自体がそうですが、生徒の親は自動的に会員になります。その他にも、地域の子供会が組織され、それも全員参加です。PTAの運営は立候補を含む役員が行いますが、地域の子供会は役員を持ち回りでやっています。塾や課外活動で自分の子供が参加しない子供会の行事を主催することに疑問を感じる。そんな意見が発端です。そこに、役員負担の不平等さなどが織り込まれたようです。

マスコミ的に言うとライフスタイルが多様化した時代ですが、実際のところ、そんなに違うわけではありません。ただ、複数の行事が重なったとき、塾に行くか、スポーツクラブに行くか、家族で出かけるかなど、どれを優先するかが各人で異なる時代です。そして、唯一つのことを強制すること自体が厭われる時代です。全員参加がありえない行事を主催する全員参加型組織の運営が今後とも問題になってくるのではないでしょうか。

社会は、人のネットワークで構成され運営されていますから、ネットワーク作りを促進する全員参加型組織の存在意義はなくなることはありません。また、どのような組織であれ、参加メンバーとして存在意義を認めてもらうには、見返りの損得勘定だけでは足りないはず。全員参加型組織は人脈ネットワーク形成のよいチャンスです。

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7.太陽系・・・天空の秩序 [求心性]

太陽系に存在する元素は、多い順に、水素、ヘリウム、酸素、炭素、窒素、鉄、マグネシウム、硫黄、アルミニウム、ナトリウム、カルシウム、ニッケルとなる。物質(質量)の大部分は太陽にある。上位の元素は恒星内部の核融合反応でできやすい元素(原子核)である。星間物質の雲には超新星爆発により作り出された多種類の重い原子も含まれていた。

太陽系の元となった星間物質の雲は少しずつ凝縮し、重心へ落下しながら渦を巻き、回転の中心に巨大なガス球が作られた。ガス球の中心部は圧縮されて温度が上昇し、臨界温度を超えると水素原子核の核融合が始まり、原始太陽となった。太陽を中心にガスと塵の雲が回転し、回転する力と重力との合成で物質は円盤状に集合し、降着円盤を形成した。ガスの大半は水素分子や一酸化炭素分子などの分子で占められた。全体の質量に対する割合としてはわずかであったが、大量の数μm程度の微小な固体粒子もあった。ダストは、ゆっくりと集合し、粘着力や非弾性衝突により小さな塊をつくり、直径が大体10 km程度の大きさの微惑星になった。微惑星は太陽の周りを公転しながらお互いにぶつかり、くっついたり、衝突の衝撃で壊れたりしながら、成長した。微惑星は金属鉄のコアを持っていたらしい。

一部の微惑星のみが選択的に成長し、原始惑星となった。周囲に数多く残っている小さな微惑星をどんどん引き寄せて成長した。太陽の活動が活発になると、太陽風が発生し、太陽に近い領域からガスを吹き払った。原始惑星は周りの微惑星を集め尽くすと、惑星の質量増加は停止し、地球のような固い地面を持った惑星が誕生した。

原始惑星の質量が地球質量の約10倍を超えると、その惑星は水素ガスも重力により効果的に集めることができる。原始惑星系円盤内には、質量にして固体成分の100倍ものガス成分が存在するので、惑星の質量は一気に増大する。10地球質量程度の質量を持った核(コア)の周りに、コアの何倍もの質量のガスをまとった木星型の惑星が形成された。木星は核融合のスイッチが入るには体重が足りなかった。木星より外側には土星、天王星、海王星と、同じようなガス状の巨大惑星が誕生した。太陽系の外側ほど金属元素は少なくなり、氷と土などの軽い元素によって構成されると考えられる。

火星と木星の間で、大きな惑星に成長できなかった微惑星は、たくさんの小惑星にとどまり、小惑星帯となった。また、海王星の外側にはいくつかのガスを持たない天体があり、エッジワース・カイパーベルトと呼ばれる。周期 200年以下の短い周期の彗星の起源がこのあたりにある。これらの天体をまとめて準惑星とよぶ。冥王星は準惑星とされた。太陽系の外側では太陽系初期の惑星形成はゆっくりと進み、その間に原始分子雲は蒸発してしまったため、これらの天体は惑星形成の途中で取り残されたようである。

隕石の年齢を調べることで、太陽系が生まれたのは46億年前と計算される。また、原始太陽系分子雲が縮み始めてから、太陽系ができるまでは1000万年から1億年と見積もられている。降着円盤から直径10km程度の微惑星が形成されるまではかなり早く、10万年程度と見積もられる。地球はその後、微惑星が集合して3000-4000万年かけて作られた。

太陽は、あらゆる方向に太陽風とよばれる超音速のプラズマを放出しており、星間プラズマの中に巨大な回転楕円体の空洞を作っている。この空洞は太陽圏とよばれ、約100 〜 150 天文単位(AU)にわたって広がっている(1 AU は地球から太陽までの平均距離。約1.5 億km)。超音速の太陽風はここで急激に減速するので末端衝撃波面と呼ばれる。末端衝撃波面の外側は太陽風が低速で流れていて、ヘリオシースと呼ばれている。この領域では、太陽プラズマと星間ガスとの相互作用が優勢になる。ヘリオシースの外側の面はヘリオポーズと呼ばれ、ここから先は星間プラズマが広がっている。

+++ 小さな天体は小さな石や砂の凝集体のようだ +++

宇宙探査機はやぶさが小惑星イトカワに着陸しました。その冒険旅行は若者の貧乏旅行のような波乱とスペクタクルに満ち(プロジェクトを推進された方、すみません)、興味深いものでした。 はやぶさは小惑星の具体的なイメージをもたらしました。まず、イトカワが一つの岩ではなかったこと。イトカワは見たところ、表面が砂と大小さまざまな岩石の集合体、凝集体です。小惑星とか、微惑星というと、衝突すると砕け散るような硬いイメージがありましたが、そうではありませんでした。実際はイトカワの中身は1個の岩かもしれません。

地球上では存在できない凝集体が宇宙に浮かんで、形を成して太陽の周りを公転していることが不思議です。近くに大きな重力場がない真空の世界の特長を示しています。衝突するときは、砕け散るのではなく、泥団子が合体するような衝突になりそうです。液体の玉が変形しながら融合するようなイメージです。微惑星がある程度成長するまではこんな単なる宇宙の塵の集まりだったと想像されます。岩ができるためにはかなり巨大な塵の塊ができ、重力で押しつぶされるか、高い温度で溶融する必要があります。石ができるにはその岩が砕ける必要があります。

+++ 天体は求心的モデルに従って階層化される +++

太陽系は、太陽が中心にあり、その周りを9つの惑星が独自の回転(自転)をしながら、同じ方向に円運動(公転)をしています。いくつかの惑星は、太陽が惑星を持つように、衛星を持ちます。このイメージは宇宙のひとつの構図です。抽象化しますと、まず、全体を一つの中心とそのほかの周辺要素と分けて、次に、規則により中心が周辺要素の運動を支配する形式と考えられます。太陽系の姿を連想すれば、周辺要素が中心として機能して、孫要素の運動を支配する形態も考えやすく、この繰り返しにより、全体の構成要素は階層性と同一規則により整理されます。求心的モデルと呼びます。

宇宙のことを考えるとき、不思議な感じにとらわれます。子供のころは不動と思われた大地が、知識が増えるにつれどんどん複雑な動きをするのです。まず、地球の自転。自分は回っているのだと思います。次に公転。公転しながら自転する地球の表面にへばりついた我々は宇宙空間でどんな軌道を描いて動いていますか? 大きな円形の歯車の内側に小さな歯車が入って、鉛筆を差し込んで規則的な模様を描ける道具がありますが、その道具で描く模様に似ているでしょう。更に地球は歳差運動(首振り運動。独楽がとまるときにする動きです)もしていますし、太陽系は銀河系の渦の中を動き、銀河系自体も2億年かけて自転をしていますし、遠くの銀河団に引き寄せられているようです。ビック・バン宇宙は膨張していますが、膨張自体も動きといっていいのでしょうか? あまりに複雑な動きに目が回って頭がくらくらしてきます。そして浮遊感。不思議な感じとはこの浮遊感でしょうか。

単純な求心的モデルでも重ね合わせると複雑な動きになります。

+++ 分子は粘着力がある +++

気体の分子は真空中に独立して存在します。しかし、液体や固体の分子は単独では存在できません。金属などの自由電子を発生するものは特にくっつきやすい性質を持ちます。分子や原子は「ねばねば」しているのです。おもに電磁気力による粘々で、粘々を引き離すのは温度によるブラウン運動であり、くっつくかどうかは周りの温度によって決まります。くっついた分子は真空中を漂い、ぶつかったらまたくっつき、成長します。成長は分子の密度が高ければ速くなります。太陽系誕生の頃は水素とヘリウムの非常に薄い空気のほかに恒星で作られたもっと重い元素からなる液体や固体の微粒子が漂っていたと思われます。

+++ 宇宙には分子が漂っている +++

ほとんど真空の宇宙ですが、原子が集まっているところがあり、星間雲と呼ばれます。星間雲は、近くの星の光を受けていると明るく見えて散光星雲と呼ばれます。逆に照らす星がなく、密度が高い場合には、光を吸収して背後の天体を隠すため暗黒星雲と呼ばれます。 宇宙空間には、1立方cmあたり0.1個程度の原子しかありませんが、星間雲ではその100倍程度の密度になっています。また、1立方cmあたり1万原子程度を超えると原子どうしが衝突し、分子ができます。このような部分を分子雲と呼びます。

散光星雲は単純に光を反射する場合のほかに、紫外線で水素原子が励起されて可視光線を放射する場合があります。この場合には水素原子特有の赤い光を出します。水素原子以外の物質も、それぞれに特有の波長の電磁波(光や電波)を出すため、この電磁波を手がかりに、そこに存在する物質を知ることができます。そのようにして、分子雲の中にはメタンやアルコールなど、簡単な有機物も含まれていることがわかっています。水(氷)や炭素系の物質は塵を効率的にくっつける糊の役割をします。

+++ 人間の組織は求心的な構造をとる +++

人間が集まってできる組織は、求心的な考え方に基づいて組み上げ、全体を効率よく、秩序だって動かすことができます。特に、特別な使命を速やかに遂行することが目的である軍隊では、求心的な構造が必要不可欠です。友達仲間、クラブ活動、学校、会社組織、国家、国際連合まで、なにか目的を持ち、それを遂行するための集団では基本的にこの考え方を応用しています。人間集団での中心はリーダーと呼ばれます。また、このような組織形態を中央集権と呼びます。

中央集権的な組織が効率よく働くためにはリーダーとそのほかの構成人員が命令、支配、服従で1方向でなければなりません。また、構成員からリーダーへ速やかに情報が伝えられ、逆に、リーダーから構成員へ命令が速やかに伝えられる必要があります。情報伝達の速さと正確さが中央集権的に運営される集団の能力を決める重要な要素です。さらに、リーダーに集められた情報は正確に分析され、行動命令として構成員に発せらる必要があります。リーダーは情報分析により、集団全体が受けている影響をイメージでき、その影響による組織の変化を予測し、組織が望ましい状態になるように行動命令を作成する必要があります。

しかし、人間は価値観や考え方・感じ方が多種多様であること、人間の理解能力には限界があることから、この単純な原理が完璧な形で実行されることはなく、必ず逸脱行為が生じます。そのために、逸脱行為を取りしまる仕組み、すなわち法律や警察組織が必要です。しかし、取り締まり組織も人間の集団なので、逸脱行為の取締りが理想通りに行くわけではありません。

+++ 求心的な組織化は効率とイメージさせる +++

求心的モデルは国づくり・都市計画に応用されます。国土の地理は都市や都市機能の配置、それを連絡する交通網で形成されます。通常、大きな都市に社会の中心に相当する組織の建物が配置され、その位置関係は中央集権的な考え方を反映しています。 いろいろな都市計画を見ると、中心となる地域と、周辺となる地域とが色分けされ、その地域の目標が定められています。そもそも、色分けすることに何か必然性があるのか疑問です。こんな風に俺たちは考えているのだから従えという、役人かたぎが見え隠れします。公務員の組織も典型的な求心性組織です。広く意見を募集して隠蓑をかぶり、支配しようという押付けがましさを感じます。

+++ 神経系も大きくは求心的である +++

脊椎動物の生物の神経系は求心的モデルに従って構成されます。脳が中心であり、そこから伸びる神経により、体の各部分が統御されます。また、体の各部分には感覚器があって、環境の情報、行動の情報を脳に伝えています。求心性(逆は遠心性)とはもともとは神経生理学の言葉です。

+++ 曼荼羅も求心的モデルで森羅万象を説明する +++

世界観を説明する代表例が曼荼羅です。密教では金剛界曼荼羅と胎蔵界曼荼羅の二つで対になっていて、両界曼荼羅または両部曼荼羅と呼ばれます。

金剛界曼荼羅の中心には大日如来が位置し、その周りに、あしゅく・宝生・阿弥陀・不空成就の四尊の姿があります。構図は「4」の繰り返しで、さらにその周りに菩薩(ぼさつ) 、明王(みょうおう) 、諸天(しょてん) 、法具の4つが整然と配置されます。金剛界曼荼羅は中央からぐるりと全体を回って周辺へいたる思考と、逆に周辺から中心に入る思考の2つを読み取ることもできます。基本構造の繰り返しは一つの原理から世界の多様性が生じ、またすべての世界の多様性が、一つの原理に帰一するといった思想も表現しています。

胎蔵界曼荼羅は中央に真理の人格化された大日如来が描かれ、その周りを四如来四菩薩の主要尊が取り囲み(中大八葉院:ちゅうだいはちよういん)、順に周辺に向かって放射状に配列されています。周辺に行くほど像は小さい。外周部の神や人、悪鬼羅刹、餓鬼などは、内なる大日如来に求心的に収束しています。配置は階層的であり、大日如来が世界の原理であることを示しています。

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8. 地球の誕生・・・太陽系の非ガス成分 [力場]

原始太陽から1億5千万キロメートルのところを公転していた地球は他の惑星と異なった風貌を持つようになった。原始の地球の構成成分は現在の太陽系に漂う、惑星に吸収されなかった微惑星を調べることで推定する。具体的には隕石と彗星である。隕石のうち、惑星ができた当時から存在する最も古い隕石は炭素質コンドライトである。この隕石の化学組成は水素、ヘリウムを除いて太陽系の成分と同じである。鉄・ニッケルばかりでなく、かなりの量の水や炭化水素が含まれている。コンドリュールと呼ばれる小さな球状の粒子を含む。コンドリュールのできた年代は45.6億年前と測定されている。無重力の状態では、揮発性分子が集合してできた物体は球になると予想される。炭素質コンドライトは熔融・固化という熱変成を受けていない隕石と考えられている。

カイパーベルトにある岩石が海王星などの重力で撹乱され、彗星になる。同じメカニズムでカイパーベルトから木星軌道の内側にある小惑星帯にも岩石や天体が注入される。太陽に近づいたカイパーベルト天体は加熱され揮発性成分を失い、普通の岩石質の隕石になる可能性がある。また、この岩石の太陽への落下は現在も続いている。

現在の太陽系では彗星の長い尾は、地球軌道の辺りで水蒸気を含むようになる。しかし、地球が誕生した頃は太陽からのエネルギー放射が現在より少なかったので、地球の軌道付近の温度はもっと低く、微惑星は大量の氷や有機物を含んでいた可能性がある。太古の地球の地表は岩石と言うより、炭水化物を大量に含んだ泥であったかもしれない。

地球に落下する微惑星は衝突エネルギーにより融け、微惑星中に含まれていた水分や気体成分は一瞬にして蒸発した。現在の地球の半分くらいの大きさになると、重力は気体を逃がさない強さになり、大気の層ができた。原始大気による温室効果で熱が宇宙空間へ逃げる速度が遅くなり、地表は徐々にマグマに変わりはじめた。やがて、地表は煮えたぎるマグマオーシャンへと変化し、その深さは500 km、温度は千数百度に達した。マグマオーシャンの中で重い鉄などの成分は軽い岩石分と分離して、マグマオーシャンの底に溜まった。

地球の半径が現在の70%くらいになると、マグマオーシャンの底に溜まった重い金属は一気に中心へ落ちていき、核を作った。このときに開放された重力エネルギーにより地球は芯まで融け、軽い岩石成分(マグマオーシャンの部分)と金属核に分離した。

鉄などの重い金属の大部分が核として沈みこんだとすると、地表に残るのは酸素、炭素、窒素、マグネシウム、硫黄、アルミニウム、ナトリウム、カルシウムなどである。炭素、酸素、窒素は生物を構成する有機物を作る骨格を提供する。これらの元素は揮発性の分子を作る。原始大気を通過する間に隕石は熱せられ、二酸化炭素や水、窒素などの揮発成分は原始大気に離脱していったであろう。

地球の形成の最終段階で火星ほどの小惑星が衝突し、最後の10% の質量を提供したが、小惑星と地球の表層部分が地球周辺に飛び散った(ジャイアント・インパクト)。ジャイアント・インパクトでは岩というより大部分が岩石蒸気として飛び散ったであろう。それが再び集まって独立した天体として地球の周りを公転しているのが月である。小惑星の金属核は地球の核と合体したのだろうか。この事件後、地表が冷却されるまでほぼ3000万年かかった。月の誕生は太陽系誕生から4-5000万年頃とされる。

月が誕生したころ、月までは2万kmほどの距離しかなく、月は現在の400倍の大きさに見えた。地球の自転速度も現在の5倍。地球の自転は海水の流動の摩擦によって少しずつ遅くなっており、その影響で月は少しずつ離れている。

+++ ポテンシャル・エネルギーは場のエネルギーである +++

地球を融かしたエネルギーの源は位置エネルギーと呼ばれます。一般的な言い方にするとポテンシャル・エネルギーです。位置エネルギーは重力の作用する場で生じるエネルギーで、重力の中心へ移動(運動)することで、運動エネルギーに変わります。物体にぶつかれば、その物体を破壊したり、変形させ、熱エネルギーになって空間へ逃げていきます。重力の中心には質量(物体)が必ずありますから、位置エネルギーは最終的には熱エネルギーになります。

位置エネルギーと運動エネルギー、すなわち、物体の位置と運動は相互に関係しあって、エネルギーとしての総和は一定の値になります。熱エネルギーは熱く、化学エネルギーは燃料などの実体があって、捕らえやすいですが、位置エネルギーには実体はありません。中学校で位置エネルギーを習ったときは面食らったものでした。位置エネルギーを生み出す場があって、その場があるために物体が運動します。運動すると位置が変わり、その位置にふさわしい量の位置エネルギーを得ることになります。

重力場を二次元で表現してみましょう。重い物体が薄い膜の上にあると、重みで膜がへこみます。まっすぐ転がっていた玉はその凹みで運動の方向が変わります。凹みに捕らえられると物体の周りを回転することになります。実際の世界では摩擦があるために運動エネルギーは熱エネルギーに変わり、やがて玉はへこみの中心の物体にぶつかるでしょう。場に置いた玉は重力場、すなわち、勾配にしたがって運動することになります。たくさんの重力場があると、凹みが重なり合って複雑な空間ができます。宇宙は星の質量により、でこぼこしていることになります。 重力場では位置エネルギーと運動エネルギーの和が一定になりますが、一般的な場では一定になるとは限らないでしょう。ポテンシャル場の一般的な表現はラグランジュ方程式、ハミルトンの方程式(ラグランジアン、ハミルトニアンなどの演算子)と呼びます。くわしくは解析力学の専門家にお尋ねください。

地球上では地球という質量が圧倒的な重力場を作っていて、地球上の物体は逃れることはできません。

+++ 人間も限られた種類の価値観に支配される +++

集団の価値観は所属する頭脳(人間)に一定方向に「力」をかけます。圧力ではなく、傾向、雰囲気です。現在は自由主義、合理主義、資本主義といった価値観が優勢であり、現在の知性はこの方向に絶えず力を受けています。そのため、行動も合理主義的傾向が強く、経済活動は資本主義の考え方が中心になります。しかし、価値観は時代により変化します。人間の価値観に影響する(力を加える)場について、整理しておくこと、それがこのメルマガを書く動機のひとつになりました。

重力タイプであれば、1種類の価値観で、その軽重が場を作ります。宗教は一定の価値観による場を作り出し、その所属員の考え方、集団における位置に影響を及ぼします。また、企業精神も忠誠心の場を形成することとして同じように考えることができるでしょう。

電磁タイプの場合は2種の対立する価値観がその場を形成します。対になる2つの考え方はよく引き合いに出されることともいます。いくつか列記してみましょう。民主主義(最大多数の最大利益・幸福を善とする)と自由主義(いかなる理由によっても個人の利益、幸福が損なわれないことを善とする)。性善説と性悪説。求心的(権力主義、秩序志向)と分散的(無政府主義)。

+++ 現在でも宇宙から地球へ多くの物質がやってくる +++

一番目にするのは流星。流星の起源は彗星と考えられています。流星群は彗星の軌道に一致します。彗星が残していった固体粒子が彗星軌道にありますが、そこを地球が横切るため、定期的に流星群が出現します。流星は低密度の固体粒子が地球大気に衝突し、摩擦によって高温になり、発光する現象です。

彗星の起源はオールト雲やカイパーベルトと呼ばれています。オールト雲は長期彗星の軌道解析から予想されました。太陽から約5万AU(1 AUは地球と太陽との距離です。1 AUは約1.5億km)で太陽系を取り囲む球殻状の層です。約1000億もの彗星のもとが集まっているといわれています。彗星は周りの惑星の引力か、相互の衝突などの影響で、太陽への何千年もの旅に向かうとされています。

カイパーベルトは冥王星のような遠い惑星探査から発見されました。短期彗星はカイパーベルトあたりから折り返している計算になります。海王星より以遠にある直径100km以上の天体は10万個以上あると推定されています。オールト雲やカイパーベルトの周辺ではまだ微惑星から惑星が作られつつあるという説もあります。流星群は地球と彗星の軌道が交差すると言う証拠。いつか彗星が地球に衝突することもあるでしょう。

+++ 創世期の地球を融かしたのは位置エネルギーである +++

地球のコアができるとき、大量の位置エネルギーが解放されて熱になり、地球全体が融けたという表現を読んだとき(丸山茂徳・磯崎行雄著、生命と地球の歴史(岩波新書、1998年))には驚きました。地球表面での落下・衝突でも地球全体が融けるような気がします。この過程で位置エネルギーが運動エネルギーとなり、衝突により熱エネルギーに変換されます。芯まで融けるには地球全体の温度が上がる必要があります。しかし、鉄などの金属が中心に落ち込み、コアが形成されると同時に芯まで融けたとしたほうがイメージがより具体的で、ダイナミックです。隕石が落下して地表が融けるのも位置エネルギーの解放です。

+++ 日常生活で見ることができるのは重力場と電界、磁界の3つ +++

自然界では雲の中に静電気によりプラス極ができ、地面がマイナスに帯電して、電場が作られます。しかし、その間に置かれた物質は通常、電気的には中性であるため、あまり影響を受けません。が、電場の勾配(電位差)が大きくなると、放電(電子の流れ、稲妻)が起きます。

人工的に作られた空間では電場を利用して電気器具が作られます。蛍光灯の中には両側に電極があり、その中を電子(マイナス)が運動します。電子が蛍光灯のガラス面に塗られた蛍光物質と衝突して蛍光灯は発光します。家庭用の電気は交流で、プラスとマイナスが交互に交代するタイプの電気ですから、蛍光灯の極はどちらがどちらと決められているわけではなく、交互に交代しています。

磁場は地球上にあります。地球は巨大な磁石であり、地球上の磁石は地球の磁場の影響で、N極は北極を、S極は南極を向きます。

電場にはプラスとマイナスがあり、力場のベクトルはプラス極から噴出し、マイナス極に吸い込まれます。原子の世界ではプラス極は陽子で、マイナス極は電子です。ところが、磁場には吸い込み点、噴出し点はありません。すなわち、モノポールはありません。

+++ 電磁場 +++

電場と磁場が合成されたものを電磁場と呼びます。銅線内を電子が振動すると電磁場が銅線の周りに発生します。電磁場は振動しながら空間を伝わります。これを電波と呼びます。真空中なら光速度で伝わります。電波は波長の長い電磁波です。波長が短くなると、別の名前で呼ばれます。分子がエネルギーを得て振動、回転する場合もその状態の変化により電磁波を発生します。マイクロ波や、遠赤外線、赤外線と呼びます。分子や原子の電子がエネルギーを得て、放出するときに電磁波、すなわち、光が発生します。高速の電子が重金属にぶつかって急に減速するときにX線が、原子核のエネルギー変動によりガンマ線が発生します。この2つの電磁波の波長は同じくらいですが、X線は人工的に発生した電磁波を、ガンマ線は原子核から発生したものを言うようです。

電磁波が物体にぶつかると、そのエネルギー(波長)により、物体が変化します。電波は物体に自由電子があるとき(金属であるとき)、自由電子を振動させ、電流を発生します。アンテナの原理です。自由電子がないと、熱エネルギーになります。赤外線やマイクロ波の場合、分子の振動や、分子を構成する原子の振動を引き起こし、熱になります。光は分子や原子に含まれる電子のエネルギー凖位を高くします。その結果、化学反応が起こることがあります。X線、ガンマ線の場合は電子を弾き飛ばして、化学反応を起こします。X線、ガンマ線のエネルギーが強い場合ははじき出された電子が高いエネルギーを持つために、広範囲で化学反応を起こします。

電磁波は光子とも表現されます。光子は粒のイメージが強く、波のイメージと相容れない面があります。しかし、光子は物質ではありません。エネルギー量子が発見されたとき、それは光のエネルギー、波長として表現されました。そのため、光も粒子のごとく、光子として表現されたためです。

携帯で話ができるのは電磁誘導の仕組みを利用するからです。私が今書いた文章もコンピュータから電波に乗ってADSLルータに入り、インターネット上のマグマグ・サーバーに格納されます。

+++ 地球は電磁場で覆われている +++

地球は巨大な磁石です。地球の磁場は太陽風や宇宙線に対する巨大なバリヤー「磁気圏」を作って、我々を有害な宇宙線から守ってます。地球には太陽や高エネルギーの放射線、例えば水素の原子核である陽子などの人体に有害な物質や、太陽から流れてくるイオンや電子などの太陽風が飛んできています。実際には、これらのイオンは地球の磁場により力を受け、運動方向を曲げられて磁気圏を作ります。磁気圏が受け止めたエネルギーの約1割が磁気圏に取り込まれオーロラや放射線帯に形を変えます。

太陽表面の爆発である太陽フレアは強い太陽風の衝撃波を送り、磁気圏を大きくゆがませます。2003年10月に発生した最大級の太陽フレアの衝撃波で地球の磁気圏が大幅に圧縮され、例えば、昼間側にいた静止衛星が磁気圏の外側に放り出されました。そのとき地球観測プラットフォーム技術衛星「みどり2号」は強いオーロラが発生している極冠域のオーロラ帯を通過しました。そのため、太陽電池パドルが帯電し、磁気圏の乱れによって上昇した電離圏プラズマに突っ込み、放電して太陽電池がショートした可能性があるということです。太陽フレアの衝撃波と磁気圏という、まるでSFアニメのような壮大な、攻撃的なイメージに驚きました。

+++ 抽象化した場の考えは種々の現象の説明に使うことができる +++

空間に存在する物体に一定方向に力がかかるとき、その空間を場と定義しました。力がかかるので力場です。場所により、力の方向と強さが変化することもあります。たとえば、川を場とすると、力は水流と考えられます。流れる水により、川にある物体は力を受けます。同様に、大洋を航行する船では海流という力を受けます。帆船ならば、さらに風という力を受けます。流れは運動や力の大きさが絶えず変化します。

+++ 自由か社会か +++

相手の行動を予測する場合、その人の性格や能力にもっぱら注目するか、あるいは、その人を取り巻く周りの環境により多く注意を向けるか、大きく2つに分けてみましょう。個人主義文化であれば、人間に注意を向け、行動の原因をその人の内部に求める傾向が強くなります。一方、集団主義文化であれば、行動の原因は、その人の内部にもありますが、環境の影響がより大きい。

どちらを注目するかは文化によって異なります。個人の行動が社会的環境によって拘束されている度合いが違います。ギリシャ文明に由来するヨーロッパ文明の考え方は個人主義的な心の働きの代表例であり、古代中国文明に由来する儒教文化の考え方は集団主義的な心の働きの代表例でしょう。個人主義的な思考は分析的、還元的であり、集団主義的な思考は全体論的、統合的です。

+++ 閉ざされた集団の場は時には極端な結果を生む +++

人間社会は多様な文化によって構成されます。教育には社会に適応するための課題とその答えのセットが文化として準備されています。心は社会的環境への適応の道具ですから、異なった教育によって異なった文化に適応します。

パレスチナやイスラム原理主義などの自爆テロの実行犯は、特殊な場の中で作り上げられました。人は生まれた時から接してきた場の価値観で情報を解釈し、価値観を受容し、自分の人格や行動がきまります。ただ、彼らと同じ環境で育ってきたら、喜んでテロに参加したでしょうか。おそらく組織的な一押しが必要だったと思います。

集団には、時には公表できないような裏の連帯があります。禁じられているがゆえに、強い連帯感を作ってしまう。その連帯感が時として信じられないような犯罪行為を正当化することがあります。共犯感覚が助長するのです。あえて犯罪行為を行うことで、その場の雰囲気が盛り上がり、調子に乗ると、集団内での権力の誇示になったり、どこまで賛成してくれるのか所属員をテストするようになります。極論を理由に建て前の嘘を暴くことに酔いしれ、善と悪の区別がつかなくなります。しかも、悪を気取ると勇気があると見なされ、権力になります。

当局の強い圧力の下、団結を必死で維持しなければならない革命家や運動家は時に目的のためには手段を選ばず、という苦渋の選択を迫られ、堕落していきます。それはロシアでも、中国でも、イスラムでも同じです。もちろん、日本やヨーロッパも例外ではありません。

+++ 若者は極端な意識の場の犠牲者になりやすい +++

十分な社会経験がない子供は場の雰囲気に飲まれやすいものです。太平洋戦争下の日本では軍国少年が大人以上に戦争に狂信的でした。多くの人が天皇のためと家族のためを同一視し、戦争で戦うことを自己犠牲の美徳と考えていたことが回想として語られます。ナチス・ドイツではヒトラー・ユーゲントとというエリート青年による隊士が組織されました。今でも少年兵が戦闘の最前列で最も果敢かつ残虐に相手を殺戮する存在です。中国でも文化大革命の先頭でインテリゲンチアを糾弾したのは思春期の男女からなる紅衛兵でした。

大人は、子どもが示された価値観のままに行動してしまうことを十分に理解して行動する必要があります。決して利己的な目的のためにその性質を利用してはいけません。路上生活者を軽蔑すれば、暴行や、差別といった直接的な犯罪行為を誘発します。善行として臓器提供を教育すれば、そのまま受け取ってしまう可能性があります。世の中一般に言われていることを子供に伝えるときには、但し書き付であると適切に説明するのは大人の義務です。

+++ 同じなんだけど、違うってことが大事、みたいな +++

流行語大賞の候補になったKY。「空気が読めない」という意味と知って、びっくりでした。このメルマガでは磁場や電場をイメージした「場」として組織や集団の雰囲気を表現しましたが、それに類するものでしょう。

若い人たちと話していると、いろいろと微妙な気持ちの揺れを感じます。今はマスコミを代表として様々な意見を踏まえて、その集団の雰囲気の上で会話が成り立つようで、その全体を空気とよび、空気が読めないと仲間はずれになりやすい。ですから、私のようにテレビをほとんど見ないおじさんは仲間はずれになりやすい。困ったことにマスコミによる情報提供や均質化された消費行動、マニュアル化された教育(学校に限らない)などを通じて、みんなは共通な体験や知識を持つので、逆に、些細な差を強調するような行動や発言となって、「空気」を分化させ、より複雑怪奇にしているようです。同じなんだけど、違うってことが大事、みたいな。

そんなオーバーな表現を前提とするので、言い切り型ではなく、「ぼく的には」とか「〜かも」などと気持ちや感情を微妙に加えて、それを楽しむようになると、古い人たちはとてもついていけない。感情や雰囲気の細かなゆれを的確に表現する言葉が必要になるはずです。若者の使う言葉にそれが表れているに違いない。若い作家や作詞家がうまく言葉を醸成してくれることを希望します。KYじゃ、ちょっと頂けない。

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9. 海の誕生・・・地球表面の分離 [水]

オーストラリアで見つかった30億年前に形成されたジルコン中に42億年前にできたダイアモンドの微粒子が見つかった。ダイアモンドはマグマオーシャンの中では形成されない。ジルコンは火山活動でできるため、地殻の底でできた42億年前のダイアモンドは10億年かけて地表近くに移動したはずである。42億年前のダイアモンドは当時、すでに地殻が存在したことを意味し、海と大気も存在したはずである。最古の大陸地殻は、およそ42.5億年前と推定される。

まわりに吸収する微惑星が少なくなると、地球は徐々に冷え始めた。また、大気はマグマの温度から宇宙空間の温度まで温度勾配ができ、その勾配の中で激しい対流が発生した。

水蒸気は100 気圧のとき、絶対温度で650K(380℃)以下になると液体の水になることができる。この温度を水の臨界温度という。最初、水は気圧と温度が低い大気の高い位置で雨に変わり、地表に達するまでに蒸発した。大気が冷えるに従い、雨は徐々に低い位置まで達するようになった。原始大気が100気圧(ほとんどが二酸化炭素と考えられる)、地表が300℃ほどに冷えたときに最初の雨が地表に落ちた。地球が、その装いを他の惑星と変える決定的な事件であった。ここまでで、約4500万年が経過した。

雨は地表を効率よく冷やした。地表には玄武岩質の岩が作られ、地殻が形成された。雨には塩化水素が溶け込んでいたため、強い酸性であった。塩酸の雨水は地上の岩石と接触して、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、ナトリウム、カリウム、鉄などのイオンを溶かし出し、しだいに中和された。

塩酸が中和されると、大気中の大量の二酸化炭素が原始の海に溶け込み、カルシウムイオンと結合し炭酸カルシウム(石灰岩)となって沈澱した。原始大気中に含まれていた二酸化炭素は10気圧ほどに低下し、二酸化炭素による大気の温室効果が和らいだ。大気成分の90%が二酸化炭素で、残りは窒素であった。

原始地球の海の深さはほぼ2000mと見積もられている。地球の表面はほとんど海に覆われ、その下に玄武岩質の地殻、海の上に厚い大気があった。

太古代の大気には高濃度の二酸化炭素が含まれており、海水や熱水中の二酸化炭素や炭酸イオン濃度も高かった。海洋地殻の熱水変質では炭酸塩鉱物が晶出するため、噴出する熱水中の珪酸塩濃度が上昇し、また、海水中のカルシウムイオンが減少して、リン酸の濃度が上昇した。

地表の堆積岩には二酸化炭素の大気に換算すると90気圧にもなる炭素が含まれている。これは金星の大気とほぼ同じである。金星の大気は濃厚な二酸化炭素と窒素からなる。大気の上の方、地球の大気分くらいの深さでは、地球より温度が低い。その下には50kmになる濃厚・高温大気があり、高度が低くなり圧力が増すにしたがって高温になっていく。その底では400℃になる。稲妻の発生頻度がかなり高いようだが、雲(水滴の集団)から発生する地球の稲妻とは異なっているらしい。

+++ 生命の誕生や地球の歴史には水が関わっている +++

水はユニークな特長を持っています。たとえば、水は氷になると体積を増えます。他のほとんどの液体は固体になると体積が減ります。氷の場合は水に浮きます。また、水の沸点はよく似た化学構造を持つ化合物の中でも異常に高い。すなわち、蒸発する時には多くの熱を奪います。また、比熱の高い液体です。比熱が高いということは熱しにくく冷めにくいということです。さらに、水は物質を溶かしやすい。言い換えると、様々な分子を水分子が取り囲みやすい性質があります。

今回は生命の起源や分子レベルでの生命活動を説明するのに必要と思われる水の性質についてまとめました。少し専門的な内容が続くと思いますが、イメージ重視で行きたいと思います。

+++ 水に溶けない物質 +++

極性のない有機化合物は水にわずかに溶けますが、量が多い場合は分離します。水と油の関係です。油を水に加えて強く攪拌すると、油の粒が水の中に分散します。ドレッシングを思い浮かべてください。分散した油の粒子は比重にしたがって上へ移動して、ぶつかると融合し、最終的に水と分離します。このとき、極性基と非極性基がつながったような分子(界面活性剤、洗剤、石鹸)を加えてやると、油と水の間に膜を作り、比率と粒子の大きさを調整すると分散した油の粒子は融合せず、粒が分散したままになります。クリームやマヨネーズを思い浮かべてください。このような液体をエマルジョンと呼びます。エマルジョンは多くの化粧品、水性塗料に利用されています。

同じどろどろ状態で、油と水の混合物に限らないものをゾルと呼びます。水の中にたくさんの微粒子が分散された状態です。歯磨きや顔料系の塗料、どろどろした食感の食べ物などです。水をたくさん含んだまま、高分子が固まった状態をゲルと呼びます。プリンやこんにゃくです。 エマルジョンやゾル、ゲルは水の中にたくさんの有機物が分散した状態の代表例です。生命体はこうした状態から成り立っています。

+++ 水分子は水素結合で結ばれる +++

水分子酸素原子Oと2個の水素原子Hが共有結合で結ばれています。 H2O(2は下付)を書きます。酸素をはさんで、水素が結合しています(H-O-H)が、その角度は180°ではなく、104.5°です。酸素原子を正四面体の中心に置いたとき、O-H結合はこの酸素原子から正四面体のほぼ頂点方向に伸びています。正四面体の中心角は109.5°ですから、全く同じではありません。正四面体はマッチ棒6本で正三角形4個を作るパズルでおなじみ。4面が正三角形です。水分子を正四面体になぞらえたとき、残りの2つの頂点には酸素原子の2個の非共有電子対(孤立電子対:電子が2個ペアになって他の原子との結合性を失ったもの)があります。

酸素原子は電子をひきつけやすく(電気陰性度が大きいといいます)、水素原子は酸素原子に電子を奪われます。電子を粒として捉えると変な話になりますが、電子を存在確率の雲(電子雲)として捉えると少しイメージしやすくなります。電子雲は酸素原子に引っ張られ、酸素はちょっとマイナスに、水素はちょっとプラスになります。分子内にできた電子雲の偏りを極性と呼びます。水素は電子1個しかないですから、電子雲がちょっと偏っただけで比率としては大きな極性ができます。水素は電子分布の偏りによる結合を作りやすい。このような結合を水素結合と呼びます。

通常の液体の分子がファンデルワールス力(べたべたした結合)で結合することに比べると、水素結合による結合はかなり強い結合になります。水素結合によって種々の水の特長を説明できます。

+++ 水は固体になると軽くなる +++

水分子Aの水素原子は隣の水分子Bの酸素原子との間に静電気力で引力が発生します。水分子Bの水素原子は隣の水分子Cの酸素原子と弱いながら結合します。この繰り返しで水分子は結合しながら小さな集団となっています。液体とは、分子が結合せずに集合したものですが、水分子は局所的に結合した集団を含みます。

水素結合はイオン結合や共有結合より弱い結合で、原子間の距離も大きくなります。水が凍って氷になるとき、水分子を固定するのが水素結合です。一つの水分子は最大で4つの水分子と水素結合し、六方晶系の結晶構造となります。液体のとき、水の水素結合の数は0〜4個です。水分子は水素結合しないときのほうが分子間の距離が小さい。水を冷やすと、他の液体と同じように体積が小さくなりますが、約4℃で最も比重が高くなった後、分子あたりの水素結合の数が増えて氷に近づき、隙間が多くなります。0℃で水分子は4つの隣の水分子と水素結合し、分子の間の距離が最大になります。逆に密度、比重は小さくなります。氷は比重0.9で、4℃での水の比重1に対して浮きます。

もしも氷が水よりも重ければ、湖水や河川や、海でも表面が冷やされると、氷は底に沈み、やがて水全体が凍ります。実際は水は氷の蓋でがっちりと保護され、氷は大気によってどんどん冷えて零下になりますが、その下は液体の水の状態を保ってくれます。4℃で死ななければ生命体は水の底で生存できます。

+++ スノーボール惑星は液体の水を持つ +++

太陽系の外側には大量の水を持つ天体(準惑星や衛星)があります。ある程度、質量が大きければ、たとえ、表面は凍っていても、海底には液体の水が存在します。天体形成時の熱を閉じ込めているからです。このようなスノーボール・プラネットは太陽系にも存在する可能性があり、太陽と無関係に液体の水を持つことができます。

地球の生命は液体の水無しでは生きることができません。太陽系が最後のときはスノーボール・プラネットに生命の種を植え込んで、太陽系外に脱出させる。遠い将来に近くの恒星の重力圏に捕らえられて、恒星の熱で表面が融け、地球の生命体を復活させることができるでしょう。

+++ 水は表面張力が大きい +++

液体と気体の界面にある液体分子は左右、下にある隣の分子と結合しています。しかし、上には結合する分子がありません。表面の分子では内側に引かれる力が大きくなり、表面張力を発生します。分子間力が大きい液体ほど表面張力は大きくなります。水の表面張力は水素結合により水分子が互いに大きな力で引き合っているため、大きな表面張力を持ちます。

身近のところで、水より表面張力が大きい液体は水銀です。水銀原子が金属結合により強く結ばれているからです。ターミネータ2に登場する液体金属のターミネータ。液体窒素で凍結し、銃で粉々になった後の復活シーンをイメージするといいでしょう。溶融した鉛や鉄も大きな表面張力をもっています。

+++ 水は様々な物質を溶かす +++

水に溶けた分子は当然のことながら、水分子に囲まれています。溶質分子あるいはイオンがその周囲に数個の水分子を引きつけて結合し、一つの分子集団を作る現象を水和といいます。

イオンは電子の殻を完成させるために、電子を完全に取り込んだ(マイナスイオン)か、放出(プラスイオン)した原子もしくは分子です。水分子は極性(酸素と水素の間の電子雲の偏り)をもちますが、イオンの電荷があるとさらに大きな極性を誘導されます。イオンと水分子は結合しやすく(水和しやすく)なり、水分子の集団に溶け込みやすくなります。

すべてのイオンを発生する物質(電解質)が水によく溶けるわけではありません。電解質によっては一定の濃度にしか溶けないものもあります。溶けやすい電解質の代表例は塩化ナトリウムでほぼ完全に解離しています。一方、難溶性の塩には、炭酸カルシウム(石灰岩の主成分)があります。

極性を持つ分子はイオンと同じように水に溶けます。気体では二酸化炭素が代表例で、水分子1分子を取り込んで、炭酸になります。大気中の窒素酸化物や硫黄酸化物が水に溶解すると、炭酸よりももっと強力な酸が生じます。工場や自動車から排出される酸化物が雨に溶けて酸性雨として地上に降りそそぐと、大理石やコンクリートの建造物に脅威を与え、また、森林を枯らします。

生体高分子ではカルボキシル基やアミノ基などの極性基に水和が起こります。水和によって分子の性質が変わり、例えば生体分子の反応を触媒する酵素の活性はその水和量に依存しています。

天然の有機物の多くは水に溶けます。高分子であるでんぷんやセルロースも少し熱を加えたりすると水に溶けます。もともとでんぷんやセルロースは水酸基という極性基をたくさん持っています。タンパク質は表面に多くの電荷や極性基を持ち、水によく溶けます。 極性のない気体、窒素やメタン、ネオンなどもすこし水に溶けます。圧力が高いと気体が水に溶ける量が多くなります。また、温度が高いと水に溶ける量が減ります。金魚は水温が高いと酸素不足になります。

気体分子の周りには水素結合で結合した水分子の籠ができます。言い方を変えると、隙間の大きい、氷型の水の結晶の間を少し広げて気体分子が入り込む格好になっています。このような形をクラスレートと呼びます。水の籠は低温・高圧では安定します。クラスレートは安定した構造なのでクラスレート単位で結合し、濃度が高いと固体になります。海底1000mにできるメタンハイドレートは地球温暖化や海底資源として注目されているクラスレートです。

+++ 酸とアルカリ +++

酸とアルカリは高校の化学で水素イオンと水酸イオンの働きとして学習します。よく知られているように、水分子(H2O)は水溶液中で解離して水素イオン(H+)と水酸化物イオン(OH-)を作ります。H+は水和してヒドロニウムイオン(H3O+)になっています。化学的には酸やアルカリの働きはこのイオンによりますが、日常的には水分子の解離を促す物質のことを酸やアルカリと呼びます。水素イオン(H+)と水酸化物イオン(OH-)は同時に増えることはなく、どちらかに偏ります。同時にできると反応して水分子に戻るからです。水の中で水素イオンを作り出す物質が酸で、塩酸や硫酸、酢酸などがあります。

+++ 水分のコントロール +++

湿度は温度と共に私達の日常生活に密接に関係します。湿度は空気中に含まれている水蒸気の量を示します。イメージ重視で表現すると、「空気が水でどの程度いっぱいになっているか」の尺度で、%で表します。湿度計は、毛髪湿度計など水蒸気の収脱着により固体が伸縮する性質を利用したものです。水は空気中と固体で自在に出入りし、局所的に平衡状態になると考えられます。 固体の中の水分量は含水量で表現されます。湿り気のことです。

衣料の繊維には、アミド結合、エステル結合、水酸基などの極性の高い官能基が含まれています。水に関して表現すると親水性官能基とも呼ばれます。天然繊維の吸湿性が優れているのは、素材が親水性であるとともに、表面が不規則で毛管現象により吸水能力が高くなっているためです。合成繊維も表面に亀裂を入れたり、断面を円形ではなくL字型などの異形にしたり、あるいは多孔質化するなどの方法が開発されています。また、疎水性(水をはじく)繊維を多層構造にして、水蒸気(分子)は外部に放出しますが、水粒子ははじく防水加工も考案されています。

多量の水を吸収する高吸水性高分子は余分な水を吸い取る機能、水をためる機能、体に優しいことなどから、医・衛生材料(オムツ、コンタクトレンズなど)、農・園芸材料(保水材、吸水シート)として広く利用されています。

+++ 飲料水 +++

私達が飲めない水には2種類あります。一つは消毒が不完全で病原菌が入っているか、それを殺すために使った消毒薬(塩素化合物)がきついものです。他の一つは硬度が高い水、特にマグネシウムが多く含まれている水です。マグネシウムイオン(プラスイオン)は硫酸イオン(マイナスイオン)と対になっていることが多い。硫酸マグネシウムは弱い下剤ですので、硬水をたくさん飲むとおなかをこわします。純水を作る手段として、蒸留、イオン交換樹脂を通す、逆浸透膜を通すなどの方法があります。通常はこれらの方法を組み合わせます。純水は作るより、保存する方が大変です。

奇異に感じるのはミネラルウオーターです。ミネラルウオーターとは要するに水です。農林水産省や厚生労働省のガイドラインでは水道水をビンに詰めてもミネラルウオーターとして販売できます。特殊なミネラルが入っているわけではありません。イメージ商品ですが、水道水を敬遠する子供たちには何か特殊な、ありがたい水のように感じられるのでしょう。水は飲まないけど、ミネラルウオーターなら飲みます。大人も同じでしょうか。

日本では「水と空気はただ」という考え方が普通でした。しかし、環境汚染の影響で、ただとは言えなくなってきました。また、蛇口をひねれば水が使える感覚が当たり前になったために、水をそれこそ湯水のように使う生活になっています。世界の水不足は深刻です。過去にあった「農業用水をめぐって村同士で争う」ような事態も懸念されます。

+++ 世界の水:需要と供給 +++

世界中で10 億を超える人々が安全な飲み水を手に入れることができず、20 億人が下水設備をもたない。人が生活するの必要な水を供給する資源は十分でしょうか。世界的な水危機には科学的(環境的)、経済的、また政治的な問題が関わっています。気候学者たちは、今後、降雨量は不安定になり、夏は土壌が乾燥しがちになると考えています。

農家は水の使用量をより少なくし、一方で、収穫を上げなければなりません。育種家や作物学者、遺伝学者たちは協力して水が少なくとも収穫の多い作物を開発しようと努力していますが、容易ではない。インドで大規模な水路ネットワークで河川を連結することにより水供給を全国に再配分するという壮大な計画を実行しています。

多くの国では、農業用の灌漑用水が淡水使用量の大部分を占めていますが、飲料水や家庭での消費やエネルギー生産に使われる水量も急速に増えています。淡水量には限りがありますから、新たな浄水法が必要で緊急の課題です。

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10. 冥王代の重爆撃・・・混沌 [エアロゾル]

海ができた頃の地球は厚い雲に覆われ、上空では太陽からの紫外線、宇宙からの粒子線、雷の放電により、水蒸気や二酸化炭素、窒素が反応性に富んだラジカルになり、化学反応で簡単な有機化合物が作られた。シアン化水素、シアノアセチレン、ホルムアルデヒドなどである。また、隕石や流星から有機物が供給されることもあった。これらの分子は雨粒に溶け込んで海へと落下した。この頃は陸地がほとんどなかった。これらの反応性の高い素材は高分子をつくり、原始の海に溶け込んで蓄積された。

月のクレーターを観測すると、ほとんどが約40億年前にできたこと、そのサイズ分布から火星と木星の間の軌道にある小惑星が集中的に落下してできたと推測される。この原因についてシュミレーションによる研究が行われた。約40億年前は、天王星と海王星が形成された時期とされる。その影響で木星と土星の軌道がずれ、小惑星の軌道も不安定になったと考えられる。惑星の軌道変化は小惑星の軌道を攪乱し、太陽系内にたくさんの小惑星が飛び交うようになった。今から約40億年前には、地球型惑星上に集中的な天体の落下が数千万年から数億年にわたり継続していたとされる時期であり、後期重爆撃期(Late Heavy Bombardment)と呼ばれる。

後期重爆撃期に落ちた隕石の数は22000個と推定されている。クレーターサイズが2000km程度のものは40個、クレーターサイズ5000kmのものは数回と予想されている。この巨大隕石は直径が数百キロもあり、海を完全に干上がらせ、地殻を突き破ってマントルの上層部を攪乱する。岩石は一時的に熔解し、マントルの中の物質が表面にくみ上げられ、地殻の上にあった物質はマントルに埋め込まれる。隕石の衝突で海や溶岩は大気に飛び散り、大量のエアロゾルを生成し、大気と混合した。巨大隕石が落下した後も無事に海は回復した。溶岩は海によって冷やされながら、海に様々な物質をもたらし、冷えた溶岩により玄武岩質の地殻が再生する。

天体衝突が生じると、イジェクタと呼ばれる衝突破片が大量に生成される。イジェクタのうち、特に微細なものは表面積が大きいために、化学風化反応を受けやすい。したがって、頻繁な天体衝突によって大量のイジェクタが生成されると二酸化炭素は大量に消費されることが予想される。大気中の二酸化炭素が大幅に低下し、スノーボールアースになったのではないか。

太陽は現在の 70%程度のエネルギーしか地球に放射していなかった。この量だと、地球は全面凍結する。マグマオーシャンが冷却した後、ゆっくりと凍り、隕石の落下により急激に融け、また、時には完全に蒸発することを何度か繰り返したかもしれない。二酸化炭素の量が多ければ温室効果により、凍結に至らなかった可能性もある。

隕石が落ちて海や岩石が蒸発したときに、炭素化合物ポリマーは熱で炭化し、カーバイドのような反応性の高い炭化金属ができたのではないか。この分子は高分子を大量生成したのではないか。巨大(でなくとも)隕石の衝突は新しい物質、複雑な有機物、化合物を供給した可能性がある。

+++ 大気中では小さな粒子は漂う +++

太陽系空間にある粒子は、位置エネルギーに応じた運動エネルギーを得て、太陽へ向かって落下します。運動の方向が惑星などによって逸らされると、楕円運動をします。運動に対して大きな摩擦抵抗が発生しないので、運動は規則的であり、ほとんど減衰しません。

それに対して地球には大気があるため、運動の様子が変わります。特に、小さな粒子は落下することなく、空気中を漂うようになります。

空気中を漂うような液体または固体の微小な粒子をエアロゾルといいます。われわれの周りにあるエアロゾルは、その生成過程の違いから粉じんとかフューム、ミスト、ばいじんなどと呼ばれ、また気象学では、視程や色の違いなどから、霧、もや、煙霧、スモッグなどと呼びます。エアロゾル粒子は、粒径や化学組成、形状、光学的・電気的特性など多くの特徴があり、その性質はきわめて複雑です。例えば粒径についていえば、分子やイオンとほぼ等しい0.001μm=1nm程度から花粉のような100μm程度まで約5桁にわたり、また個数濃度についても、清浄空気の10個/cm3程度から発生源近傍の数百万〜数百億個/cm3程度まで 7〜8 桁にもわたります。

+++ 空気感染は感染微生物を含むエアロゾルによる +++

風邪を引くと咳が出ますが、そのときの唾液も空気中で乾燥してエアロゾルになります。咳だけでなく、会話をしていてもエアロゾルはできます。ウイルスや細菌はエアロゾルを利用して感染します。エアロゾルの大きさ、包まれた病原体の乾燥に対する強さによって飛沫感染と空気感染とに分けられます。飛沫感染とは病原体が粘液などの水分で包まれた大き目の粒子で感染が起こることで、通常は1m以内で起こります。一方、空気感染では周りの水分が蒸発した飛沫核によって感染が起こり、大きさも小さくなり、空気の流れにより広範囲に飛散します。通常、空気感染を起こすのはウイルスで、感染症にはインフルエンザ、麻疹、水痘などがあり、また、細菌では空調設備などを介した感染として最近問題になっているレジオネラ症が含まれます。

細菌はミクロンサイズ、ウイルスはサブミクロンサイズでマスクの目に比べるととても小さいものです。しかし、空気中では比較的大きなエアロゾル状態にあるため、マスクで両方とも大部分を除去できます。もちろん、目は細かいことに越したことはないですが、目の細かいフィルターを厚く重ねると、表側と裏側に大きな圧力差を生じ、息苦しくなります。エアロゾルは電場に入ると帯電しやすく、静電気で除去しやすくなります。静電気を利用したエアフィルターは目が粗くとも十分微粒子を防ぐことができ、空気の流量を減らすことなく、また、圧力差を少なくできる濾過装置です。

+++ マスク +++

インフルエンザの流行で、マスクが不可欠になってきました。特に、エアロゾル感染(飛沫感染)の知識が社会の常識になると、常時、マスクを着用するのがエチケットになりそうです。NHKの番組でエアロゾルの実験をしていましたが、くしゃみと咳とが十分区別されていないようでした。

エアロゾルを問題にし始めると、人ごみの中でマスクをしないですむ合理的な理由がなくなります。ウイルスの感染に限らず、単なるくしゃみでも、唾液を原料とするエアロゾルが辺りを漂うとなると、気持ち悪いと感じる人も多いと思います。

最近では大きなマスクをする人が多くなりました。オジサンがマスクをすると怪しげな雰囲気になりますから、できるだけ抵抗しようと思っています。この後に花粉の季節が控えていますから、日本の冬と春はマスク・ファッションを無視できません。「眼だけ美人」だと、得かも。

+++ 汚染物質としてのエアロゾル +++

喘息の原因ともされている工場などから排出される煤塵やディーゼル車の排出ガスに含まれる粒子状物質があります。エンジンなどから直接出てくる微粒子と、硫黄酸化物(SOX)・窒素酸化物(NOX)などのガス状物質から大気中で粒子状物質に変化する粒子があります。とくに、粒径が10μm以下のものをSPMと呼び、大気中に長時間滞留し、肺や気管の奥まで侵入して沈着し、呼吸器を侵します。

+++ エアロゾルは気象にも影響する +++

エアロゾルの発生源は人工的な装置だけではありません。火山活動や、細かい土壌の粒子が風で舞い上げられたもの、波のしぶきが乾燥して微粒子となったものがあります。雲は無数の微小な水滴からできていますが、この水滴はエアロゾルが核となってできています。エアロゾルの個数や成分の変化によって、雲の生成量などが変化し、天気に影響します。また、大気中に浮遊しているエアロゾルが,日射(太陽放射)を散乱・吸収することによって、地表に到達する日射量が減少し、大気が得る熱エネルギーが減少します。エアロゾルは気候にも関わっています。  中緯度から高緯度地方で、雪の核になっている物体を調べた研究が発表されました(Science 319, 1214, 2008)。驚いたことに、ほとんどが細菌由来の物質。特に、凝固したときの温度が高いときは69-100%が細菌由来でした。このことから、細菌が地球上のあらゆる地域で雨や雪の核となって降水を誘発している可能性を示唆しています。

+++ 地球創世記の大気は大量のエアロゾルを含んでいたはずである +++

誕生間もない地球は濃い大気を持っていたことから、大量のエアロゾルが空気中を漂っていたことでしょう。そして、大気や海の化学成分に大きな影響を及ぼしたと思われます。地球の上空では隕石の燃焼や稲妻、宇宙線の放射などで大量の活性低分子ができたはずです。これらの分子は高空を漂うエアロゾルに溶け込み、雲となり、地上に落下する間に水分が蒸発、濃縮されて、生命の材料となる高分子が誕生した可能性もあるのではないでしょうか。しかし、その実状について推測する材料がありません。

+++ コロイド +++  

液体中でエアロゾルに相当するものはコロイドと呼ばれます。コロイド粒子の大きさは直径1〜100 nm程度の大きさの粒子です。液体中では空気中より沈降速度が遅いので、比較的物質は分散されやすいのですが、くっついて沈殿しやすい。無機物のコロイドもありますが、有機物のコロイドは種類が多く、特に生物由来です。

無機物のコロイドは金属を含む溶液を酸化したり還元したりしてできる不溶性のコロイドです。濃度が高かったり、時間をかけると沈殿になるものが、凝集が中途半端なためにコロイドとなるものです。金コロイドなど。人工的な有機物のコロイドではプラスチックコロイド(ラテックス)、洗剤などの会合ミセルのコロイドがあります。天然物の有機物のコロイドはたくさん種類があります。タンパク質はそれ自体がコロイドとしての機能を持ちます。タンパク質の会合体であるウイルス粒子もコロイドです。細胞内の小器官もコロイドとして振舞います。

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11. プレート・テクトニクス・・・地球表面の冷却作用 [相分離]

地球のプレートテクトニクスのシステムによってできた岩で、今までに発見された最古の岩は38 億年前のものである。海底が分裂するのに伴い形成された一連の岩が国際研究チームによりグリーンランドで発見された。したがって、プレートテクトニクスのシステムは比較的早い時期に始まったと考えられる。この岩はオフィオライトと呼ばれ、海洋地殻がそのまま地上に露出した特徴的な層構造をしていて、厚さは約10kmと海洋地殻の厚さであり、様々な種類の火山岩を含んでいる。

38億年前に最後の巨大隕石が落ちた後、地殻は安定した。太古代のマントル対流は2層に分裂していた。地殻はマントル対流に流されて割れ、プレートとなった。上の層は厚さが670kmほどであり、そのなかでほぼ円形の乱流となっていた。地殻はマントル対流とほぼ同じ大きさである直径が 700kmほどのプレートに分かれていたと予想される。地球表面全体には200枚ほどあった計算になる。プレートの移動速度が1年間に3cmとすると、約2000万年でプレート1枚はマントルへ入り込む。現在のプレートが沈み込む速さはおよそ毎年0.5立方キロメートルである。

プレートはマントル対流に乗って移動した。プレートがぶつかるところでは片方のプレートが上になり、もう一方がマントルの中に沈みこむ。沈み込み帯と呼ばれ、弧状列島が成長した。マントルが湧きあがるところではプレートが生成する。海嶺と呼ばれる。 原始の地球では弧状列島、海嶺の総延長は現代の20倍近くあったであろう。

海嶺では湧きあがるマントルにより海の底に割れ目ができ、湧き上がるマントルからマグマが供給され、玄武岩質の地殻が形成された。海嶺ではマントルからもたらされる熱で海底から熱水が噴出し、硫化水素、メタン、水素などの還元ガスや鉄やマンガンなどの金属硫化物が大量に海に供給された。原始地球の海の深さはほぼ2000mと見積もられている。

沈み込み帯では海溝が形成された。沈み込んだプレートは水を含んでいるのでマントル中で比較的低い温度で融け、マグマとなって噴出し、大量の花崗岩を含む海底火山を作った。やがて、プレートの境界に沿って造山帯ができ、島が発達した。おそらく、島は弧状となったであろう。火山活動は地中から硫化水素、メタン、水素などの還元ガスを海中や大気中へ放出した。沈みつつあるプレートは弧状列島にたくさんの付加物を残した。海底に有機物の沈殿があったとしても地中深く埋没することは稀であった。

原始地球には陸地は島程度と予想される。プレートが衝突するところでは大規模な造山運動が起こるが、その証拠は残されていない。陸地は海流や大気の流れに影響する。陸地が少なければ、雲は現在のように錯綜したパターンを示すのではなく、木星や土星の縞模様のように自転の影響で規則正しく並んでいたであろう。海流も同じように規則正しく、層状に並んでいたのではないか。マントル対流は地球の自転の影響を受けただろうか? 堆積岩は作られたとしてもわずかである。28億年前までは、大陸は現在の2割ほどしか形成されていない。

太陽は現在の70%程度のエネルギーしか地球に放射していなかった。この量だと、地球は全面凍結する。海はマグマオーシャンを冷した後、ゆっくりと凍り、隕石の落下により融けることを何度か繰り返したかもしれない。二酸化炭素の量が多ければ温室効果により、凍結に至らなかった可能性もある。隕石の衝突が非常に激しい場合は、その効果は生命の誕生に対してネガティブに働いたであろう。しかし、小さな隕石の落下は生命の誕生にポジティブに働いたかもしれない。

+++ 地球は様々な理由で相分離した +++

物質は様々な分子が混合しています。通常は熱力学第二法則に従って、ごちゃ混ぜになるように(エントロピーが増大するように)変化が進みます(変化が終了しています)。しかし、分子によっては、性質の似たもの同士が集まった方がエネルギー的に安定することがあります。その場合、分子は集合体(相)に分離します。身近な例では、セパレート型ドレッシングを想像してください。油と水の相に分離しています。

地球の場合、金属核ができたときが最初の相分離でしょう。また、気体や液体が地球表面に染み出し、薄い膜を作ったことも相分離(通常は固体、液体同士での分離を言います)です。さらに、海は地殻を作り出しました。

人間を含む生物圏は地殻の上の大気と海から構成されています。マントルや金属核の状態はわかりませんが、地殻の表面は、固体と液体と気体に分かれているだけでなく、その構成物質は様々な化学反応を行い、生命を生み出しました。

38億年前、環境に完全依存する生命体が誕生しましたが、おそらく、大気中にメタンを排出し、30億年前の地球を温暖化しました。そのころ、他の生物の排泄物を餌にして生長・増殖する生命のリサイクルループが完成し、特に、27億年前、光合成が完成した後は、大気が酸化しました。22億年前がピークです。酸素の出現は地球表面を大きく変えました。生命活動は地球の物質循環を変え、その意味では新たな物質相を生み出したといえます。

生物が作り出した表面の多様性は人間の手によって改造されました。人類の活動が地球の物質循環、地勢を変えます。6000年前のアフリカからアジアにかけての乾燥化は灌漑社会・都市文明を生み出し、とくに、最近の産業革命以後の変化は顕著です。人類の活動は地球に新たな物質層を積み上げているといえます。

+++ 国家・社会にも対立する2つの層があり、物理的に分離する +++

相分離するのは分子だけではありません。社会学的にも人種や階級など、人間は集団を作って分離します。2種の人種を仮定し、時間とともに平面内を人が移動するモデルを作って実験したところ、近隣で仲間はずれになりたくないという傾向をパラメータに仮定するだけで、ランダムに分散していた人々は人種ごとにコミュニティを作ります。

大人と子供、男と女、田舎と都市、貧困層と富裕層、生産者と消費者、高学歴と低学歴、公務員と非公務員。勝ち組と負け組み。人はいろいろな顔を持っていますので、対立関係は複雑に重なり合いますが、これらの対立のなかで、いくつかが人々の居住地や行動範囲を分けることになります。

+++ 2大政党制は国民を対立する2つの層に分ける +++

アメリカ大統領選挙で民主党のケリー候補は東部やカルフォルニア州など人口の多い都市部、ブッシュ候補はそのほかの大部分の地域で票を獲得しました。ブッシュは自民党みたいに田舎で強いと読み取れました。我々日本人になじみが深いのは東海岸やカリフォルニア州。その奥に保守的なアメリカ合衆国の田舎があるんだと実感しました。日本の選挙報道もそうですが、一般国民という視点で選挙を論じる傾向があります。しかし、国民は様々な考えを持った人々の集まりです。アメリカ大統領選挙では2人の候補が、対立している2つの考え方に対して様々な意見表明を行っていました。

+++ 新分野は既存の分野から相分離して再構成される1 +++

社会の変化は新たな産業やサービス体系の分離を促します。技術の変化や生活基盤の変化、気候の変化が大きな要因でしょう。 ソーシャルワークを例にとってみます。ソーシャルワークとは社会福祉をおこなうこと、社会福祉上の援助です。高齢社会に対する対策の一環として介護保険制度が導入されたことから職業として脚光を浴びました。社会的な弱者の生活上の問題を解決し、障害を緩和するために助ける仕事です。といっても対象は様々です。活動対象をもとにカテゴリー分けをすると、個人レベルから国家レベルまで様々で、そのレベルで専門性をともめられます。

これらの活動は、それぞれの分野にばらばらに存在していましたが、社会的な基盤を得て、一つの分野として認められました。過去はボランティアや家族内、地域社会の労働でしたが、現在では高度な専門性が求められます。プロフェッショナルとして給料をもらうのが当然であるし、社会ではそれだけのステータスを認める必要があります。

+++ 新分野は既存の分野から相分離して再構成される2 +++

新聞を出発点としたジャーナリズムもすでに職業分野としての地位を獲得しました。最近の技術革新により、TVを中心とした映像メディアが隆盛を見せましたが、本来のジャーナリズムの目的である世論形成のための専門的な報道より、大衆の娯楽提供の役割が強くなりました。こちらの方は雑誌・新聞、さらにはインターネットによる情報発信がTVの地位を脅かしています。

映像メディアが社会的に大きな影響を持つと、当然、研究対象ともなります。ジャーナリズム学、マス・メディア学、情報コミュニケーション学などの名前で、IT技術、コミュニケーション心理学、演劇学、社会学などがミックスされた総合的な分野が育っています。研究成果はマスコミだけでなく、企業活動における対人パフォーマンス技術、交渉技術、プレゼンテーション技術や広報に生かされています。

日本の政治はパフォーマンス不足といわれますが、最近では選挙戦にこの分野の成果を取り入れようとしています。見た目に惑わされず、実質的な政策論も正式にマスメディアで公表してもらい、我々はそれを十分に検討したいものです。

+++ 労働層の分離 +++

移民の流入するアメリカでは、現場作業者は何年働いても固定された時給を受け取るだけで、昇進することがありません。勤続年数を積み重ねた末に選任権を手に入れると、職域内の楽な仕事に移っていきます。これが文字通りのブルーカラーです。会社の都合でやらされる仕事に従事するので、精神的な苦痛に見合う金銭報酬を出さないと誰も来ない。モティベーションを保つためにはお金や休暇しか方法がありません。職務第一主義の限界でしょう。それに対して、ホワイトカラーは最初から管理職で、責任と能力を要求され、それに見合った給料を得ます。

ところが、日本企業は平等主義から、ブルーカラー、ホワイトカラーの区別を取り払いました。全員が自らのキャリア・パスを考えるように仕向けました。まさに全員がエリート、最後の最後まで、すべての社員が社長になる可能性を否定されない。その結果、社員は給料が安いと文句をたれながらも会社人間となり、定年まで同じ会社にとどまります。なんといっても責任をもって打ち込める仕事がある(ように見える)からです。あくまで、人材育成第一主義です。その上で終身雇用制度が生きてきます。

+++ 食糧生産の場と消費の場が切り離された +++

鳥インフルエンザやBSE問題で感染症に対して食の安全性の確保が問題となっています。もう消費者の意識では風化したかもしれませんが、大腸菌O157による食中毒は依然、発生しています。新聞では畜産業界の体質改善を迫る記事が多いようですが、本質は別でしょう。問題は生産の現場と消費の現場が完全に切り離され、お互いに他人事になっているためでしょう。管理に必要な労力や経費に対して十分な対価がないと、安全性は確保されません。

我々消費者は屠場に引かれていく不安そうな牛の目を見ることなく、また、生産効率だけを追求され、動くこともままならずひたすら子豚を産み乳を与える母豚に接することはありません。私は東京の郊外に住んでいますので、住まいの周りに畑も多いのですが、道路沿いの畑には、空き缶やペットボトルが投げ込まれている様子を見ます。スーパーに並ぶ肉のパッケージから、その肉を筋肉として使って歩いていた豚の姿を想像できますか? 我々が生きていくためにいつような汚いもの、見るに耐えないものを直接体験する機会を我々は失っているのではないでしょうか。

その世界を知っている専門職と一般消費者が切り離され、体験や感動を共有することもありません。お互いの利益だけを追求するようになると、世の中はギスギスしたものになるでしょう。

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12. 生命体誕生の謎・・・偶然か必然か [時間]

現在の完成された生命システムを見ると、ひとつの生命現象に数百のタンパク質が関与していることに驚く。細胞共通の活動を列挙すると、遺伝子複製、遺伝子の転写、mRNAの翻訳・タンパク質の合成、分泌タンパク質の輸送、タンパク質の加工、脂質やアミノ酸の合成・分解、光合成、解糖系、TCA回路、膜ポテンシャルによるATP合成、タンパク質の分解、細胞内器官の分解、物質の分泌などがある。

タンパク質は非常に複雑な分子であり、ナノマシーンとして機能する。多種類のタンパク質が集合して巨大な構造体をつくり、共同して一連の作業を行う。遺伝子情報を司る核酸はそれ自体では活動することができず、タンパク質の助けが必要である。遺伝子からタンパク質合成までのシステムは核酸とタンパク質が共同して営む。

膜構造も単なる外界の遮蔽だけではない。膜に埋め込まれたタンパク質が膜の両側に非平衡状態を作り出してエネルギー(ATP)生産を行い、また、神経パルスを送る。また、細胞外の栄養分を取り込み、情報分子をキャッチする。特に真核細胞では細胞内にも多くの折りたたまれた膜構造を持ち、隔離された反応を進行させる。

実は生命が誕生した過程を解明するには、これ等の各々の機能単位が無機物からどのようにして誕生したかを解明する必要があるとともに、それぞれの機能単位がいかにして相互作用し、有機的な関係を作り出したかを解明する必要がある。生命が誕生したのは必然であったのか。それとも途方もない時間における偶然の積み重ねであったのか。いまだに解明されておらず、また、解明される糸口さえ怪しい。

これから数章の生命の誕生とその初期進化については、断片的な科学報告を元に不明な部分の多い生命の誕生を必然とするためのストーリーを組み立てているために、岩田の推論が大きく入り込んでいる。

生命の誕生について、もっとも不可解なことは、重要な要素であり、生命の本質に関わる。生命の本質は情報である。すなわち、分子を生命体として機能的に組み立てる情報が生命の本質である。生命の誕生を解明する鍵は、生命体情報の誕生、情報の物質的な基礎、情報の伝達するメカニズムにある。現在では、最初の遺伝情報分子はRNAと考えられている。しかし、タンパク質の情報がRNA分子に書き込まれた必然性を考えなければならない。部品がそろったとしても、それらを混ぜても生命体はできない。

そこで、生命の起源に関する研究を整理し、時系列に沿ってならべるために、単純なものから複雑なものへと、生体を構成する分子、分子装置がどのように生み出されたかを考察する。以下、下記のような項目立てを予定している。

後期重爆撃期が終了した38億年前までが冥王代。そのあと、38-25億年前までが始生代(太古代)と呼ばれる。最初の細胞の化石(膜構造)が見つかった35億年前ほど前までが対象となる。

+++ 生命は永遠を志向する +++

生物の仕組みは自身の生命活動をできるだけ長く維持するようにできています。個体の生命活動が潰えたあとでも、子孫にその仕組みを伝えることで、種全体としては永遠に生き残るようにできています。また、様々な遺伝的な多様性を包含する懐の深さを持って、環境の変化に生き残りを図ります。生物界はお互いに助け合い、たとえ、絶滅する種があったとしても、どれかの生命は生き残ってきました。生き残り戦略の基本は多様性と様々な相互ネットワークです。過去の環境の大きな変化や急激な変化に対して弾力性のある対応ができました。言い換えると、生き残り戦略も過去の環境変化によって鍛えられ、遺伝子としてしっかりと受け継がれているはずです。

+++ 長生きの秘訣とは +++

さまざまな脊椎動物を調べると、最大寿命と比代謝率(1gあたりの 1日あたりのエネルギー消費量)の間に反比例の関係が出てきます。言い換えると、生物が一生の間に使うエネルギーの総量(LEP値)は一定です。大量にエネルギーを消費する種は短命で、ゆっくりとエネルギーを使う種は長命です。太く短く生きるか、細く長く生きるかの違いです。もう少し細かく見ると、哺乳類のLEP値は3つの値に落ち着くようです。霊長類以外(220kcal/g)、霊長類(460kcal/g)、ヒト(780kcal/g)です。ヒトは太く長く生きる種の代表例です。

もっとも確実な長寿化・老化抑制の手段は何かというと、食事制限=ダイエットです。さまざまなサプルメントなどが宣伝されていますが、ヒトで効果が実証されているものは皆無です。ダイエットは炭水化物の量だけを減らし、ほかの必須栄養素を減らさない食事療法です。といっても、さまざまなバリエーションが考えられるでしょう。

+++ 老化に関与する遺伝子 +++

ちょっと暖めていた老化を遅らせる(寿命を延ばす)遺伝子についてメモを書いておきましょう。1つは5-アデニリルサイクレースです。5-アデニリルサイクレースはアドレナリンの信号を受け取り、細胞の活動を活発にします(特に心臓の鼓動の活発化)。マウスで5-アデニリルサイクレースを機能不全にすると30%寿命が延びました。体重が減り、心臓への負荷が減り、骨のロスが少なくなり、SODの生産量が増えたそうです。2つ目はサーチュインことNAD依存性脱アセチル化酵素です。サーチュインは多くのメンバーからなり、細胞内代謝状態(エネルギー状態?)のセンサーです。活発な細胞機能を抑制する働きから、老化や癌化、DNA損傷修復などに関与します。

老化を遅らせるには5-アデニリルサイクレースに対しては阻害剤を、サーチュインに対しては活性化物質を摂取すれば良いことになりますが、どちらの場合も生理機能が低下し、血沸き肉踊るような人生は望めないようです。

+++ 長生きは幸福か +++

長生きしたら幸福でしょうか。人は三度死ぬといいます(疋田先生、満足死 寝たきりゼロの思想、奥野 修司著、講談社文庫)。第一は社会で貢献できなくなった「社会死」です。定年や引退、隠居がそれにあたります。第二は生活の維持が困難になる「生活死」です。寝たきりや認知症で介護が必要になる状態です。第三は心臓が止まる「生物死」です。いまは生活死から生物死まで五年、十年がざらであるのが大問題で、理想的には一週間、長くて一カ月が望ましい。そのためにはどうすればいいのでしょうか。疋田先生は金のためではなく健康のために死ぬまで働けといいます。

+++ 人間の時間感覚は対数的である +++

ずっと古い時代の長い時間で起こった出来事について推測を加え、記述してきました。長い時間は想像もつかない変化を引き起こしているかもしれません。人間活動に比べて、億年の期間は比べようもなく長いものです。人類はこの時間を実感することができません。 人間の時間感覚は対数的であるように思います。10年前と20年前の時間の距離は100年前と200年前の時間の距離と同じように感じられます。さらに、1000年前、1万年前と、なんとなく等間隔で並ぶようなイメージです。物理的な時間は長くなっているのですが、感覚的にはその長さは感じられません。

歳をとると時間のたつのが早くなると実感します。若いときはただ座ってじっと待つのがいかに長く感じられたことか。同じ場所でただ座って待っても、今では待っていられます。エネルギー代謝が低下して、細胞の活動周期がゆっくりになったのではないか。コンピュータに擬えればクロック数の低下です。しかし、クロック数が低下しても無駄なデータの出し入れをしなくなれば性能は低下しません。

老化と神経細胞の活動周期の研究ではクロック数の低下は観察されません。時間が経つのが速く感じられるのは、新奇の体験が少なくなり、今までと同じ体験をしている間は時間を記憶しなくなるためです。また、過去の時間と記憶を対数的に折りたたんでしまうためでしょう。

+++ 製品には長期間、機能する保証が必要である +++

製品開発では長い時間で起こる変化を評価し、品質を保証しなければなりません。

医薬品では安定性試験。食品では保存性試験。機械では耐久性試験。これらの試験は製品の性能を保証する一つの要素として基準が示されています。基準を定めるために、また、検査するためにたくさんの公益法人が設立され、運営されています。

医薬品を例に取ると、安定性試験とは医薬品の品質が温度や湿度などの影響を受けて、どのように経時的に変化するかを科学的に評価する試験です。評価のために試験計画書を作成し、実際に保存、分析を行い、その結果を試験報告書にまとめます。また、試験の信頼性を担保するために、保存機器、分析機器の保守管理や操作について手順書を作成し、完備します。分析技術は科学の発展に応じて改良されます。試験結果に基づいて医薬品の有効期間や保存条件が決められます。なお、試験計画書や手順書は安定性試験に限ったことではなく、医薬品開発の全体にわたって完備する必要があります。

わざと苛酷な環境において、どのような分解物が生じるかを調べたり、分解物が動物に対して害を及ぼさないか調査する安全性評価も必要です。さらに、使用状況を考えて、その条件をシミュレートした試験が必要です。運送のときに、トラック内で高温にさらされるかもしれない。輸送中は数日間、揺らされるかもしれない。患者さんは開封した後、飲み忘れて、1日、置いてから飲むかもしれない。薬を入れた状態で容器や栓も試験されます。

+++ ミサイルの有効期間 +++

国際社会を揺るがした北朝鮮のミサイル実験。ミサイルの種類もいろいろで、飛んだ距離も様々です。技術者の思いつきですが、あれはミサイルの保存性試験ではなかったか。普通は古くなったミサイルは処分されますが、かの国ではただ捨てるのではもったいない。打ち上げてみて、製造後何年間、使えるかテストしたのではないでしょうか。示威運動を兼ねて、国際社会でのアピールを兼ねて、ミサイル販売のためのコマーシャルとして、燃料費に見合った効果や収入を狙ったのかもしれません。ついでに、アメリカ合衆国の画像情報分析能力も確認できます。とすると、今後も1-2年に1度くらい、定期的に実験があるかもしれません。

+++ 長期間の試験は製品開発の律速段階である +++

医薬品の安定性試験は通常3年間ほどかかります。保存のための工夫の成果は3年後に明らかになるわけです。逆に、他の性能試験にパスしても、安定性試験で失敗する可能性があります。他の性能試験はがんばって比較的短期間でやり直しがききますが、安定性試験はどうあがいても同じ時間がかかります。

簡単な機器類でも10万回の動作をテストする耐久性試験や過酷な環境下でも同じ性能で動作することをテストする長期負荷試験を行います。試験で満足する結果が得られない(設定した合格ラインに達しない)と設計を再検討してやり直しになり、製品開発期間が延びて新製品の完成・出荷が遅れてしまいます。時間的に失地回復できるものではありません。開発研究で不正が行われやすいのはこの試験部分でしょう。あるときは研究員の独断で、あるときは上司からの圧力で。

+++ 昔ながらの製品は超長期試験がなされたと見なせる +++

建築物は日用品などより遥かに長い期間使用されることになります。トンネルなどでは最低数百年、廃棄物の処分場などでは数千年、放射性廃棄物では数万年の使用が前提となります。しかし、科学的にデータが取れる範囲では、よく使われる建材であるコンクリートでも百年の実績しかありません。建築・土木分野では昔から使われてきた木や石以外では百年を越える長期間にわたるデータはあまり蓄積されていません。

紙は実績のある記録媒体ですが、保存状態がよい条件で約千年でしょう。石は持ち運びには不便ですが、刻まれた記録は数千年は持ちそうです。コンピュータで使用しているフロッピーディスクなどの磁気媒体は寿命が数年です。磁気の保持能力が保存期間を決めます。光磁気媒体(CDやDVD)は10〜30年です。化学材料(ディスク部分の劣化も含めて)が寿命を決めます。フラッシュメモリー(USBメモリー、SDカード、SSD)は5年ほど。記録素子の絶縁性の限界だそうです。

染料系のインクも化学物質なので、せいぜい寿命は100年というところでしょう。紙は1000年持っても、記録するインクが染料系だと、保存性が悪いことになります。顔料系のインク(固体の粒です)であれば、紙と同じだけ保存できるでしょう。きちんと保存されたマイクロフィルムは500年ほどでしょうか。

電子媒体の場合は読取装置を必要とします。読取装置の寿命もあわせて考えておく必要があります。

+++ 放射性同位元素を調べることで長時間を正確に測定できる +++

長い時間を測定する時計は同位元素によって与えられます。物質は原子からできています。原子は電子、陽子、中性子で構成されています。陽子と電子は同じ数だけあります。ところが、中性子の数は一定でありません。水素原子は中性子が、0個、1個(重水素)、2個(トリチウム)の3種類があります。当然のことながら、質量数が大きい原子ほど、中性子の数に幅があります。これを同位体または同位元素と呼びます。同位元素のいくつかは、放射線を出して異なる原子へと変わります。放射性同位元素と呼ばれ、700種類ほどが知られています。変化は原子核レベルで起こりますので、周りの環境に左右されません。常に一定の確率で変化します。

炭素を例にすると、中性子が7個、8個という炭素が存在して、この場合の質量数はそれぞれ、13、14となります。質量数14の炭素14C(14は肩上げ)はベータ線(電子)を放出して窒素14Nになります。変化の確率は半分が変化する時間で表し、半減期と呼びます。閉じ込められた炭素の塊の中の14Cの割合は閉じ込められたときから5730年毎に半分になっていますので、14Cの量を正確に測定すると、閉じ込められた年代がわかります。通常、14Cは1兆分の1ほどしか含まれません。他の炭素(ほとんどが12Cです)に比べて2兆分の1しかなければそのサンプルは5730年前のものとなります。

これほどの量を正確に測定するには質量分析装置が必要です。また、これほどの微量な量を測定するのですから、サンプルに周りのものが紛れ込まないように細心の注意を払わなければなりません。方法は十分吟味され、約6 万年前までならば14Cの量で年代を決めることができます。 同じように、ウラン、トリウム、鉛の放射性同位元素崩壊系列を利用した半減期40億年ほどの時計、ルビジウム・ストロンチウムやカリウムを利用した半減期10億年ほどの時計が利用されます。

+++ 科学的に実証できない長期の変化は先手を取るべきか +++

自然科学は同一条件で反復実験をしてデータをとることによって因果性を確定します。私は自然科学の定義を再現性とそれに基づいた論理構成と考えています。学問が再現性を重視しているかは、その学問領域での新発見を報告するとき、発見に至る方法が他の人にも再現できるように書かれているかで判断できます。現代では、新発見は学会での口頭発表や論文として報告されます。そのとき、その発見に至った方法を使うと、他の人でも(極端には素人でも)、同等のデータが得られるかがポイントです。なお、結論(解釈)は異なっていてもかまいません。

ところが、実際に実験を行える領域は限られています。まず、地球規模の現象は実験することができません。観測し、モデルで実験します。モデルと実物とが同等であるかが解釈の分かれ道です。また、何百年もかかる現象、すなわち、歴史的時間がかかる実験も行うことができません。人の一生程度の時間ならば十分に計画し、予算措置をすることで実験(調査)することができます。それでも政治的に結論を急がなければならないことがあり、その場合は不十分な実験により結論が出され、あとで問題になります。

実験できない場合は、モデル実験を行い、一定の条件で得られたデータを外挿的に応用して、予測値を出すという作業がどうしても必要になります。モデルはあくまでモデルであり、実物とはずれがあります。規模と時間が大きくなると、ずれも大きくなります。また、モデルは通常、いくつかの性質を代表することが多く、それを全体に応用する場合、解釈の仕方も人それぞれになります。

地球環境など、規模も大きく時間も長い場合は、方向を誤ると手遅れになる可能性があります。疑わしきは先手を取らなければ危ないという政治的な判断が先行し、後の世代から見たら杞憂ともいえるような具体策が採られ、逆に必要な対策がなされなかったなどということが起こりうるでしょう。基本的には対処療法となり、政策は迷走することになります。それを非難することなく、また、非難されてめげることなく、現実を見据えた対応と新たな変化や発見にすばやく反応する態度・体制が必要です。

+++ 時間の感覚は距離の感覚と相関する +++

世間ではときどき距離を時間で測ります。代表的な例は「光年」でしょう。光の速度が最速で一定であることから、広大な宇宙を表現する時に、距離が光の届く時間に換算されます。つまり一万光年ということは、一万年かかって光が届く距離にその天体があるということです。

現代の地図は距離を距離として測定して二次元空間として表現されますが、昔は実際に旅行してかかった時間が根拠となったでしょう。甲町までは何日、乙山を越えるのに何日、といった具合。現在の地図に比べてデフォルメされるのは当然です。歩くか、馬か、船かによる違い、ルートによる違いは感覚的に調整され、調整センスの高い地図が重宝されたのではないでしょうか。逆に、時間的距離が地理的距離としてイメージされることもあります。遠い祖先は遠いところに住む。古い神ほど、偉大で、かつ遠くに住む。そこに至るまでのイメージの道のりが長いためです。

現代では距離は時間で測り、かつ、お金でも測るようです。円高になって海外は非常に近くなりました。自家用車を持つと、時間的な距離感は、短縮され、かつ、金銭的な距離感も短縮傾向にあるようです。近頃は原油価格、ガソリン代も高騰していますので、世界も少し広くなるでしょうか。

+++ 人は1年で出来ることを過大評価し、10年で出来ることを過小評価する +++

人は1年で出来ることを過大評価する。計画段階では目論見も入り、また、上司の期待も入ってより必ず過剰な計画ができます。ですから、1年たったときにこの程度しか進まなかったと反省する。こうして一年は過ぎていきます。

でも、ちょっと思い出してみてください。10年前、今の自分が予想できていましたでしょうか。10年間にやってきたことをリストアップしてみると、意外にいろいろなことを仕上げております。社会的なものの見方も成熟している。不安や心配事の切り回しだって上手になっている。人から頼られる存在になっている。というわけで、人は1年で出来ることを過大評価するが、10年で出来ることは過小評価する。

目先の成果に腐らず、長く続けることが長足の進歩の秘訣です。長く続ける秘訣は決して無理をしないこと。そのための動機をしっかり確認することでしょう。

+++ いくらあっても「もう少しあれば」と思うお金と時間 +++

ボーナスを手にして、あれも欲しいし、旅行もしたい。でも、将来に備えて貯金も必要ね。そして、いつも出る感想は、「あーあ、もう少しあったらいいのにね。」

お金はいつももう少しあれば満足する結果が得られるはずだと思うものです。家庭でも、仕事でも、研究でも。しかし、十分にあっても、なぜか、満足する結果が得られないのが不思議です。そして、「もう少しあれば」と思ってしまう。必ず不足するお金と時間。そう思うとちょっとは不満が解消されますか?

所得の大きさは幸福と相関するか。実はある程度までは相関しますが、それ以上はいくら増えても幸福と感じるには足りないそうです。相関がよいレベルは先進国で年収1万ドルくらいとされています。むしろ、金額より仲間内での所得の位置が幸福度と相関が高いそうです。

時間は?ちょっと複雑そうですね。忙しい方がいいのか、のんびりしている方がいいのか。少なくとも、逼迫するような状況は避けたいものです。

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13. 生命体を作る単位分子・・・空と海と地底から [元素]

生物体を造る生体分子は、炭素、窒素、水素、酸素を主要構成元素とし、硫黄、リンなどを含む。炭素、窒素は生体高分子の骨格を構成する。炭素は共有結合を作る4つの腕を持ち、窒素は3つの腕を持つ。酸素は2つ、水素は 1つの腕を持つ。これらの腕を完全につなぎ合う形で分子が構成される。炭素の骨格を中心とした化合物を有機物という。

低分子の有機物が合成されたところは、3つくらいに分けられる。宇宙と、高空と海底である。おそらく前二者は有機物の供給源であり、生命体の誕生は海底であっただろう。

宇宙には大量の有機物の原料が存在した。太陽系の誕生当時は太陽の活動が弱かったため、地球軌道付近まで氷や揮発性有機物が存在したに違いない。地球の原料であった微惑星は炭素質コンドライトと同じような成分であった。微惑星に含まれる炭素や水は太陽からやってくる紫外線や、粒子線で叩かれて活性化し、化学反応を起こして簡単な構造の有機物が合成された。

ただし、地球創生のときに持ち込まれた有機物は大部分がマグマオーシャン時代に熱分解されただろう。揮発性の有機物が大気に逃れ、地球に残った。マグマオーシャン後に落下した炭素質コンドライト隕石もたくさんあっただろうが、大気との摩擦熱で同じように熱分解された。ごく一部の有機物が隕石の温度が低いうちに高空で気化し、分解されずに大気中に放出された。また、中心部分は熱分解されずに、落下途中で空中分解して燃え尽きることもなく、大洋に落下したものもあっただろう。

太古代は地球金属核の対流によるバン・アレン帯が存在せず、太陽からやってくる荷電粒子は大気の上部を直接叩いていた。高エネルギー陽子を一酸化炭素・窒素・水からなる原始地球の大気を模した混合物に照射すると、多種類のアミノ酸などの生体分子がよく生成する。上空で合成された重い有機物は凝縮すると落下し、大気循環により海上へと運ばれた。水に溶けやすい有機物は雨に溶け込んで海に達した。雨粒で落下する間、また、雲として漂う間に水分が蒸発して、有機物が濃縮され、高分子が合成された可能性がある。火山の噴火では、還元性のガス、水蒸気とともに多くの稲妻が発生する。この環境を再現すると複雑なアミノ酸もできた。

有機物の合成の場は同時に分解の場であることが多い。有機物が蓄積するには、原料とエネルギーが不断に供給され、合成された有機物はその場から運び去られて、どこかに蓄積される必要があった。高エネルギー粒子は化学反応を起こしてアミノ酸やホルマリンなどを作り出すが、同時に分解も行う。おそらく、上空で合成された有機物は雨によって海に運ばれ、高分子になって海底に蓄積した。

最初に作られた低分子の有機化合物としてアミノ酸や核酸塩基がよく研究されている。これらは生物の重要な構成要素だからである。他の分子も多数合成されたと考えられるが、あまり研究されていないようだ。分子量が1000くらいの有機化合物は生物界から多種類、大量に発見される。有用物質も多く含み、例えば抗生物質などが含まれる。アミノ酸や核酸は数個から十数個の原子からなる分子量が100程度の分子である。これらの分子が海底の熱水噴出孔での高濃度金属イオンによる触媒作用、熱化学反応で分子量が1000程度の多様な有機化合物が合成され、蓄積された。一つの分子の中に複数の官能基を含むこれらの分子は集合し、新たな化学反応の土台となったであろう。

アミノ酸の生成はアルデヒドとシアン化水素、アンモニアを出発材料とする反応が有名である。そのほかにも、核酸塩基の分解なども考えられるのではないか。ホルムアルデヒドからは簡単な構造の糖類が得られる。ホウ酸系鉱物が触媒として働く。糖には同じ分子でも多くの立体構造があるが、なかでも、フルクトース、グルコース、マンノースが安定であり、生命起原時に重要な役割を果たしたと考えられる。

炭素と窒素が二重結合で6個もしくは5個、環状に結合した分子をヘテロ環と呼ぶ。核酸塩基のひとつであるアデニンは六角形と五角形がくっついたヘテロ環構造を持つ。アデニンはシアン化水素とアンモニアから比較的簡単に合成される。アデニンのように窒素を含むヘテロ環分子では水素結合でお互いに緩やかに結合し、また、金属と錯体を造りやすい。分子内に二重結合を含むが、二重結合はラジカルと反応して高分子化しやすい。ただし、紫外線で分解しやすいので、核酸塩基は紫外線の届かない海中に保存されたであろう。

後期重爆撃期には隕石の落下で海が干上がる事件が起こった。海底に蓄積された有機物質は濃縮され、地球の裏側に集められたであろう。その場が生命の誕生に大きく貢献した可能性がある。

+++ 代表的な生体高分子は糖、タンパク質、核酸である +++

生物の体を作る巨大分子を生体高分子と呼びます。生体高分子は数種類のユニットが単一の官能基で結合した一次元的な構造をしています。

糖のユニットは単糖であり、グリコシド結合で結合しています。糖はユニットが一列に並びますが、6本の結合腕をもつので、結合がジグザグになったり、ときどき枝分かれをするなど、複雑な並び方をします。

タンパク質のユニットはアミノ酸で、アミド結合で結合します。タンパク質はアミノ酸が一列に並びますが、アミノ酸の組合せにより、すだれ状(平面になる)、らせん状(棒になる)、ループ状(鎖の折れ曲がり部分)などの中間構造体を経て、アミノ酸配列に依存した特定の3次元構造を形作ります。

核酸のユニットはヌクレオチドで、結合をリン酸結合と呼びます。糖(ペントース)とリン酸が交互に結合したバックボーンと、糖に核酸塩基がひとつ結合した形です。核酸はペントースの種類により、RNAとDNAの2種に分けられます。RNAは通常一本鎖で、核酸塩基は特定のペア(A:U、G:Cなど)で分子内で結合し、そのためにバックボーンが無理のない形で折れ曲がってくっつき(自転車のチェーンを思い浮かべて欲しい)、全体として折りたたまれた構造をとります。遺伝子の本体としてのDNAは通常2本鎖であり、核酸塩基のペア(A:T、G:C)で2本の鎖が接着し(ファスナーのようなイメージ)、2本のバックボーンは捩れて、らせん構造になります。いわゆる二重らせんです。

+++ 切断された化学結合は不安定なラジカルとなる +++

生体に含まれる有機物は主成分として炭素、窒素、水素、酸素原子を含みます。これらの結合する腕の本体は電子で、結合は電子が2個で1本作られます。それぞれの原子から1個ずつの電子が供給されて(共有されて)、共有結合ができます。片方から2個いっぺんに供給されることもありますが、その場合はイオン結合となります。結合にあずかる電子2個が1個ずつに分かれ、結合が切断されると、分離した両原子はペアになっていない1個の電子をもつ化学種になります。ラジカルとよばれます。ラジカルは化学的に不安定であり、きわめて反応性に富んで、相手を見つけるとすぐに化学反応を起こします。

+++ 基本単位の列で多様性を作る +++

生体を構成する高分子はユニットと、ユニットをつなぐ1種類の化学結合によって作り出されます。すると、1種類の化学反応を触媒するだけで、ユニットの組合せによって多様性を作り出せます。

人間が考え出した文字や文章も同じ構成になっています。遺伝暗号はDNAの4塩基で記述され、タンパク質は20種のアミノ酸で記述されます。言語はアルファベットならいろいろな記号を含めてせいぜい120文字です。漢字はたくさんの文字を持ちますが、偏や旁の組合せでもあります。さらに音素まで分解すると、母音と子音を単位とし、言語によらす、80-150音くらいかと思います。言葉はこの単位の組合せで作られています。

+++ 原子は3種類の粒子からできている +++

すべての原子はたった3種類の基本粒子からできています。電子、陽子、中性子です。考えてみると不思議なことです。原子の多様性は電子と陽子の数によって決められます。

メンデレーエフは周期律表を発見しました。多数の元素の性質を原子量(元素の重さ)、原子価(結合の数の比)、どんな元素と化合するのかを整理すると、原子量に対して類似した性質が繰り返し出現します。原子番号の概念のない周期律表で、不完全なルールしかありませんでしたが、とにかく表にしてみると、空欄があります。空欄に当てはまる性質を持つ元素が発見されて周期律表の正しさが確認されました。理論も精密になって、現在の周期律表が完成しました。整理する基準も原子量ではなく、原子核中の陽子数である原子番号になりました。

周期律表は一番外側に位置する(エネルギー順位が高い)電子によって説明されます。電子は2個でペアを作り、軌道を作ります。軌道がいくつか組み合わされて殻を作ります。軌道の種類や数についての規則は主量子数により整理されます。リチウム、ナトリウム、カリウムは殻の外側に1個電子(余分?)を持ち、アルカリ金属と呼ばれています。また、フッ素、塩素、臭素は、電子がもう1個あれば、殻が完成します。ハロゲン元素と呼ばれています。アルカリ元素とハロゲン元素は一緒に置くと、電子が1個アルカリ元素からハロゲン元素に移動して、その結果どちらも殻が完成します。アルカリ原子は1個電子を失い、プラス電気を帯び陽イオンになり、ハロゲン原子は1個電子を受け取り、マイナス電気を帯びて陰イオンになります。そして陽イオンと陰イオンが引き合います。この結合はイオン結合と呼ばれます。

+++ 原子の化学的な性質は電子が決める +++

電子の取引可能な数は一番外側の軌道の数と、軌道の電子ペアの数できまります。原子番号が増えること、それは原子核の周りの電子の数が増えることです。電子はエネルギーの低い軌道から順番に席を占め、ペアを作りながら殻を完成させます。殻の外側に孤立した電子があるときは電子を失いやすく(陽イオン)、殻ができかかっていて電子の入る席があるときは電子を受け取りやすい(陰イオン)。

原子番号の大きな元素はいずれも金属の性質を持ちます。原子の内側の殻は十分な数の電子により埋められ安定です。外側ほど軌道の数が多くなり、軌道の間のエネルギーの差が小さくなります。また、内側の電子の遮蔽効果で、原子核との結びつきが弱くなっているとも考えられます。したがって、電子は隣の原子の同じレベルの軌道に移りやすくなっています。陽電荷を帯びた原子の周りを自由に軌道の間を移動できる電子群が取り巻くこと、これが金属結合です。金属が変形に対して柔らかく、また、鏡のような光沢をもつ性質は自由電子により説明できます。

+++ 古代から少数の要素で万物を説明する理論があった +++

古代ギリシャは多くの哲学者を輩出し、いずれも、自然界の成り立ちや変化について多用な説明がなされました。有名どころとしては、万物の根源が水であるとしたタレスです。アリストテレスはアルケーが水・空気・火・土の四つの四元素説を唱えました。ギリシャ哲学では根源物質はアルケーと呼ばれ、ヨーロッパに引き継がれました。

根源物質はギリシャの専売特許ではありません。古代中国では陰陽五行説が有名です。陰と陽は対概念で、明暗、天地、表裏、上下、男女、剛柔、善悪、吉凶など、さまざまな現象を整理するのに便利です。五行は木、火、土、金、水の5要素で、アリストテレスの四元素説と同質です。

仏教で宇宙の万物を構成する5つの要素は地・水・火・風・空の5つで、五大・五智輪ともいいます。宮本武蔵の五輪書はこの「五輪」になぞらえて、武芸法の心得を綴ったもので、地水火風空の5つの巻があります。

では、イスラム教では? キリスト教もですが、一神教のためか物質的な基本原理についての考察はありません。しかし、イスラム世界はヘレニズム文明を引き継いで、中世では科学・技術の最高峰に達しました。その後、キリスト教社会がイスラム文明を輸入し、実験・実証を基礎とした科学思想を確立したのは偶然ではないかもしれません。

+++ 元素は化学的な操作では成分に分けられない +++

万物の根源を仮定して森羅万象を説明する哲学が成立すると、その次は万物の根源物質の探索になります。精錬、精製、純化、抽出。いずれも物理化学的な操作を表現する言葉で、鉱物から金属を、植物などから薬効成分を取り出す操作を意味します。混合物から一つの要素を取り出す作業なので、エントロピーを下げる、またはエネルギーを消費する作業です。不純物を取り除く操作なので、社会的にもプラスのイメージを持ちます。取り出された成分は高貴で、効果が高く、貴重なものとして珍重されます。

中世の錬金術師が考案した物質の抽出技術は、物質を混合して生じる沈殿物を集めたり、逆に除いたり、水にさらしたりします。土に埋めたり、醗酵(腐敗?)させることも行われました。画期的だったのは蒸留の技術で、アランビークと呼ばれる蒸留器を用いて有機物の溶液から揮発性の高いアルコール類(いずれも匂いの素)が取り出されました。

さまざまな化学反応を整理する上で重要な発見は、酸と金属を混合すると水素が発生する反応です。発生する気体が呼吸している空気とは異なることから、水素と命名されました。この反応は中学の理科でも有名です。これを契機に18世紀後半には窒素、酸素などの次々と気体が発見されました。さらに、その反応を観察すると、反応する物質の重さ、できた物質の重さを数学的に解析すること(定量的な解析)で、化学反応に一定の比例規則があることが明らかになりました。ラボアジエはこの法則を質量保存の法則として、また、ドルトンは根源物質をイメージして元素、原子、分子の概念を整理しました。

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14. 生体高分子の誕生・・・海のゆりかご [活性化エネルギー]

有機物の種は天空で形成されても、そこは有機分子、特にベンゼン環やヘテロ環をもつ環状有機化合物、を分解する紫外線にさらされていた。生命の基本分子が合成され、保存され、生命体に組み込まれるのは紫外線の届かない海底であった。 

海嶺に形成される熱水噴出孔は有機化合物生成炉として機能した。高温(200- 350℃)、高圧(200-300気圧)の環境であり、大量の熱エネルギーが絶えず供給されている。周りの冷海水が地殻の裂け目からしみ込んで熱せられて上昇し、冷海水の中に噴き出し、冷却されるというサイクルができている。高温で合成された有機物は直ちに冷却されるので、熱による分解を避けることができた。海水が循環するので、流れに乗った有機分子は何度も熱水噴出孔を通過して成長するチャンスがあった。熱水噴出孔の海水は、鉄、マンガン、銅、亜鉛などの金属イオンを普通の海水に比べて1000倍以上多く含んでいる。金属イオンは高温、高圧の熱水環境下で有機物を重合させる触媒として働く。アミノ酸やヌクレオチド、単糖からタンパク質や核酸の合成が進んだと考えられる。

粘土鉱物を触媒として表面に吸着したアミノ酸や、ヌクレオチドが高分子化する研究結果もあり、重要な高分子生成メカニズムの一つであろう。有機物は地下の高温・高圧状態下で脱水反応を受け、不飽和炭素結合を大量に含む石油のような物質に変わる可能性がある。石油は生物由来とされているため、非生物由来の起源はあまり研究されていない。まとまった量の有機物が埋没すれば、地下の高温と圧力で石油状の低分子、すなわち、反応性に富み、容易に高分子化する有機物が生成した可能性もあるだろう。

アルカリ性の液体の中でホルマリンは多種類の糖を作り出すポリマー合成反応を起こす。糖のポリマーは不溶性で反応性が高い。同様に、アンモニアとシアンは核酸塩基を含むたくさんの高分子を作り出す。この過程が同時に進行すると、爆発的な種類の化合物が作り出される。ところが、リン酸があると、この反応がある程度、制限される。炭酸カルシウムが沈殿した後、海にはリン酸が溶け込んでいた。

実験ではリン酸存在下で2-アミノオキサゾールが合成される。この化合物はピリミジンを含む核酸の有力な前駆体である。また、揮発性があり、容易に固化する。すなわち、温度の上下により濃縮も可能であった。2-アミノオキサゾールからピリミジンを含む核酸が合成される過程では、糖と塩基とリン酸基が結合する反応を考える必要がなく、原始地球での核酸合成の謎がひとつ解決する。原始地球でこの反応が起こっていたのかは今後の課題である。

有機物の生産に必要な触媒は金属イオンや鉱物の表面であったが、やがて、有機高分子そのものが触媒作用を持つようになった。複数の低分子と弱く結合し、低分子間の共有結合の形成を促進する。そのような高分子は偶然に作られたであろう。

海水中の重金属濃度や泥の粒子として供給される鉱物には地域差があったため、地球上の有機物の集積には地域による特徴があったに違いない。海底に蓄積された大量の有機化合物の固まりはプレートの移動とともに運ばれて他所で合成された有機化合物と混合された。同時に、触媒作用を持つ物質も移動し、混合された。また、隕石の落下により巻き上げられ、また、巨大隕石の場合は押し流されて濃縮されて移動した。発達した触媒作用をもつ有機物が混合することにより、さらに複雑な有機複合体が作られた。

+++ 化学反応とは分子を形成する原子の配置替えである +++

物質は様々な分子から構成されています。分子は数種類の原子が互いに結合して形成されます。化学反応とは、具体的には、原子の間の結合が切れたり、新たに形成されることを意味します。原子のつなぎ方が代わると、分子の性質が変わります。化学反応では化学反応前とは違う物質ができます。

生物の活動エネルギーは化学反応によって生み出されます。生物の運動や変形は有機物が司ります。また、生物の体は有機物から構成されます。生命活動の原理も、生命の起源も、有機化学反応を避けて解説することはできません。

+++ 化学反応はまず、反応する分子が接触する必要がある +++

分子は空間でランダムに運動していますので、たまたまぶつかった分子が十分なエネルギーを持っていると反応が起こります。反応が起きるときにはある一定のエネルギーが必要で、活性化エネルギーと呼びます。活性化エネルギーを得た分子は反応熱を放出して反応生成物になります。活性化エネルギーと反応熱は総量が異なっていて、熱の吸収あるいは発生が起こります。活性化エネルギーを得た状態を活性化状態(もしくは遷移状態)と呼びます。ラジカルは活性化状態の一つの形です。

反応前と反応後のエネルギーレベルの差が化学反応によって起こるエネルギーの放出・吸収に相当します。一般的に、高分子有機物質ほど合成したときに積み上げられたエネルギーが多く、したがって、合成されるには大量の活性化エネルギーを必要とします。分解するときは活性化エネルギーが低いので、どちらかと言うと、分解する方が優勢です。言い換えると、生体を作る高分子は、高温環境下では、すぐに活性化エネルギーを得てしまうので、不安定です。現在のところ、生命は高温環境下で発生したとする説が優勢ですが、否定的な意見もあります。

+++ 生物はエントロピーが低い集合体 +++

熱力学的な方程式の一つの項として表れるエントロピーの概念は定量的に捉えるのが困難です。一般に乱雑さとして表現され、エントロピーが低い場合は秩序だっていて、エントロピーが高い方は乱雑であるとされます。AとB がくっついているとエントロピーが低く、独立に運動しているとエントロピーは高い。イメージしにくいのは、エントロピーを定量的に考えようとすると、その系全体の統計学的な性質が問題とされるところです。

系のエントロピーは不可逆的に時間と共に増大する。これは有名な熱力学の第二法則です。一般に、多くの分子が固定されているとエントロピーが低い状態です。生物の体は分子が集合した多くの構造物から成り立ちますから、エントロピーは低い状態です。生物はエントロピーを低く保つために、よりエントロピーの低い物質を取り込み、エントロピーの高い物質を排出します。また、化学エネルギーを使って、系のエントロピーを低い状態に保ちます。言い換えると、構造物を常に作り、壊し続けます。

+++ 社会の活性化は社会の構成を変化させる +++

「活性化」とは社会的によく使われる言葉です。沈滞していた機能が活発に働くようになる、生き生きとしたイメージがあります。しかし、その場の雰囲気で「活性化」が乱用されているような気がします。 経済社会の活性化とは、通常、新規参入を増やし、将来性のない赤字企業は市場から撤退させることを意味します。新しく参入する者と、退場する者が常に存在する。活性化している業界とは、常にチャンスがあり、事業に対する夢が描け、若者が参入しやすい業界としています。

ところが、活性化させるために行政が乗り出すと、どうしても創業する起業家のための様々な優遇措置を考えることになります。税制優遇、オフィスの提供、資金援助、教育やコンサルティングサービス等。しかし、たしかに新しくたくさんの企業が参入するでしょうが、それらの企業は援助を打ち切られたときにやっていけるのでしょうか。

地域の活性化で期待されるのは住民、消費者の全員参加です。その中に行政が入り込むと、行政は秩序社会の組織ですから、逆に不活性化するのではないでしょうか。チェック機関を作ってしまうと、かえって問題がこじれ、迅速な対応ができなくなります。活性化のキーワードでインターネットをサーチすると、こうした行政側の美句麗文が並ぶ実行不可能で、実際的でない施策が並んでいるような気がします。

そもそも、活性化していることがよい状況なのでしょうか。活性化とは常に状況が流動的であることを意味します。参加者は競争のプレッシャーにさらされ続けることであり、息を抜けない状態でもあります。プレッシャーの下で活動するのが得意な人もいるとは思いますが、ほとんどの人は参ってしまうのではないでしょうか。常に組織が活性化している必要があると考えるのは、傍観者の論理です。化学反応のように活性化状態は状態を変化させるときに導入する程度が適当と思います。

+++ 社会の極端な活性化のひとつは戦争である +++

民主国家においては、戦争が国家を挙げた活動になりました。戦争は緊急な課題ですから、それを解決するために技術開発を行い、半ば強制的に制度改革を行いました。第一次世界大戦は新兵器が大量に投入され、その技術は戦後の発展の基礎になりました。軍隊の移動のため、古代から道路や巨大船や港湾の整備が行われてきました。戦費は多額であるため、税金だけでは不足します。ヨーロッパでは軍事公債が発行され、その国債を引き受ける中央銀行も創設されました。

戦争には大きな負の効果がありますが、ここに詳述する必要はないでしょう。

+++ 歴史の転換期には社会が活性化した +++

中国は統一帝国を生み出す歴史観が醸成され、周期的に大帝国が誕生しました。帝国誕生期は新しい組織が社会の富と権力を再編しました。新しい社会の仕組みの下、帝国は最盛期を迎えますが、その後は人口過剰とそれに伴う自然破壊で、飢饉、流民、反乱、内戦の自壊プロセスに陥りました。帝国の支配者組織の中でも権力の奪い合いがおこり、社会の混乱を収拾する適切な対策が立てられずに、組織が弱体化しました。

古代には戦乱や苛政を逃れた難民が朝鮮半島へ、さらには日本へ殺到しました。国としての総合的な難民対策がなかった弥生時代の日本はこうした難民を受け入れました。国外脱出を果たし、日本まで来る難民ですから、志の高い宗教人や学者、技術者も多く含まれていたでしょう。彼らは古代の日本を活性化したことでしょう。現代日本人も難民の子孫と考えることもできます。

まったく争いの発生しない社会はあり得ません。人間が複数存在すれば常に潜在的に紛争が発生します。紛争は自然で健全な現象です。それは、社会の変化と成長に貢献するという、建設的な役割を担うからです。紛争解決のルールについてコンセンサスを積み上げるために司法制度が必要です。しかし、紛争が暴力行為を伴うと、社会の紐帯は切断され、時には社会構造を破壊します。社会は暴力を制御できる装置を備える必要があります。対内的には警察機構、対外的には軍隊制度です。

+++ バブルも社会の活性化 +++

新しい王(政権)が誕生し、その強力な指導の下、時期や気候もよく、社会が大きく発展する歴史上の事例には事欠きません。古くはペロポネソス戦争の後のアテネ、カルタゴを打ち破った後のローマ、第5代カリフのハールーン・アッラシードの時代のアッバース朝、日本では豊臣秀吉の安土桃山時代、江戸に下って元禄の時代、そして大英帝国、20世紀初頭のマンハッタン文化のアメリカ、近くは日本の戦後の高度成長期、バブルもそうでしょう。

現在の日本ではバブル期中の無節操な経済活動の反省と以後の経済停滞から、バブル=悪という見方が定着しました。しかし、国の繁栄は必ずバブル期のように、経済や政策が相乗的に発展し、短期間に達成されます。問題はその後でしょう。繁栄は長くは続きません。やがて頭打ちになり、行き過ぎた投資については清算が待っています。政治手腕のふるいどころは、バブルをはじけさせずに、いかに軟着陸させるかです。

+++ 社会の無秩序状態は活性化か +++

人間社会は理想的な秩序を持った社会から完全な無政府状態まで考えることができます。こじつければ、秩序社会はエントロピーが低くく、無政府社会はエントロピーが高い。高エントロピーのカオス社会は無法社会です。人・物・金といったエネルギーを供給し、法律や規則、階級や序列など低エントロピー状態の構造を作り出すと、低エントロピー社会にシフトします。しかし、エネルギーを供給し続けると秩序社会にシフトします。極端な秩序社会では、要素たる市民は規則や階級によりがんじがらめに縛られた集団となり、自律性は失われます。かつてのソビエト連邦を思い起こします。

+++ 欠乏感を煽って経済活動が活発化する +++

経済学で需要を考える場合、基本的な要請は消費者の欲望は理性的に行使されることです。しかし、現実には消費者の欲望は大企業の強力な宣伝と販売技術によって操られています。消費者主権とはまやかしで、実は大企業などが作り出す文化装置の折の中で、消費者はそそのかされ、強制された選択を行っています。

消費者の操られる原因となる深層心理には何があるでしょうか。ガルブレイスは通念(conventional wisdom)と呼んだ社会意識の惰性と説明しました。人間や社会は誕生以来、長い間、欠乏の文化の中にありました。そのために、欠乏が喪失したことを受け入れることができない。したがって、いつも欠乏しているのだと思い込んでいるという解釈です。消費者を操る文明を作り出すのはどんな仕組みでしょうか。大企業は保身のために価格も消費者の好みも支配して資財優先の文明を演出しているのではないでしょうか。

ガルブレイスの言うように、消費者の欲望が生産者による宣伝や販売術によって作り出されたものとなると、経済指標(例えばGDP)が高いからといって、必ずしも真の福祉の充実を意味しません。

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15. 化学進化・・・生化学エネルギーの通貨 [触媒]

生命の誕生の場は深海であると考えられている。とくに、海底熱水噴出口の周りが第一候補である。理由の1つに分子進化系統樹の幹(出発点)に超好熱細菌が存在することがあげられる。現代の地球では超高熱細菌は海底熱水噴出口の周りから分離される。しかし、生命活動の中核を担う有機高分子は高温環境では不安定である。海底熱水噴出口では還元的な噴出物や熱エネルギーで有機物合成され、その周りに蓄積する環境が整えられた。

熱水噴出孔では海水が海底の泥や岩石、地殻で濾過されるとき、高分子化合物は海底に蓄積した泥や砂と相互作用しながら沈殿した。有機物が鉱物の表面や隙間に濃縮された。泥は分子が吸着する足場を提供し、化学反応を触媒した。反応の実体は砂粒の表面に並んだ金属触媒だったかもしれない。金属触媒を含んだ有機物の塊かもしれない。高分子の有機物は集合し、不定形の有機構造物ができた。

温度が高い場所では合成反応が進むが、同時に、分解反応も進む。生体高分子が分解されない程度の温度の場所で合成反応を進めるには高エネルギー化学結合をもった化合物が必要である。現在の細胞生物は活性状態を化学結合エネルギーとして運搬する分子を利用している。それはアデノシン(アデニンとペントースの結合した分子)をである。高エネルギーリン酸結合を運ぶアデノシン三リン酸(ATP)、酸化還元状態を運ぶNADHとNADPHはいずれもアデノシンを含んでいる。

ATPの高エネルギーリン酸結合はリン酸基が3つ連続して結合している、一見不思議な分子である。しかし、リン酸を加熱すると脱水反応が起こり、200-300 ℃で2個、3個のリン酸が反応してピロリン酸(二リン酸)、ポリリン酸(nリン酸)が生成する。水溶液中で分解しやすいので、熱水中で化合物の形で合成され、それが適度な温度域(超好熱細菌なら100℃)の生命誕生の場に供給され、原始的な炭酸固定とともにエネルギー源として用いられたであろう。

リン酸塩が生化学反応に利用されるに到った経緯は不明であるが、在るものを利用するという生物進化の原則を考えると、アデノシンとリン酸は生命が誕生した場に豊富にあったと考えられる。ATPは生命化学活動の至る所に登場する。酵素の活性中心で働く低分子である補酵素もアデノシンやヘテロ環を含んでいる。リン酸基を結合する反応は活性化の目印として使われる。ATPは細胞にとってエネルギー通貨であり、ATPに蓄えられた化学エネルギーを使って、酵素は様々な合成を行う。例えば、遺伝子であるDNAを複製し、DNAを鋳型としてmRNAを合成し、mRNAの情報はリボソームでタンパク質に翻訳される。タンパク質はATPのエネルギーを使って細胞のあちこちへ、細胞外へと運搬される。筋肉細胞のアクチンとミオシンはATPのエネルギーを使ってすべり運動を起こして筋肉を収縮させ、神経細胞のイオンチャンネルは神経信号を伝達する。

数多くの化学反応が偶然に誕生したが、自分自身を大量に作りだす自己触媒能力を持った分子は大量に蓄積された可能性が高い。触媒反応が連結して、ポジティブ・フィードバック反応経路が生み出された。ATP(のような分子)を利用する化学反応が有利にポジティブ・フィードバック反応経路を形成し、生命体の部品を合成するようになった。

海底に蓄積された有機物質の中で、タンパク質、RNAは複合体を造り、自己触媒機能を持てるだけの多様な表面を提供できる。また、単に分子が連続し、同じ装置で合成可能である。タンパク質やRNAの中にはRNAにヌクレオチドを付け加えるもの、タンパク質にアミノ酸を付け加えるものなどができたはずである。RNAは相補関係により、特定の塩基を付け加える性質もある。これらのシステムはやがて洗練されてRNAは複製情報を形成し、タンパク質はRNAと共同して複製装置を担うことになった。選択理由は材料が豊富にあったためであろうか。それとも、他の分子で最初に複製構造体ができたが、徐々にタンパク質とRNAに置き換わったのだろうか。

+++ タンパク質は生物体の行うすべての活動の主役である +++

ヒトゲノムの解析から人間の持つ遺伝子の数(基本となるタンパク質の種類)は22000種類と見積もられました。タンパク質は細胞レベル、分子レベルでの生命活動の主役です。列挙すれば、遺伝子の発現、複製、分配、修復。タンパク質、脂質、核酸、糖など生体分子の合成、輸送、分解。細胞の移動・接着、筋肉の運動、神経の興奮、骨の構築・分解吸収、呼吸・血液循環、栄養分の消化・吸収、老廃物の排出、妊娠・出産、受精卵から大人までの成長。そして生物活動に必要な化学エネルギーの供給、生物活動に付随する反応の調節、制御。

+++ タンパク質の機能はアミノ酸側鎖の三次元的な配置によって決まる +++

多様なタンパク質の働きは構成する20個のアミノ酸の種類と順番(アミノ酸配列)、すなわち、アミノ酸側鎖の立体的な配置で決まります。アミノ酸側鎖を分類すると、アミノ基、カルボキシル基、アミド基、水酸基、イミダゾール(ヘテロ環)などの親水性基。アシル基、ベンゼン環などの疎水性基。チオール基。親水性基はタンパク質の表面に配列して、周りの水分子と相互作用することが多い。疎水性基はタンパク質の内側に集合することが多い。水溶液中ではイオン結合(アミノ基(+)とカルボキシル基(−)、さらにイオンを解した結合)、水素を仲立ちとした水素結合、電子雲の偏りによる静電作用(そのほかの親水性基)、疎水性部分が集合することによる疎水性作用がタンパク質分子を形作り、また、タンパク質分子同士を結合させます。

タンパク質は化学的に特徴をもつ表面を提供し、作用するときは他の分子と結合します。タンパク質の作用には様々な種類がありますが、単純化すると、結合するか、タンパク質の立体構造が変化する(新しい表面が出現する)か、化学反応が起こるかの3つです。 タンパク質とタンパク質が結合する場合、相互作用する面に並んだアミノ酸側鎖は、云わば、でこぼこを作り出しているようなもので、ぴったりと合う表面通しが結合(接着)します。言い換えると、タンパク質は結合する相手にきつい選り好みを示します。タンパク質の構造物には繊維(コラーゲンや筋肉のアクチン繊維)、管(微小管や細胞膜に埋め込まれた輸送チャンネル)や塊(集合体)、籠(ウイルス粒子や分泌顆粒の籠)など、特定の形があります。タンパク質が結合するのはタンパク質だけでなく、他の生体高分子である核酸や脂質、糖とも結合し、構造体をつくります。特に、リン脂質の二重膜と結合して、細胞の膜を形成します。また、細菌の外膜はタンパク質と糖の複合体です。タンパク質合成装置であるリボソームはタンパク質とRNAの複合体です。

タンパク質は特別な表面を用意して、吸着した分子の化学反応を促進します。酵素反応と呼ばれます。様々な代謝、高分子の生合成・分解、立体構造の変化を行います。また、吸着した分子の影響のもと、別の表面に設けられた機能により様々な化学反応を行います。この場合の吸着分子は調節分子であり、タンパク質をレセプター(受容体)と呼びます。

+++ 酵素反応は触媒反応である +++

タンパク質は作用するとき、自分自身が壊れたり、変化することはまれです。このように、反応速度を増加させるが、反応前後で変化しない物質を触媒といいます。触媒の作用は、触媒が反応物と結合して反応中間体をつくり、活性化エネルギーを低下させることです。触媒がないときと異なる反応経路をとることになり、反応の仕方も空間的に限定されることになります。活性化エネルギーが低下すると反応速度が大きくなります。しかし、逆反応も同時に起こりやすくなりますから、化学反応の平衡状態を変化させることはありません。

+++ 触媒反応は特異な表面を利用する +++ 表面で起こる反応としては光触媒が挙げられます。太陽光のエネルギーを利用して、水を水素に分解したり、環境汚染物質・有害物質を分解する活性があります。無機物表面に結合した分子で起こる化学反応のメカニズムも解析が進んでいます。表面に光エネルギーを吸収する色素分子を効果的に配置することができれば、現代のエネルギー問題や環境問題に対して有効な技術を提供できることでしょう。 白金は触媒の代表例です。金属表面に2種類の分子が結合し、その間で分子を覆う電子雲が変形して化学結合が切り替わります。酸化チタンは光のエネルギーによって吸着した酸素を分解して活性酸素を発生します。これで低分子有機物を酸化(燃やす)し、二酸化炭素と水に変えます。臭いの基やホルマリンなどを分解します。細胞の代謝は酵素が触媒として働きます。

+++ 触媒は化学工業の花形 +++

世界全体で生産される化学物質の80% 以上が触媒プロセスを利用して作られているそうです。触媒が実用化される条件は、高速で、スケールアップが可能で、高い確率で生成物を作り出すことです。効率のよい触媒はいまでも需要が高く、盛んに研究・開発されています。単純な均一触媒だけでなく、不均一触媒、生体触媒が注目されています。なかでも切望されているのは、酵素と同等以上のキラル(立体異性体)効率を示す分子触媒です。天然酵素は耐久性に欠けるため、工業界では、塩、毒、酸/ 塩基に対する耐性があり、熱的に安定な合成酵素の要求が高い。

触媒反応は、活性化エネルギーを低くすることを特徴としますが、触媒反応を設計して経路を提供しても、吸熱反応をうまく進行させることはできません。余分なエネルギーを投入するか、生成物を分離して逆反応が起こらないようにします。現在行われている段階的な有機合成は、すべて熱力学的に下り坂の反応を組み合わせていますので、反応の組合せが制限されています。光で活性化エネルギーを与えるなど、光合成触媒反応に期待が集まっています。

+++ 社会にも触媒作用をもつ装置がある +++

触媒は変化を引き起こしますが、変化の前後で自分自身が変化しません。触媒は化学反応自体を作り出すのではなく、起こるべくして起こる反応を整理して効率化する作用を持ちます。触媒物質は化学反応のためのプラットフォームを提供します。社会の変化を化学反応になぞらえれば、社会を構成する人間の不満や望みをもとに、新しい社会の仕組みを作り上げる変化が化学反応となります。人間社会における触媒とは、ある行動を誘発しやすい状況があり、その引き金を引くか、行動を誘発するように仕向ける仕組みを考えるとよいと思います。この場合の触媒作用は改革の方法を整理し、効率化することであり、そのための母体を準備することでもあります。

化学反応の進行は活性化エネルギーの供給で左右されます。反応が起こるための活性化エネルギーが高いと、反応は起こりにくい。人間関係で例えれば、心理的な壁でしょう。何らかの理屈で心理的な壁が引き下げられることがあります。そのとき、世の中の人はその行動を起こすのです。

+++ 現代のテロ指導者は檄を発する触媒である +++

テロ組織といえば少数の優秀な指導者が率いる実行部隊というイメージがあります。しかし、オサマ・ビンラディンなどの現代的なテロリストは、直接指揮はあまり行っていません。それより、アジテーションにより、不満の土壌に種をまきます。「なぜ我々は米国に搾取されるのか」「なぜイスラム文化は否定され、貶められるのか」といった檄文であり、また、ゲリラのために軍事的な技術的ノウハウの教科書を発行します。印刷技術の大衆化、インターネットの発達などにより、比較的簡単に教書を流通させることが可能になりました。演説したり、集会を開いて積極的に民衆を引っ張っていくのではなく、ただ手引き書が不満の土壌にばら撒かれ、雰囲気が醸しだされます。不満を持ち、現在のあり方に疑問を持つ若者は、不満の原因を突き止め解消したいと思い、自主的に指導書を手に入れ、ゲリラ戦の技術を身につけ、テロ組織に参加するのです。実力のある若者は周囲を巻き込んで小さなテロ組織を作ります。テロ組織の誕生する土壌がある限り、テロは治まることがありません。

情報操作を行って特殊な思想を吹聴して洗脳したのでは大した人材は育ちません。命令を実行できる兵隊ができあがるだけです。過去のテロ対策は思想的な中心人物を特定し、暗殺などにより排除すれば、あとは自滅を待つだけでした。大きな集団の指導者は指導力を発揮するためにどうしても目立つ必要があり、それゆえ、ターゲットとして武力行使は比較的簡単です。もっとも、小説的には影の指導者も可能ですが。

さて、触媒とはこの指導書であり、それを執筆する指導者です。オサマ・ビンラディンは社会に宣言するだけで、それぞれ自立的に育ったテロ組織が適当な規模で相互に連携し、行動を起こします。戦果を挙げたグループを賞賛し、体制側の小さな非人道的な失策をあげつらうだけでテロのモーティベーションが上がります。当人は姿を見せますが、所在を隠していることができます。巨大な組織を運営するのより安価に結果を生み出すでしょう。

+++ マスコミによる報道は触媒作用を持つ +++

低級なジャーナリズムは生贄探しになることがあります。最近の企業の不祥事報道では、ともすると、いい加減なことをしている連中は痛い目に遭えばいいという傾向を見せました。企業であれば倒産すればいい、社長であればクビになればいい。最近は単純明瞭で刺激の強い言葉で批判する(簡単に言うと「ずばり言うわよ」か?)ことが流行しているようですが、それでは社会が硬直化し、短気な決着が横行し、犠牲者が増えるだけです。変化している刺激的な報道は風船に針で穴を開けるような触媒的操作です。

背景には社会に漠然とした不満感があるようです。格差社会やプライバシー問題、逆に説明責任など、人と人のつながりが確実に細くなっていること、その割に、広範ないつながりまで考えなければならない、息の付けない社会になっているためでしょうか。

+++ 法律は触媒作用を持つ1 +++

一つの例ですが、個人情報保護法の施行され、過剰解釈で匿名社会の弊害が現れています。 よく言われるのが国勢調査に壁ができたこと。また、本来、公職であるはずの公務員に関する情報の非開示もありました。課長以上の再就職(天下り)先を公表しない。懲戒免職処分にした教職員名を出さない。都合の悪いことは隠すという構えです。

警察の捜査もやりにくくなりました。病院では、事件や事故で搬送された人の容体を警察に教えない。生徒の傷害事件では学校が警察に生徒の情報提供を拒否。犯罪捜査ではよっぽどのことがない限り、法で捜査上の情報提供は義務です。

情報社会では、個人情報に限らず、大量の情報が簡単にやり取りできる仕組みがあります。その弊害として漏洩があります。その弊害が人々に実感されてきた(知らぬ先からの勧誘電話など)ために法律ができました。

法律はその不安感から身を守る行為を正当化したと解釈され、過剰反応につながりました。時宜を得た法律でしたが、定着するまでしばらくかかりそうです。しかし、法律ができたことにより、社会はその分だけ変化したはずです。

+++ 法律は触媒作用を持つ2 +++

戦前の日本では言論の自由を封じる法律がありました。現代のドイツやオーストリアではホロコースト否定を罰する法律があるそうです。異論を法律で禁止しようとする体質がナチスや日本の軍部の台頭を許した素地でしょうか。言い換えると、ファシズムの台頭を許す素地がある(素地ができた)社会では、ファシズムを法律で禁止する必要があり、あるいはファシズム否定論が盛んになるのではないでしょうか。

法律論議はどちらかに軍配を上げる効果があるでしょう。しかし、一方の価値観に大きく平衡が傾くと、逆反応が起こりやすくなります。

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16. RNAワールド・・・構造から情報へ [フィードバック]

一つ置きに二重結合がつながった分子を共役二重結合と呼ぶ。二重結合が連続することでパイ結合の電子雲がつながって、電子の自由度が増す。3つの共役二重結合が環状になった分子がベンゼンである。ベンゼン環には6角形の炭素骨格を挟むようにパイ電子雲が形成される(ハンバーガーのパンの部分のイメージ)。同様に、アデニンやグアニンなどの核酸塩基や多くの生体分子に見られる窒素を含むヘテロ環分子は環状になった共役二重結合を持ち、パイ電子雲の相互作用によって重なる力(スタッキング相互作用)が生じる。DNAやRNAなどの核酸分子はプリン環やピリミジン環が重なった長い分子が安定に形成される。また、DNAやRNAのバックボーンに少し余裕があり、塩基と塩基の間にもう一枚、塩基を挟み込むことができる。

化学進化の過程で、ヌクレオシド分子が作られ、それらがスタッキング相互作用で一列に並び、適当な触媒表面に結合すればリン酸基とリボースが結合してRNAが合成されうる。RNA分子はスタッキング相互作用により、また、核酸塩基間の水素結合により三次元的に構造体を作りうる。

一方で、鉄硫黄(Fe-S)クラスターを中心とする原始的な炭酸同化反応が始まっていた。二酸化炭素を固定するための水素は硫化水素から供給された。光エネルギーを利用する光合成に対して、化学エネルギーを使うために化学合成と呼ばれる。硫化水素から供給される水素を用いて二酸化炭素を還元し、糖を作り出す作用である。将来、硫黄細菌などが利用している還元的カルボン酸回路に発展する。カルボン酸回路は呼吸経路であるが、逆回転させると炭酸同化経路(光合成の基礎反応)になる。

硫化水素の主な供給源は火山活動であり、太古代の地球では海嶺に形成される熱水噴出孔であった。反応の結果、余った硫黄原子は硫化鉄に取り込まれた。鉄硫黄(Fe-S)クラスターは酸化還元中心として機能する。呼吸、化学的炭酸固定、光合成、窒素固定を行う酵素の部品として電子伝達を担っている。硫化鉄は、無機分子の結合によって有機分子が形成される反応を促進する。したがって、この反応はポジティブ・フィードバックを形成する。さらに、海底から噴出す熱水に含まれる硫化鉄は海底に沈殿し、鉱石となる。その表面には細胞サイズの蜂の巣状の穴が開く。

核酸の合成反応は硫化鉄の穴の中で進行し、硫化鉄鉱石が原始細胞のゆりかごとして働いたのではないか。 RNAは酵素活性を持つことが示されている。そこで、まず、核酸の複合体がタンパク質の合成(アミノ酸を結合する反応)を行うようになったと考えられる(RNAワールド)。アミノ酸のバックボーンはペプチド結合(アミド結合)であるが、核酸塩基であるヘテロ環をちぎると、アミド結合が現れる。逆に、生体にはアミド結合が環状に構成されて六角形をしたヘテロ環分子(尿酸、カフェインなど)がある。

筆者の知識は乏しく、証拠となるデータがあるかわからないが、構造の類似性から起源が同一もしくは関連しているのではないか。RNAはオリゴペプチドに変換され、核酸‐ペプチド複合体が作られてRNAの触媒能力を高めたという仮説を提唱する。

タンパク質の生合成装置を構成する核酸はリボゾームRNAと tRNAである。遺伝情報を運ぶmRNAに加えて低分子の核酸であるエネルギー分子ATPやGTPが多くの場面で、多数関与する。核酸による原始的な触媒作用はペプチドが参加することで高機能化し、その過程で、核酸由来のペプチドが合成される仕組みが作られ、さらに、タンパク質のアミノ酸配列が特定の核酸の配列を基に合成される仕組み(セントラルドグマに相当する)ができると、タンパク質が核酸と切り離されて独自に進化を始めたと考える。

+++ 生物は連続反応を組み上げることで平衡状態を回避している +++

生物は化学反応で起こる逆反応を反応を連続させることで防止しています。化学反応では逆反応も起こり、放っておくと平衡状態に達します。これは生物にとって死を意味します。そこで、化学反応の産物を次の反応の材料としてすぐに次の化学反応にまわすことで、逆反応を起こりにくくしています。

代謝は複数の反応の組み合わせになっています。反応の平衡状態(触媒があるときの起きやすさ)は化学反応で変化する自由エネルギーの量で決まりますが、反応生成物を少なくすることで一方方向に反応を誘導します。最終的には起こりやすい反応と結びつけるか、生成物を膜で仕切られた別の空間に持っていって逆反応を阻止します。こうして化学反応の流れが確保されます。生物が自然の法則に逆らって化学反応を進行させる秘訣です。

細胞内では連続して行われる化学反応は同じ場所で起こります。たくさんの酵素が集合して巨大な複合体を作り、生産物を次々と加工して、ものを作り上げていくのです。糖を分解する経路(解糖系)や光合成、タンパク質工場であるリボソームなど。また、遺伝子からmRNAを作り出す複合体は、その遺伝子産物(タンパク質)が必要になったときに、そのつど構築されます。また、遺伝子である DNAを複製する装置や染色体を分配する装置も細胞が分裂するときに、そのつど構築されます。

+++ ポジティブ・フィードバック系は材料の枯渇で停止する +++

自己増幅するようなポジティブ・フィードバック系は無限に進行し、破局を迎えるようなイメージがあります。よく引き合いに出されるのが核分裂の連鎖反応やねずみ算です。実際には材料が枯渇することで自然に停止します。ポジティブ・フィードバックが働くケースは、自然界では限られた資源を有効利用するように見えます。

化学反応は逆反応も起こりますから、単純な系では、ポジティブ・フィードバックで産物が大量にストックすると、逆反応でまた材料に戻ることになります。実際には、産物がたまってくると、逆反応も起こりやすくなり、次第に反応のスピードが落ちて、最後には、正逆反応が釣り合うところで反応が停止したようになります。言い換えると、産物の量が増えもせず、減りもしない状態(平衡状態)になります

+++ 生化学反応の自己組織化にはフィードバック経路が欠かせない +++

生物は熱力学の第二法則に反して、エントロピーの高い状態を保ち続ける物質です。そのためにはエネルギーが必要です。必要とするエネルギーは化学エネルギー(食べ物)と光エネルギー(植物が利用)です。これらのエネルギーを体の中に取り込んでは捨てる流れ作業が分子的に組みあがった複合体が生物体です。

単に寄集まったのではなく、組みあがった状態はどのような性質を持つのでしょうか。解りやすい例はネガティブ・フィードバックとポジティブ・フィードバックです。化学反応で生じた物質(生成物)が基の反応を抑制するのがネガティブ・フィードバックであり、促進するのがポジティブ・フィードバックです。ネガティブ・フィードバックの場合は化学反応を一定の範囲に納める効果があります。ポジティブ・フィードバックは一気に反応を進め、そこにある化学反応の出発物質(基質)を消費しつくして終了します。

細胞内では2つのフィードバックシステムは色々な場面で出てきて、細胞の自己組織化をうまくコントロールしています。ネガティブ・フィードバックは代謝反応の制御や細胞増殖の制御に利用され、ポジティブ・フィードバック系は情報伝達と応答反応に利用されています。遺伝子発現の制御、複製や細胞分裂など複雑な生命現象は両方が同時に働き、巧妙な仕組みが成立しています。

+++ フィードバックの単純な例は反省である +++

人間社会でもフィードバックの考え方は多く取り入れられています。個人レベルでは反省。反省とは経験から学んだ大切なことを文章にして、他人に伝えることができる形にすることです。通常、反省はポジティブではなく、ネガティブな経験から教訓を導き出すように使われます。自らの失敗や不十分さを謙虚に認めることや、同じ過ちを繰り返さないために、原因を分析し、見つけることを意味します。

親や先生が「反省しなさい」と強制することがあります。これでは、自分は悪くないと思っていると、自己弁護や責任転嫁が先にたち、自分の行為を分析しないばかりか、苦役を逃れたいための紋切り型表層的な反省文ができあがることでしょう。失敗の原因を冷静に分析しないため、将来の失敗を避けることはできません。

ただ、同じように「反省しなさい」と強制しても、親や先生に対して信頼感がある場合や、親や先生が反省することで常に成長する姿勢を見せている場合は、素直に反省するのではないでしょうか。そのような関係があれば、強制しなくても疑問文の形で反省を促すことができます。過去の行為を伝えてみて、よかったが、もっとよい方法はなかったか、と問いかけるだけです。

+++ 評価、批判は社会のフィードバック制御である +++

社会的なフィードバックも制度として多く取り入れられています。行政の行動に対しては選挙やマスコミによる世論調査、裁判、NGOの活動などが評価をします。経済活動に対しては価格や市場、株価などが結果的にポジティブ・ネガティブに作用します。これらは外部の独立した仕組みとしてのフィードバックシステムです。実際には、組織は何らかのフィードバック制度を内蔵して安定を保とうとしています。歯止めとしてのフィードバックシステムがないと、組織がうまく働きません。組織は多様な考え方を持つ人々の集まりですから、一部の人の思惑と逆の捉え方をする人の集団があって、うまくバランスをとって全体が運営されるものです。

社会的なフィードバックの問題点は個人レベルのように迅速に機能しないことでしょう。新聞の社説などの批判の大部分がフィードバックの遅れに対して提言しています。しかし、すぐに反応するようだと、全体主義的傾向が強まったためか、みんなが大切な情報を見落とすように情報操作されているためか、なんか空恐ろしい気がします。

+++ 生化学反応は一方通行だけでなく、閉じた回路も含む +++

連続する化学反応の場合、フィードバックは最後の産物が最初の反応を制御することで達成されます。しかし、生物の行う代謝には単純な一方通行ではなく、循環しているものがあります。エネルギー代謝であるTCA回路と光合成の暗反応に相当するカルビン回路、尿素を作り出す尿素回路があります。回路で中間産物としてできる化合物はいろいろな分子の出発材料ともなっています。まさに、代謝経路の交差点です。TCA回路では物質の流入は1箇所のみで、一回転すると、入ってきたアセチル基は活性化された水素(NADHなど)と二酸化炭素になります。おそらくこの回路は他の分子の代謝経路と複雑に絡み合って制御されているのでしょう。

アセチル基(CH3CO-)は単純な分子ですが、これを完全に利用するために形のよく似た9つの化合物を使います。それぞれの化合物は少しずつ専用の酵素により加工されます。この回路図をはじめて見たとき(高校の図書館で、岩波講座現代生物科学であったと思います)はその無駄のなさと、精巧な仕組みに驚き、分子生物学を志すきっかけになりました。

+++ フィードバック制御の課題は制御の遅れである +++

フィードバック制御では出力の値を参考に、入力をコントロールして、出力を一定に保とうとします。出力が多い場合は入力を少なくする。出力が少ない場合は入力を多くする。理論的にはこれで最適な制御ができそうですが、実際には入力から出力まで時間がかかり、出力の値は振動することになります。具体例として、クーラーによる室温のコントロールを考えてください。室温制御では、外界のきまぐれな変化によって、出力を変化させる必要があります。また、一日の気温変化をあらかじめ予想して入力をコントロールすることもできます。いずれにしても振動は避けられませんが、測定を精密に行い、変化の方向をデータから読み取って制御幅を最適に近づけることで安定な制御を達成します。

経済学の教科書では価格と需要が瞬時に決まり、供給も瞬時に決まるような式で始まります。経済学は実学と思っていた分、奇妙な感じを受けました。ニュートン力学でも単純化を行って法則を導き出していますが、経済学の場合は繰返して実験ができない分、単なる机上の理論のように思われました。需要が増しても製品を供給するためには設備を作ったり、労働者を教育する時間がかかります。為替レートの変動で経済構造が微妙に変わったとしても、理屈では完全雇用が維持されるようですが、その瞬時の間に解雇されて自殺する人がいたとしても、経済学の関知するところではないようです。

大規模な数値計算ができるようになると、社会モデル、経済モデルが精密に設計できます。これからの経済学はモデルを用いたより実証的な学問になるのではないでしょうか。そのとき、様々な現実の「遅れ」がモデルに盛り込まれることになるでしょう。

+++ 生物はフィードバック制御の組合せを学習する +++

棲息環境の中で、生物個体は感覚器を通して外界の情報を得つつ、行動を選択します。自然界では食べ物は最大の関心事です。食べ物の所在を示す情報を得ると、神経組織の単純な動物でも食べ物を得るという目的達成のために逐次的な行動を起こします。逐次的な反応はフィードバック制御が働く小さな単位に分けることができるでしょう。小さな単位が働き続けること、すなわち、目的達成の経路ユニットが活性化することが一時的な記憶となります。

時には外敵が襲ってきたり、ガセネタだったりして、失敗することもあります。考えてみると、そのときに目的を達成するために選択している行動ユニット(神経回路)が活性化していることと、新しい状況として検知された行動ユニット(神経回路)も活性化していること、そして二つの情報が混合されずに、おそらく、さらに2つから独立した価値判断ユニットが動き出し、どちらを優先するかを決めること、と3つの神経回路が活性化する必要があります。判断が難しいときはすでに選択されていた行動が停止するでしょう。しかし、それでは餌に逃げられてしまいます。

これらの行動を通じて中枢神経を持つ生物は小さなフィードバック制御を持つ行動単位の組み合わせ方を記憶していくことになります。組合せに自由度が高いほど、より高度な行動ができ、そしてより効率的に生きていくことができるでしょう。

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